第2話「Bランク昇格」
「確定な情報が無い以上、その可能性が高い、としか言えないね」
今回の事件に関わる人物は、大体が捕まっている。
末端の人間ですら逃がさないと言わんばかりの包囲網だ。
だというのに、エルヴァンとリリアは捕まっていない。
エッダに協力する者は居ないというのに。
となると、そのダンジョンに逃げ隠れている可能性は相当高いな。
「そうですね」
どうしようか。
正直な話をすると、僕はもうどうでも良い。
無理にこちらから出向かなくても、彼らが捕まるのは時間の問題だろう。
ならば、危険を冒してまでこの依頼を受ける必要があるだろうか?
「なに?」
「サラはどう思う?」
「……エルクの意見に従うわ」
ケルベロスとまで呼ばれたかつての狂犬は、すっかり従順になっているようで。
大丈夫? 殺気漏れてるけど?
「それではその依頼。受けさせてもらいます」
僕には引き受ける理由も断る理由もない。
なら、サラの意思を尊重してあげるべきか。
アリア達は多分、聞いても「任せる」と言ってきそうだから、聞かなくても大丈夫だろう。
「報酬の話とかがまだだけど、良かったのかい?」
「構いませんよ。エルヴァンとリリアには個人的に貸しがあるので」
「そうか。それなら話が早い。依頼書を取って来るのでしばらく待っててもらおう」
そう言ってギルドマスターは部屋を出た。
出た瞬間に戻って来た。
「そうそう。聞かなくても分かってるけど、キミ達も行くよね?」
ギルドマスターの言葉に、父さんが答えた。
「あぁ、私達も同行させてもらう」
「そうだな。冒険者として同行するか、ギルド職員として同行するかどっちが良い?」
「どちらでも構わない。都合が良い方にしてくれ」
「それなら同行の職員として行ってもらえるかな、今こっちは人手が足りなくて職員をあまり割きたくないんだ」
「あぁ、わかった」
今度こそギルドマスターは部屋から出て行った。
なので、今の内に父さんに聞いてみる。
「職員として同行って?」
「大きい依頼では職員が同行する場合が多いんだ。依頼に見合っているか確認したりするために」
「それと俺達への配慮だろうな。冒険者として付いてった日にゃ、うちのギルドマスターの雷が落ちるだろうからな」
職員の仕事として冒険者について行ったので、帰るのが遅れました。
そういう体裁を作ってくれたという事か。
「そっか、じゃあ父さんと冒険出来るのか」
「エルク。一応言っておくが、遊びに行くわけじゃないからな」
「へっ、ダンナァ、にやけ顔しながら言っても説得力ねぇってもんだぜ」
そうやって笑いながら父さんにちょっかいをかけ、殴られるチャラーさん。
この人ホント懲りないよな。
「盛り上がっている所申し訳ないが、依頼書を持ってきたのでサインを頂けるかな」
「うわっ!?」
気づいたら僕らの輪の中に、ギルドマスターが居た。
完全に気配を感じなかった。
扉を開け閉めすれば、その音で気づくはずなのに。
これがギルドマスターとしての力量って奴か。
「父さん達は気づいてた?」
「そりゃあ、扉を開けて入って来たからね。気配も音も殺していたが」
そうなのか、確かに父さん達は驚いた様子が無い。
これが今の僕らの実力差という事か。
「それと依頼書にサインをしたら、キミ達は受付に行ってもらえるかな?」
「受付ですか?」
「うん。キミ達は全員Bランクに昇格だから、カードを更新してもらわないといけないからね」
「おいおい、もうBって早すぎやしねぇか?」
「確かに早すぎるが、それだけの働きをしてくれたんだ。なんなら私の独断でAまで上げても良いと思っているよ」
Bランクか、そこまで来たら十分ベテランだ。
「……エルクはどうするの?」
「僕? 僕はこのままで構わないよ」
「そう」
剣の腕も大分上達したと自分では思うけど、剣士を名乗れる程自惚れて居ない。
あっ、でも拳士を名乗るのはちょっとカッコ良いかも。
「そうか、キミは勇者だったね。この機会に他のメンバーと一緒のランクのギルドカードを作ろうか?」
「うーん。それって今すぐじゃないとダメですか?」
「いや、そうだな。他のギルドマスターにも話を通しておこう。キミが他の職を選ぶとき、ランクも自動的に上がるようにと」
「ありがとうございます」
正直、もう勇者である必要は感じない。
ただ、スキールさんを見て、本物の勇者になりたい。そう思う自分が居る。
笑われ者のお荷物の勇者じゃなく、誰かのための本当の勇者に。
まぁ、口に出したら恥ずかしいから言わないけどね。
「んじゃ、俺らは準備してくっから、お前ぇらも準備してこい、出発は三日後だ」
「はい。わかりました」
僕らはギルドカードの更新をしてから、サラの家へ戻った。
三日後の出発に備えるために。
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