双子ですね、はい
手強い相手だったけど試合には勝てた。ただ、姉妹に勝利した試合後にはさんざん追いかけ回されることとなったけどね。主にジミー先輩が。
身体強化を駆使する私に追いつける人がこの学園に何人も居てたまるかっての。良かった。幼女時代の私グッジョブ。
『――なるほど。あのような罠に用いるとは』
ところで話は変わるが、闘交会の期間中も教室は開かれている。ただし成績的に闘交会のほうが割合が高いので出席率は下がるが。
私はというと、うささんを引き連れて隠密行動しながら魔工学教室へ向かっている最中。その道中にうささんに対して知識部門のアップデートが解禁されたらしく、先程から厭味ったらしくブツブツ言われているところである。
過ぎたことを……とか思うと反撃が来るので完全にスルーしてるけどね。右から左へドライブスルーしながら周囲の気配にも気を付けて進む。
大技をぶっ放した試合後からそれはそれはもうウザいのが湧いて来るわ湧いて来るわ……。
お前ら暇人かっ! そんな暇あるならもっと有意義なことに使えよ! と叫びたい。叫んだ瞬間に居場所が割れるので声には出さないが。
『――そこの角は左です』
それと、なんだかんだで厭味の合間にもナビゲーターは仕事をしてくれてますので迷子にはなりません。ありがたいねー。厭味が無くなればもっと最高ー。
……わーい。全身がチクチクするぞー。まだブームなのねー。けっこう痛いぞー。……いい加減に止めてっ!?
『入口はココですよ』
「おっと」
通り過ぎるところだった。危ない。その場でしゃがんで学生証と手を翳す。すると翳した地面から出た光線っぽい何かでスキャンされ、地下への入り口が開かれる。口が開いたような丸い穴が出来たので、底が暗く見えるそこに足を踏み入れる。とたんに吸い込まれるように私は落ちた。
傍から見てると落ちたような絵面だが、実際に落ちる感覚は無い。吸い込まれた後は地下の廊下に繋がりいつの間にか立っているだけだ。……これ、絶対設計間違ってると思うんだよね。
連結出来ないこともないけど、今は地区ごとに下層がほぼ孤立している状態だ。なので違う地区へ教室移動する場合は一度地上へ出るか、専用地下道を経由するしかない。ただし専用地下道は教師専用の為生徒は基本利用できない。
実際に確認していないので噂だが、その地下道も実際に道があるわけではなくワープの道みたいな感じらしい。良く分からないけど。
ああ、知識部門で使った転送門は別だ。あれは特別施設エリアにある地下の巨大転送門に全員を乗せていっきに同時ランダムで送るのだ。瞬間移動というか、先程の教室への入り口と同様に吸い込まれて気付いたらそこに居た感じ。
瞬間移動と何が違うのかというと、一瞬で移動するのではなく、暗い底に吸い込まれたら一度倉庫のような空間に格納されてから目的地へ送ってくれるのだ。知識部門の時も実際には吸い込まれてからしばらく空白の時間があった。
二十分前には集合してたのに開始時刻ピッタリに始まったのが良い証拠だ。
「――いらっしゃい、アイさん。ご健勝なようですね」
「ハハハ、お陰様で……」
改めて不可思議な超技術について考えているといつの間にやら目的地に到着していたらしい。メルディアナ先生が対応してくれた。闘交会期間中も足繁く通っていたりするのでそこそこ仲は良いほうだと自負している。
「本日はどのような用向きですか」
「はい、実はこの前作った”のびーるくん”について相談したいことがありまして……」
「ああ、あの生態系の矛盾物ですか」
「そこまでではないと思うんですけど……」
なかなかに極端な指摘である。ちなみに”のびーるくん”というのはこの前知識部門の罠で用いた植物成長剤のことで、現在私が課題として最も力を入れている研究の一つでもある。メルディアナ先生はこの道――魔法工学――のエキスパートなので度々ご教授頂いているのだ。
いつも散歩か筋トレぐらいしかやってないように見られがちだけど、私も出来る子なのだ。……別に、最近ママから論文系の提出を求められることが多いために必死にやっているわけではない。断じて違う。
「それで、環境破壊はどちらで?」
「先生。私いったいどんな悪者ですか。やりませんよ」
ちなみにこれはメルディアナ先生渾身のボケである。表情一つ崩すことなく真顔で淡々と告げるので分かりにくいが。最初の頃は冗談でなく本気で言われているのかと思って焦っていたものだ。さすがにもう慣れたけど。
「なるほど。では植毛についての相談ですか?」
「先生。それ違う育成剤です。ちなみにこの先も作る予定はないです」
これもメルディアナ先生渾身のボケである。ちなみに薄毛の悩み自体も今世で存在はしている。ただ、それについては既に解決済だ。
この世界でも育毛は一定の需要がある。しかしそもそも不老で若くいる時期が長ければ毛根から散ることは少ない。
若いころから毛根を強化する薬もあるため、ケアを怠らなければ若くして散るなどという悲劇も少ない。
――ようは自分次第である。将来、頭で破壊光線を撃てるようになるかどうかも遺伝子の解析で分かってしまうのだから当然だ。
散ったのなら潔く諦めるべし。事前に分かっていてケアを怠ったのだから自業自得だ。後から焦ってケアを始めるような少数の怠け者のために薬の開発なんぞ時間の無駄だ。
「先生。それより相談なんですけど。”のびーるくん”の実験で、こんな記録が出まして……」
「そうですか。見せて下さい」
ふむふむと私がその場で送信したデータを確認するメルディアナ先生。サッと一通り数字の羅列を確認出来たのか、データをポイ捨てした。
「……この結果、マリアの研究からの応用ですね」
「え、なんで分かったんですか……」
確かにママの研究データから多少応用として情報を拝借しましたけど。そんな露骨に分かるような応用でもない。え、マジでなんで分かったし。
呆れたようにため息を吐くと、メルディアナ先生は頬に手を当てて対応に困ったようなポーズを取った。
「マリアにも困ったものですね。……少々過保護です」
「先生。私、今先生との間にとても深い認識の溝を感じています」
ちなみにこれはマジである。先生のお茶目なボケではない。マジでママが私に対して過保護だと常々思っているらしい。
ママとの付き合いは娘の私より長いと聞いたけど、基準が完全にマヒしていた。常識人枠に当てはめていたけど、なんだかんだでママと親しいだけはある。思考が明後日方向に突き抜けていた。
……ここまでくると、誰とも意見が一致しないのはママの影響が大きいのではないかと本気で確信してる。
――バァンッッ!!
私とメルディアナ先生しかいないスカスカの教室内へ突如として突風が吹き荒れる。というか、私たちの横をドアだったモノが猛スピードで横切っていったんだが。
「――けほっけほっ、なんじゃ、綺麗じゃと聞いておったが……煙いのじゃ!」
「ほほほ、どこかの誰かさんのせいなのですよ」
気配をまったく感じなかった為、突然のことに何も反応が出来なかった。しかしあれだな……どこかで聞き覚えのある声だ。うん。
いやまさかな、と恐る恐る振り返ってみると――その方たちがいらっしゃった。
「まあ、あいさん。お久しぶりなのですよ」
「むむっ!? あいじゃとっ!?」
いち早く確信犯に見つかってしまったため、もう一人の天然おバカに見つかる前にそそくさとメルディアナ先生の後ろに隠れる。
「これ、ファル、どこにもおらんのじゃ」
「あなたの目は節穴なのですよ、ニマ。目を凝らすのですよ」
「むむむっ……」
「……また七面倒な」
メルディアナ先生の視線が痛い。ファルさんの視線も痛い。ニマさんは普通にイタイ子……じゃなくて。
無言の催促に負けたのでメルディアナ先生の後ろから顔を出す。
「ぬおっ!? あいじゃ! あいがいるのじゃっ!」
「ワー、オヒサシブリデスネー」
「ほほほ、落ち着くのですよニマ」
私を発見したニマさんが猪突猛進に抱き着いてくる。避けると後が面倒くさいので甘んじて受け入れる、が、勢いが凄すぎて一緒に倒れ込んでしまう。
スリスリとすり寄ってくる感覚がなんとも懐かしい。
「久しぶりなのじゃっ、あいっ、あいっ!」
「オッス……」
「ほほほ」
カオス。
「……ファル様、お久しぶりです。して、アイさんに御用でしたか」
「……まあ、ほほほ。メルちゃん、久しぶりなのですよ。確かにあいさんに用があったのですよ」
「そうでしたか。それで、修繕費は頂けますか」
「まあ、ほほほ。これは失礼。あたくしが責任もってニマに払わせるのですよ」
「それなら問題ありません。ご自由にお過ごしください」
先生。問題大ありです。助けて下さい。
「あいっ、あいっ、あいっ、あぐうぇっ……」
「ほほほ、うるさいのですよ。落ち着かないと殴るのですよ」
「ファルさん、手、もう出てます」
「まあ、ほほほ」
カオス。
「マリアから聞いたのですよ、あいさん。歴代最高得点はやりすぎなのですよ。目立ちたくないと聞いていたと思ったのですよ?」
手刀で意識が飛んで早々に出落ちしたニマさんの下より這い出ようとしていると、ファルさんが本題に入る。この二人、いや双子は私が師匠と世界旅行していた時に知り合ったお方たちで、ママと師匠の血縁である。なので勿論、褐色の肌に白髪黒目だ。ただ、顔の雰囲気はけっこうママたちと違う。
ファルさんが言うに、双子といってもショートヘアのファルさんが姉、ポニーテールのニマさんが妹だ。
――ちなみに禁句だけど、年齢的にはママと師匠より上らしい……間違っても口にしないけど。
「ハイ、ゴメンナサイ」
ママとは違った感じで怒らせてはならない人だ。なのですぐさま普通に謝罪する。間違っても、「え、それだけで来たの?」とか言ってはならない。彼女たちは究極的な暇人なのだ……外の連中とは何万枚も上手の。
「……ファル様。あまり公言しないで下さい。機密情報ですので、一応」
一応とか言っちゃうんですね、先生。もういいですけど。
「まあ、ほほほ。失礼したのですよ」
絶対思ってないな。とか思っても言ってはならない。先生も心得ているのか、それには触れない。メルディアナ先生が二人と知り合いだったのは驚いたけど、そういやママとの付き合い長いしなと思い至って納得した。
ママは少女みたいな見た目だけど、この双子も見た目が若い。明らかに見た目が双子じゃないけどね。ファルさんはつるぺた幼女サイズで、逆にニマさんはファルさんが豊満大学生サイズぐらいまで成長したような姿である。
……言うまでも無いが、外見関連も禁句である。
「「…………」」
失礼な思考から帰還すると、いつの間にか目の前でだんまりと幼女と先生が見つめ合っていた。あれ、どうかしました……?
それなりに気まずい空気が漂い始めたところで一言、メルディアナ先生がサラッと口にする。
「……相変わらず、ファル様は若々しいですね」
「「…………」」
んのぉおおおッ……! いきなり禁句を口にしちゃったよ――!
口にしたのはメルディアナ先生なのに、私の冷汗が止まらない。あれ、この部屋って温度調節最適化されてましたよね……?
「――まあ、ほほほ。ありがたいことなのですよ?」
笑顔のまましばらく固まっていたファルさんが大人な対応をする。……見た目幼女だけど。でも良かった。まだ一線は超えていないらしい。
ニコニコ対応するファルさんの反応に一々ビクビクしていると、私の気を知ってか知らずか畳みかけるようにメルディアナ先生が言葉を続ける。
「成長期はまだですか」
のおおおおッッ!?
先程までの安堵もなんのその。メルディアナ先生の辞書には遠慮という語彙は存在しないようだ。狙ってるのかと思うほど的確に禁句を述べていらっしゃる……!
ここでとばっちりは勘弁なので、静粛に徹する。声にならない叫びをあげガタガタ青褪める私と違い至って普通に話を続ける二人。十年は寿命が縮んだな。ごくり。
「――メルちゃん。あたくし、」
のおおおおッッッ――!! もうやめてくれ――……ッ!
こういうときに頼れる人材は……ダメだ、普段は保護者な二人の暴走を止められる猛者が近くに存在しない――あ、終わった。
終わった終わった終わったオワタ――。
断頭台で処刑を待つ罪人のように己の生の儚さを想う。――ああ思えば……ん? あれ、待てよ。
今までの人生史上最も心に残る素晴らしい出来事を回想しようとしたら、幼女時代から碌な思い出が無いぞ。思い出がどこもかしこも命からがらなんですけど、どうなってんの? バカみたい。
回想するはずが逆にシラケて冷静になってしまったので、目の前で繰り広げられるやり取りを一周回って穏やかな気持ちで眺めることにした。
「――ロリが好きなのですよ」
「ん~……!」
とっとっと、思わず前にズッコケそうになる。穏やかに眺めていたから良かったものの、その直前までなら緊張が切れて気絶してたな、うん。
それよりなによりロリがロリ好きって……。ここで問題なのは片方がロリバ……やめよう、この話は。決して目が合ったからやめるとかではない。……察して?
あまりこの話題を続けたくないのはファルさんも同じなのか、空気感的に終わらせようと「それがなんだというのですよ」と圧力を掛けてきた。さすがのメルディアナ先生も察したのか、したり顔で一つ頷いてくれた。うむ、嫌な予感がするぞ。
「そうでしたか。なかなかによろしいご趣味ですね」
「~~っ!」
どうしよう、嫌味にしか聞こえないっ……!
私のことなど関係なしにメルディアナ先生がペラペラこの話題を続ける。終わりそうな雰囲気だったのに、なんでそこで繋げるの……。私の耳がおかしいのかなあ……。
私と同じく嫌味に聞こえたのか、ファルさんが片眉をぴくっと釣り上げた。ヤバい。今までが奇跡だったけど、ついに堪忍袋を刺激したか――。
「……何が言いたいのか、はっきりと言うがいいのですよ」
ファルさんから漏れ出る魔力が室内を極寒へとつくり変え始める。このままでは地下もろとも極寒の地へ変貌しかねない。理不尽に私が叱られるのは目に見えていたので躊躇っていたけど、さすがにそろそろママを呼んだほうがいいんだろうか。教えて! 私の良心!
思考停止直前の私に比べて漏れ出る強大な魔力を前にピクリともしないメルディアナ先生が満を持して口を開いた。
「……いえ。ただ、私が幼いころよりずっとファル様はいつまで経っても若々しいままなので、何か理由がお有りかと気になりまして」
「「…………」」
ちょっと難聴を患っているかもしれない。空気の読める大人として定評のあるあのメルディアナ先生が嫌味とかそんなまさかね。聞き間違いに違いない。うん、そうに違いない。
「もしかしてファル様が特殊な性癖の持ち主でしたら生徒の教育に悪いので、早々にお帰り願わなければと考えていたところです」
「「…………」」
余計な補足……!
そしてやっぱりただの嫌味だった!
もうやめてくれっ……!
これ以上私の寿命が持たないっ……!
ピシリ、と空間の割れる音がした。思わず身構えてしまったものの、その一瞬のうちに物騒な気配が辺りからファルさんの元へ引っ込んでしまった。それはそれで怖いんですが。
固唾を呑んでファルさんの反応を見守る。物騒な魔力を引っ込めてしまったので、まったく感情が伝わらなくて逆にそれが恐怖を煽ってくる。時間にして数秒もかかってないけど、私にとっては長い間隔を開いてファルさんが丁寧に答えた。
「……ほほほ、それなら心配いらないのですよ。あたくし、子どもと遊ぶのが好きであるからこそ、この見た目にしているのですよ」
「そうでしたか。それでしたら納得しました」
すぐ横でギリギリすれ違う会話が交わされて内心のヒヤヒヤが止まらない。あれ、色々と禁句じゃないの? 昔言いかけたとき死にかけたアレはなんだったの?
昔の私が発言に迂闊だったのか、それともメルディアナ先生が特殊で凄いだけなのか。たぶん後者だな。うん。
「――そうそう、こんな噂を聞いたのですよ」
現実逃避気味に自分の過去あった言動はどこが悪かったのか現状と比べていると、ファルさんがその隙に詰め寄ってきた。
ところで何、噂って。遥々ファルさんたちにまで届くようなことはしてないぞ……いや待て。ママ経由で有ること無いこと情報が漏れているかもしれない。あ、誰かからなんかそれっぽい話を聞いたような……。
心当たりを遡っているとファルさんの目が鋭く陰った。よほど悪い噂なのかと息を呑む。
「――そば近くに汚物を侍らせているとか、なのですよ」
――へ?
「……そばおむつ? たべ……?」
え、ナにソレ。そばに近いオムツってなんだ。オムツを細麺みたいに刻んでるのか。それって使用前なの後なの。いずれにしても食べないよそんなゲテモノ……。おうぇ。
ガチゴチに身構えていたのがアホらしい。何を言い出すのかと思えばなんてことを言い出すんだ。緊張でカラカラになっていた喉のせいで上手く声も出ない。
ちなみにトイレはマイナーだけどオムツは存在している。さすがに謎技術も移動しながら吸収分解作業は無理っぽい。人は歩く動作だけで色々なエネルギーを使うので、基準や限度が分からなくなってしまうのが難点らしい。赤ちゃんと高齢者用にこの世界にも存在はしている。ただ取り換えが数か月なくて誤って口にしたところで衛生的に問題ないとんでもオムツだけど。ナゾイ。
「……ん? オムツ!?」
待てよ。……よく考えたらまだオムツ履くようなお年頃じゃない!
それにいくら私だってさすがにそこまで食い意地張ってないからっ。そもそもからしてこの世界ではオムツを口にしても問題ないとはいえ食べられないはず。……なんだかオムレツ食べたくなってきたな。後でうささんにお願いしよっと。
心の声が顔に出てしまっていたのか、傍観していたメルディアナ先輩が見兼ねてそっと近づいてぽそっと教えてくれた。
「……汚物。汚いモノですよ」
「……おぶつ」
おうふ。気絶直前の緊張ヒヤヒヤイベント後にあまり聞きなれない言葉だったので、つい軽い脳死状態のせいで聞き違えてしまった。しかしおぶつってあれか、汚物。……え、何その噂。私がいつ、そんなものを口にしたと……?
「――食べてないっ、断じて食べてないっ……!」
オムレツならともかくっ……! ぐう。
「……ハァ」
私の発言にメルディアナ先生が溜息を吐き、ファルさんはニコニコしている。とんでもない噂が流れたもんだと青褪める私と実に対照的であった。
「……これだからマリアは過保護なのです」
「聞いていた話とはまったく心配も問題も縁もなさそうで良かったのですよ」
「どこらへんがっ!?」
問題大有りでしょ! 乙女的にこの上なく不名誉な噂だよね……!?
「ほほほ、些末事な杞憂だったのですよ」
何故か満足した様子のファルさんは、未だに床に倒れ込んでいるニマさんの襟首を引っ掴むと何か口を挟む間も無く「ほほほ、お邪魔したのですよ」と退室して帰ってしまった。
……死体のように引きずられていくニマさん。どこかで見たような光景だ。パパ元気かな……あと数年は帰らないので悪しからず。
そして後に残ったのは魔獣にでも襲われたかのように荒らされた教室と、沈黙するメルディアナ先生に私だ。今日は先生に質問しに来ただけなのにとんだ人たちと遭遇……いや、訪ねられたもんだ。
気まずいような沈黙を保つことしばらく。唐突にあることに思い至ったためキリッと真面目な顔で先生へ向き直り、空気を変えるために軽く咳払い。ごおっほん!
「……先生。私、食べてないです」
「……ええ、分かっていますよ」
その返答はどちらの解釈で受け取ればいいんでしょうか……誰か教えてっ。
女性に年齢や身体的特徴を聞くのはタブーの人が周りに多いですが、男性だとタブーと思われることが少ないのは何故なんでしょうね。
それはさておき、次回は四試合目に入ります。お楽しみに。




