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ロストアイ  作者: たみえ
学園生活一年目~闘交会騒動前篇~
93/106

双子、ではありません


 ママとの幻想的な夜ピクニックより四日と少々。今日は第三試合だ。

 結局あの夜、ママに寮へ直接送ってもらってそのまま勝手に開催されていた祝勝会へ遅れてやってきた英雄並みの扱いで参加させられた。まったく。

 私が参加して寮の中じゃ大勢で手狭だからって、わざわざ近くの大きな施設を借りてまで二次会が開催された。ジルニク君なんてあっぷるジュースで酔っぱらいみたいに盛り上がってたわ。解せぬ。実はアルコールなのか、あっぷる。

 知らない人も多くいて、例の如く巨大スクリーンに第二試合の映像がエンドレスで流されてしまった。恥ずかしい。ひたすらに恥ずかしい。

 ……さすがにボディーやグリルもいつの間にかその和に混ざっていたのはジュース噴きそうになったけどね。耐えた。乙女の意地に掛けて耐えた。わたし、えらい。

 途中で脱ぎだしてボディービルダーショーをしだしたから、公共の安静のため会場の隅に隔離しておいたけどね。マジ精神衛生に悪い奴等だ。乙女の前で堂々と脱ぎおってからに。女子勢で喜んだのはデボラだけだぞ。……違う意味でだけど。


『――さあさあさあさああっ! 来ました来ました来ましたよ! 皆さんっ』


 テンションたっけーな、おい。毎回毎回ご苦労様です。もうちょっと適当に控えてもらってもいいのよ……?


『この試合で勝つとベスト十六入りになります。他のシードも勝ち進んでいく中、やはり注目なのはこの試合、いえ、シードペアのこの方たちでしょう!』


 これで勝ったらベスト十六かー、速いわー。なんて考えてたら余計なことを言われた。やめて。民意は流されやすいモノなのよ。これ以上こちらに変な注目を集めさせないで。マジで。


『――まずは長く厳しい戦いを勝ち残ってきた強者、メリー、サディーペアです!』


 まだ三試合目ですが、とか思ってたら対戦相手のことだった。ちょっと自意識が高すぎた。何も口に出していないとはいえ普通に恥ずかしい。ふいっとひそかに視線を逸らすと、その先に同じく視線を逸らしたジミー先輩が居た。……同意します。


『二人は一見双子のようですが、学年が二つ違うようです!』


 へえ。確かに言われてみれば双子みたいにそっくりだ。それに二人とも綺麗な金髪ツインテールだな。背丈もそっくりだし、目印が無いと外見だけではどっちがどっちか間違えそうだ。

 ――まぁ、見分け方はあるけどね。


『まずは姉のメリー。元気が過ぎて妹と間違われること数知れず……落ち着きの無さはあるものの、魔法の腕は確かです!』


 へー。ていうか紹介内容散々だな。なんか怒ってんぞ。あっちがメリーか。実況席が遠すぎて届いてないだろうけど、頑張るな。


『続いては妹のサディー。控えめで大人しいため、姉の方だと勘違いされることしばし……か弱い反応がひそかに男子の人気を掻っ攫っています。正直、悔しいです!』


 なんか私情挟みだしたぞ。いいのか。いいのか、それで。確かに男子受けは良さそうな子だけども。チラッと目を向けたら子ウサギのように涙目で怯えられた。

 ――イジメてるみたいで気分悪いな、おい。……ああいうタイプは嫌いだ。泣けばいいと思って、自分から何か行動しようともしない。絶妙な場面で悲劇のヒロインぶってるっていうの? 狙ってるんじゃないかって一度でも思ったら絶対本来の性格悪いって思うよね。


『二人は昨年に続き、ペアを組んでいます。双子以上に息ぴったりな魔法が炸裂するでしょう!』


 二年連続同じペアねぇ。偶然にしては変よね。何かカラクリでもあるのかしら。そんなことを思考してたら妹ちゃんと目が合った。あ、やっぱ思った通りのタイプ。しかも陰気寄り。

 遠くて気付いてないと思われたかもしれないけど、私の目は第三の目があるみたいに視える範囲が広い。油断したな。


『――そしてそして~、現在大注目のシードペア。アイ、ジミーペアですっ!』

「「「「うおおおおおおおおおお!!」」」」


 あっつくるしぃ~。マジ暑苦しい。ムサいわ~。


『前回の試合では凄まじい力押しの知略で最後にあっけなく勝利したお二方。あのボディー選手が手も足も出ないという衝撃の光景を見た者たちは興奮で夜も眠れなかったことでしょう。私もです!』

「「「「うおおおおおおおおおお!!」」」」

「「…………」」


 思わず無言になる私とジミー先輩。さりげなく褒めてると見せてディスってません? 気のせい? これも被害妄想に入る? そう思うのは私だけ?


『今回の試合は強力な魔法が見られるのでしょうか。それとも最低限の力押しが見られるのか。期待で胸が膨らみます! あ、残念ながら胸は無いですけどねー』


 あっはっはーと笑いで締めくくった実況が聞こえた。大丈夫か。明らかに僻みに聞こえるぞ。確かに対戦相手の二人は特に大きいなと私も思ったけど。私情入り過ぎじゃない?

 ……私もちょっと内心僻んだけどね。同士よ――。


『――そろそろ始めてもらおうかしら~』


 例の如く痺れを切らしたママがさっさと始めるように催促する。いつもの流れなのでもはや誰も気にしていない。既定路線だ。

 ママの一声ですぐさまフィールドが変化する。今回は湿地帯のようだ。ふーん。私はともかく、ジミー先輩とは相性悪そうだな。ああ、でも――。

 フィールドが完全に切り替わって数秒後、頭の中に開始の合図が響いた。


「――厄介ですね」

「そうなのかい? ……いや、君が言うなら厄介なんだろうね」


 開始早々の私の発言に反応するジミー先輩。厄介は厄介だけど、ジミー先輩が考えてるような厄介ではないと思われる。なので、念のため付け加えた。


「――湿気は乙女の大敵ですから」

「…………」


 先輩から信じられないという視線を感じた。え、何。そんな変なこと言った? 元々癖が強いのに、髪の毛のうねりが増々酷くなるからね。気にして当たり前だと思うけど。


「……見た目じゃないよね」

「どういう意味ですか、どういう」

「ハハハ……」


 乾いた笑いで流された。失礼な。私も私だけど、最近のジミー先輩は遠慮も容赦も無くなってきた。仲良くなったと言うべきか、怒らないラインが分かってきたと言うのか……複雑である。

 ――まぁ、ひとまずそれはおいといて。


「来ます!」


 すぐさま魔法が飛んでくるのを感知し、ジミー先輩に伝える。系統は風魔法。かなり強力なようで、おそらく継承レベルにはいってると思われる。暴れ狂うかの如く湿地帯を駆け巡る風が触れた者の身を切り刻む。

 瞬時に周囲を『結界バリア』で覆い、あらゆる方向から切り刻もうと迫る風の斬撃を防ぐ。ジミー先輩にも一部は見えているようだ。……私が張った『結界バリア』に弾かれてる分だけだけどね。

 一応、私は全部見えていたりする。


「――手も足も出させないつもりだね、これは」

「どうします? 先輩」


 一応、ジミー先輩メインで勝てないことも無いだろうけど、妙な勘に障って気になるんだよね……。だからこそ、ジミー先輩に決めてもらう。どう、攻略するか。


「――責められるところまでは私一人、その後は任せてもいいかな?」

「らじゃー」


 相手は二人とも特待生。魔力量ではジミー先輩が不利。私が全力でサポートするしかない。『結界バリア』を二つに分割してジミー先輩と分け合う。

 事前に色んなパターンを想定した訓練を実施したので、これもそのうちの一つ。分割二人だけなら十キロ圏内で五時間は維持できる。ジミー先輩は呆れてたけど、敵にバレることは無い。

 理由としてはいくつかある。口に出したほうが強力ではあるけど、私は基本スキル名を口に出さない。なので相手も知らないスキルはバレようが無い。そして何より、――私の魔法スキルはすべて、隠蔽の魔法が重ね掛けされている。

 ママや師匠レベルでないとまず看破不可。デボラやヤマトくんにすら気付かれたことは無い。ちなみにジミー先輩には乙女の企業秘密で押し通している。


「――頼みましたよ」

「私の言葉なんだけどね……」


 ここからがジミー先輩の戦いだ!

俺たちの戦いはこれからだ!

みたいな感じでジミー先輩を応援しといて下さい。

次回、ジミー先輩が奮闘します。

お楽しみに。

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