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ロストアイ  作者: たみえ
学園入学
45/106

そこに壁があったから


 今、私とリアとジルニク君の三人で、手分けしてドーム型の建物の入り口を探している。あの後、ジルニク君には謝っておいた。

 でも、未だに思い出せない。なんか、すぐそこで引っかかってるんだけどな……。


「やはり、どこにも入口が見当たりませんわ」

「私も同じく」

「俺もだ」


 一度集合して、それぞれの成果を報告し合う。特に何も見つからなかったようだ。といっても、ぐるっと回っただけです。

 おかしいな。確かに、スカウトの書にはココだって書いてあったのに。騙されたのか?


「おかしいですわね。確かに教室の位置は、この建物の辺りで間違いございませんもの」


 リアが自分のスカウトの書を取り出して確認するが、私と同じ内容しか書かれていない。ジルニク君も無言で自分の書を取り出して見せてくれたけど、内容も全く変わらないようだ。


「どういうことだ……」


 三人寄れば文殊の知恵とは言うけれど、私達三人が揃っても、同じように首を傾げるのみで、何も知恵が湧いてこない。


「うーん。こういう流れの定番なんだけど、一つ試してもいい?」


 三人でうんうんと唸るだけでは何も進展しないので、とりあえずとばかりに、思いついたことを試したいと提案をする。この進まない現状にウンザリしていたのか、二人が私に注目するように先を促した。


「前に、ママに課された宿題があってね」


 私は、言葉を口にしながら、だんだんと建物の壁に近づいていく。私に話の先を促した二人の視線を後ろに感じながら、話を続ける。


「その中でも、世界の謎を解くことでクリアできるVRゲームがあったの」


 話しながら壁に近づくうちに、とうとう壁に触れるところまで近づいた。後ろで、私の話を黙って聞いている二人が、生唾を呑み込んだのがのが分かった。私たちの間が緊張感に包まれる中、私はさらに話を続ける。


「基本、謎解きがメインだったんだけど、時々、どうしようもなく、突破できない難題にぶつかったの」

「どうやって、その難題を突破いたしましたの……?」


 私があまりにも意味深な言動をするからか、リアが、喉が渇ききったような掠れた声で聞いてきた。私はそれにこたえるため、意味深になでなでしていた壁から手を放し、拳を握った。


「謎が解けないのなら――」

「解けねぇなら……?」


 ジルニク君も乗ってきたようだ。私はなんだか面白くなり、握った拳に身体強化の要領で魔力を籠めた。そして――


「――難題そのものを、ぶっ壊して先に進めばいい」


 かなりの騒音を立てながら、壁に大きな風穴が空いた。風圧で砂埃が宙に舞う。目にゴミが入りそうだ。


「「…………」」


 ゴシゴシと目を拭いていると、砂埃の向こう側で、間抜け面の二人が見えた。どうやら私の究極的な素晴らしい答えに、二人は声も出せないようだ。唖然として空いた風穴と私で視線を交互させている。私も、今しがた自分で作った風穴を検分してみる。


「よし!」


 上手く風穴が空けられたことに満足して、ガッツポーズを決める。すると、短い間に慣れたのか、いち早く立ち直ったリアが私の頭を軽くはたいた。


「いたっ!」

「よし! じゃありませんわっ。何をやっているの!?」


 なんでか興奮しているようだ。何をそんなに驚いているんだろう。道を作っただけなのに。


「何を不思議そうな顔をしているのです! 器物損壊ですわよ!?」


 あ、そうか。そういうことね。しかしなんだ、そんなことで怒って興奮してたのか。それならそうと言えばいいのに。


「うささん。パパに言っといて」

『了解しました。擦り付けておきます』


 これで今度こそ大丈夫だろう。修理代金についてなら、我が家では必要経費。このくらいは許容範囲なのよ。ママもよく壊すし。色々。そう思いながら、私はリアとジルニク君に向かって決め顔でグーサインを披露した。問題ない。この程度でじゃ破壊には入らないさ。


「……その顔、とても腹が立ちますわ」

「奇遇だな、俺もだ」


 あれ。なんか二人の目が据わっちゃったんですけど。私、なんかおかしいことでもした?


『おかしいのはいつもではないですか?』

「そういうことじゃないみたいだけど……」

『では、言い直します。非常識ならどうでしょう』

「…………」


 二人の視線に耐えられず、思わずうささんとこそこそ見解を述べ合う。しかし、有益な話し合いになる訳もなく、最終的にうささんをとっ捕まえようと動き出す結果となった。……非常識なのは私じゃない!


「……はあ。仕方ありませんわ。中には入れるようですから、まずは謝罪をしましょう」


 リアが盛大な溜息をこれ見よがしに吐くと、私を先頭に引っ張って中に歩みを進めていく。後ろからジルニク君が付いてくる気配もある。

 物理的に空けた穴をくぐり中に入ると、大量の視線と目が合った。

 うっ、と思いながらも周りの様子を見ていると、どうやら、広い演習場のようだった。生徒だろう人たちが散らばって訓練している。


「す、すみませーん。新入生なんですけど。ここの担当教室の先生はいらっしゃいますかー……?」


 いつまでも見つめ合ってるわけにはいかないため、周りの先輩とおぼしき方たちに声を掛ける。

 すると、私の声に反応したのか、全ての視線が私の足元に集中した。

 周囲の反応から、恐る恐る視線を下げると、白目を剥いた教師らしき人が地面に転がって踏みつけられていた……私達三人の足元で。


「「「…………」」」


 私たちは、そっと足を退けてやり直しを試みた。


「す、すみませーん。新入生なんですけど。先生はどこですかー? あ、そんなところでどうしたんですかあ!」


 周りの視線が痛い。


「う~」


 私の大根演技のおかげか、先生らしき人物がタイミングよく目を覚ました。


「すみませーん。新入生なんですけど。見学って大丈夫ですか?」


 私は何事もなかったようににこにこと振る舞った。グサグサと周りの視線が刺さる。痛い。


 しかし世の中甘くない。一度は騙されかけたものの、明らかな物的証拠により、私の事実捏造も虚しく、すぐにバレました。

 結局、教師が復活すると、目撃者多数により怒られ、その後の必死の謝罪も虚しく、即刻追い出され、三人仲良く出禁を食らったのであった。

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