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ロストアイ  作者: たみえ
学園入学
26/106

総合体力テスト


 案内係に先導され、目がチカチカする白い通路を進む。先程の学力テストの衝撃がまだ心に残っていた――。

 ――なんだ、それ。無駄にハイテク仕様にして、夢も希望も無いよ……。


『テストに何を求めてるんですか』


 さあね。


 ただ、トンチの利いた誤答も見られないのは悲しいなと思って。

 問題文をあらぬ解釈して誤答したり、ヒントで出てくる偉人の写真を落書きで強制的に別の偉人に似せてワンチャン狙ったりとか、そういうキラリと光る逆転の発想を育てることも必要だと思うし?


『社会不適合者の育成には役立ちそうですね』

「そっか、天才と変人は紙一重って言うからね」

『その理屈でいきますと変人となりますが』

「なんで!? せめて天才と呼びなさいよ!」

『自画自賛では何も生まれません……』


 何。


 戦いからは何も生まれない……みたいな感じで言ってるの。

 生まれるよ! 私のやる気が盛々と出てくるよ! 大事でしょ?


『どうやら着いたようですよ』

「…………」


 ……スルーされたのは癪だけど、いつものことなのでとりあえず周囲の確認をする。大きな広間のようで、中央に騎士のような人型ロボットが複数佇んでいた。


「あちらを相手に戦って頂きます。用意が出来ましたら内側の線を越えて下さい。線を超えた瞬間からテストが開始されます。戦闘手段は問いませんので、お好きに戦闘をお願いします。武器が必要であれば壁際に用意がありますので……」


 案内してくれたお兄さんが笑顔で説明をしてくれる。


 ふむふむ。

 ……なるほど。

 うーん……。


「何をどうすればテストが終わりますか」

「時間制限を設けていますので、その間に戦闘を行って頂ければ問題ありません」


 時間制限。


 確かに無制限だと倒した後もどうすればいいのか分からないしね。


 あ、


「全部倒した場合は?」

「え……あ、いえ、その場合は残り時間に関係なくテストは終了となります。控室で結果を待って頂ければと……」


 急にお兄さんが困惑した顔になったな。でもそうか。残り時間どうしようかとか考えていたけど、全部倒したら終了出来るってことは特に暇つぶしの内容とかは必要ないか。


「ふーん。あ、AIは参加不可ですか?」

「ええ、これはあくまで生徒の実力を測るものですので」


 なるほど。


 つまり制限時間内に、見たところ三百体以上はいそうなロボ軍団を残らず排除すればテスト終了で問題ないってとこね。


『制限時間は十五分あるそうですが』

「は、冗談? こんなの十五秒もかからないよ」

『……私からはもう何も申しません』


 ちょろいテストね。


 こんなの、ママとのお勉強に比べれば何も考えずとも処理できるレベルよ。


「さて、行きますか」

「ちょ、武器が……!」


 後ろで慌てるお兄さんの声が聞こえるけどもう、関係ない。一度スイッチが入ると戦闘に集中して周りの雑多なことは視界にも耳にも入らないからね。これもママの教育の賜物。


 一歩。


 軽く線を超えると、今までただ佇んでいたロボが目に光を宿して動き始めた。この程度の相手、素手で十分。


 もし、

 万が一、

 億が一、


 武器を使用したなんてママの耳に入れば地獄のお勉強フルコースだ。……それだけはマジ勘弁。勢い良く近づいてくるロボをしっかりと見据え、己で編み出した身体強化を駆使し、さらに力強く一歩を踏み出す。

 地面に食い込んでひび割れた足跡を残し、一気に先頭の数体と間合いを詰めた。反応の遅いそれの首をへし折り、すれ違いざまに踏み台として蹴り飛ばし、次のロボへ向かう。そして次々と襲い掛かるロボを相手に周りの景色を置き去りにしながら処理していく。……連携もまあまあしてくるけど問題なし、隙だらけ。


 ……ふーん。なるほど。


 そこそこの強さがあれば一対一でも問題ないけど、複数相手でも対応できるかを見てるようね。実際、襲い掛かってくるのは3、4体ぐらいで、それ以外は近づかないと反応すらしないようだ……まあ殲滅一択だけど。


『……13、14、15。宣言通りですね。細かいタイムは14秒47です』

「ちょっと様子見しすぎたのかも」

『そのようですね。もう一度挑戦すれば半分のタイムでも問題なさそうです』


 ママが教師やってるから慎重に、着実に処理していったけど、思ってたより手ごたえ無かったな。ま、ママの教育レベルが基準なら私はこの世界の人間を同じ人間とは呼べなくなるけどさあ。


「あの、お兄さん。終わりましたけど」

「………」

「お兄さん?」

「……あ、あぁ、その、こちらから控室へどうぞ」


 相変わらず呆けた顔でお兄さんが案内をしてくれる。それにしてもママの基準をベースにするわけではないけど、旅してきた中でもあの程度だと……。


「お兄さん。あまり言いたくはないけど、あのテスト簡単すぎますので改善したほうがいいと思いますよ」

『余計なお世話だと思いますが』


 そう? でも、さすがにあの程度だと測定なんて出来ないと思うけどな……。なにより動きが単調過ぎて、対処がしやすいのはどうかと思うけど?


「い、いえ。戦闘が苦手な生徒も居ますので……」


 ドン引きされたような表情を浮かべてお兄さんが視線をさまよわせながら申し訳程度に小声で教えてくれた。ちょっと震えてるように見えるのは疲れによる錯覚に違いない。うん。ごめんねお兄さん。私別に脅したとか脅迫したとかそんな圧力をかけるような意図は無かったから。


 ……そっか。生徒か。


 そういえばここは学園で、今はクラス分けテストの最中だったな。そうなんだよね。環境に騙されたけどよく考えれば私、まだ子どもだった。外の基準で考えてもダメだったな。

 ……なるほど。まだ、世間ズレしてるみたい。


『理解していただけたようで何よりです。時間が掛かりましたね』


 一言多いんですが?

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