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ロストアイ  作者: たみえ
大事な幼少期
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家族が増えました


 ――家族が増えました。


 もう一度言おう。


 ――気付かないうちに家族が増えていました。


 え。いつから?! え……?


『落ち着いてください。家族が増えたのではありません。増殖したと言い直しましょう』


 なお悪いわっ!

 お前が落ち着け!

 辞書で言葉の意味を調べ直して餅つけ!


『モチツケ? なんですかそれは』


 マ・ジ・か!


 ウサギの姿形のくせに餅を知らないの!?

 ぺったんぺったんと月で餅をつくのがお仕事なのに!

 ……月に代わってお仕置きされるよ!


『そんな職に就いた覚えはありませんのでお仕置きとやらも受けられません』


 ――だめだ。ニュースがショッキング過ぎて月見で忘れようと本能的に動いてしまった……。

 お酒飲めないけど。


『ツキミ? それはなんですか?』


 いいのいいの!

 今はそれどころじゃないでしょーが!


 私、ママにゲームを渡されて半年死ぬ気で頑張ったのに……。

 実は出産するから、うるさい私を隔離していたなんて……!

 ――あ、パパも出張で追い出されてました。まだ戻ってないです。


『出産時に鬱陶しいTOP2を気付かれず自然に遠くに追いやるとはさすがの手腕です。この私にですら悟らせませんでしたからね』


 おい。今さりげなくディスりましたよね。

 思考が乱れていても聞き逃さないよ……?


『それにしても年の差としては少し差が大きいですね』


 実質八歳差だからね。私が花の十七歳になったら九歳だからね。ちょうど小生意気な反抗期が重なって……。

 ……最悪じゃねーか!

 クソガキがダブルで揃ったら只々最悪じゃねーか!


『ここは十八歳と十歳が分かりやすいと思うのですが、何故一つ下に?』


 なんとなく。


 十七歳が女の子のピークなんじゃないかなと近頃思いまして。

 ……それに実際、なんか危ない妖しい独特な雰囲気で誰でもその年齢でモテはじめません?


『それは幻想です』


 ……うわぁ、今グサッと来た。静かにグサッと来たよ。

 今世やっと半分に達してたのに夢も希望もない回答をありがとう。心の奥に刻んどくよ……。


『性別は分かっているのですか?』


 うーん? どうだろう。産まれたよーとしか伝言が無いし。

 対面出来るのはパパが戻るころだから今度の九歳の誕生日……って待たせ過ぎじゃない?

 あれ? こんなもん……?


『自らの半生を振り返ればおのずと答えが出ると思いますが』


 ……そういえば。

 私、五歳まで外に出たことなかったな。


『庭にさえついこの間脱走して無理やり許可を貰っていましたよね』


 ……そんなこともあったような気がしないでもないかな。


 ――あっれぇ?


 てことは下手すれば数年は会えない? てこと……?


『つまりはそういうことでしょう』


 そっか。


 そういえば私も前世を思い出す前は部屋から出ようとは一切思ってなかったからな。

 ……ママが怖くて。


『注射で逃げるとはマリアも思っていなかったでしょう』


 懐かしいね~。あの時はほんと後先考えずに外へ飛び出したからね。

 ……よくよく考えればなんで無事だったんだ、ほんと。

 知らず知らずのうちに奇跡的な生存確率の博打に勝ったよね、あの頃の私。


『今でさえ死にかけることも多いですからね』


 死にかけるというか完全に殺しに来てると思いますけど……?

 ほんと幼児に優しくないよね、ここ。


 ――あ、それはそれとして今ピンときたんだけど。死にかけるといえば気になることがあって……。


『気になることですか』


 ゲームクリア出来たのはいいんだけど思えばあのゲーム、この屋敷の構造に似てるなと思って。


『ゲーム製作者はこの屋敷を建築したお方ですので』


 やっぱり。通りで見たことある謎解きや罠ばかりだったわけだ。

 ……ま、おかげで苦労も少なくクリア出来たからいいんだけどさ。


『半年はしっかりと消費しましたけどね』


 うっさい。内容が深すぎて攻略に時間が掛かったの。

 ……ただのアクションゲームかと思いきや本当にお涙頂戴の感動大作だったんだよ。


『メインストーリーのクリアで十分なところをサブストーリーまでわざわざ手を出していましたからね』


 仕方ないでしょ。メインをクリアしたのはいいけどまさかサブにあれほどの深い話があるとは思わないでしょ、誰も。


『確かにあれらはメインよりメインであるかのようにかなり凝っていましたからね』


 クリアして解き明かした世界の謎より深い謎を解き明かしたからね。むしろメインより重大な秘密を解き明かしたからね。

 ……あれ、完全にシナリオ逆だよね。どこに力入れてんだ、全く。


『この屋敷も未だ明かされていないことが多いですから。チャレンジしてみては?』


 それ、私がゲームで何度も死んで、やっとクリアしたのを知ってての言葉なのかしら。

 私に死ねと?


『冗談です。死なれては困りますのでチャレンジは先延ばしにしましょう』


 暗にチャレンジしたら死にますってことだよね。しかもいつかはチャレンジすることになってるんですけど……。

 ……スパルタかっ!


『序の口です。今は忙しいようですがマリアは甘くありません。そのうち課題として指定されるでしょう』


 だからその不吉な予想やめてくんない?

 この平和なひと時をまだ、キープしていたいの……。


『覚悟を決めたほうが建設的だと思いますが』


 毎回毎回変なフラグ建てていくよね。


 ――あ~あ。


 つかの間の休息もないとか、どこかに子どもの楽園はないものか……。


『この部屋を見てよくそんなことが言えますね』

「…………」


 ……そうだった。ここが子どものパラダイスだった……完全に馴染んでて忘れてたな。

 日常の一部と化していて忘れてたけど、今私の部屋はテーマパークに改造されてるんだった……。


『良かったですね、楽園が目前に見つかりましたよ』


 この現世に楽園なんぞ存在していない、ということね。

 ちくしょー……。


 ――って結局新たな家族について何も解決してないよ!


『そのうち判明するでしょう……きっと』


 だからそれ、結局何の解決にもなってないって!


 ……どうやら私が下の弟か妹に会うまでには、まだまだかかりそうだった。

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