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ロストアイ  作者: たみえ
大事な幼少期
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常識って分かります?


 ――前世を思い出してから早々に、ヤバいのに目をつけられたようです。


 ……しかしこれといって何か酷いことをされている感覚もなく、頭に声が響くだけで実体がある訳でもなし。異常があるとすれば私が転生したことくらいだろうか。

 ……とりあえず害は無さそうだし放置の方向でよろしいでしょうか。


『放置プレイですね。わかります』


 ちょっと何言ってるのかワカンナイデス。


 記憶を想い出して、さっきからずっとこの調子だ。

 声に出さずとも思考が読み取れるらしく、こうして私が思考していることも筒抜け。おかげで年齢によるものか、舌足らずにしゃべるよりは意思疎通? がはかどってスムーズだからいいけど。

 しかし一体どこから声を受信しているのかさえ分からない。頭に機械的な何かをつけている訳でもなく、服装も可愛いノースリーブワンピースでポッケも無い。どういうこと……。

 前世の記憶が蘇った直後だからか頭がごっちゃになっているけど、実は全部が私の妄想なのではなかろうか。


『面白い答えですが、これは現実です。それより何をしているのですか?』

「うるさい、見ればわかるでしょ!」

『そこの角は右ですよ?』

「…………」


 私の考えていることは筒抜けだろうに、さっきから余計な口ばかり……口が見当たらないけど。延々と続く廊下。彷徨う私。どうしてこうなった。


 ……いったん、私が現在どういった状況なのか整理しましょうかね。


 今世の私こと、アイ・スズキは現在ぴちぴちの幼女の姿である。

 年齢は五歳。前世の記憶を先ほど断片的に思い出したところである。

 私が記憶を思い出したきっかけは読書だった。先程まで読んでいた良く分かんないおっさんの著だ。しかしなぜ、私がそんな幼女にあるまじき本をチョイスしたのか。理由は簡単。


 ――お利口ぶったのだ。


 それに五歳児の女の子というのは気難しいおませな時期。この複雑な心境故に、少し背伸びして古く埃をかぶった難しそうな本を読もうとチャレンジしたわけである。

 何がキッカケかは分からないけれど、……分からないなりに読書中、唐突に閃いた。


『あ、なんか私、転生、したかも。……って、ん? 録画は……!?』


 みたいな流れで冒頭に戻る。……残念すぎるにもほどがあった。

 しかし私のアホさはひとまず置いといて、――問題は現在進行形である。


「どうしてこう、迷宮みたいな家なのかなぁ」


 五歳児の視点からはどこへ進んでも同じ景色にしか見えない。永遠と彷徨ってる気がする。


『家柄ですね』

「分かりやすい答えをありがとう。全然嬉しくない……」


 あーほんと、なんでこんなヤバそうな家に生まれちゃったんだ……。


『父親は世界的大金持ち、母親は伝説の暗殺者。一人娘は珍しい時代の転生者。なかなか見られない、レアケースです。とても興味深い』


 おまけにおしゃべりなAIがもれなくついてくるとか……。

 あーほんと、なんでこんなヤバそうな家に生まれちゃったんだ私よ……!

 父親はまあ、うん。転生もののテンプレだから分かるけども。

 ……母親の紹介がヤバさましましじゃない? なによ、暗殺者って……。

 しかもAIにすら伝説とか言われちゃうってどうなの。ねぇ、どうなの?


「やり直しって出来ないのかな……?」

『現在、意図して転生出来た例は確認されていません。珍しい例として惜しいですが……転生希望なら可能性は低いでしょうが、もう一度、死亡してみてはいかがでしょう』

「ねぇ、それ本気で言ってるの?」


 サラッとなんて恐ろしい発言をするんだ……。死亡直後で混乱中の転生幼女にかける言葉ではない。


『わたしたち、嘘は付きません』

「うん、それ答えになってないよね!?」


 ――AIコワイ。

 もうやり直したいとか言いません。すみませんでした!


『そこの角は左です』

「……さっきから、なんで行先が分かるの」

『アクセス権限が先程、更新されました。世界的にも上位ランクに属しています』


 なにそれ!? いつのまにそんなことに……!

 ……さらに変なことになっちゃってる気がする。……何、ランクって。そのアクセス権限とは、如何様なものなのでしょうか。


『大抵の場所で止められず通ることができ、ほとんどの建築物の構造を把握可能となります』


 あ、うん。それ以上深くは聞くまいよ……。

 聞かないほうが身のためだって私の本能が言ってる。


「それで? 食堂はまだなの?」

『二十分後に到着予定です』

「まだそんなにかかるのね……」


 あっちこっちと指図されるまま、てくてくと小さい歩幅で急ぐこと二十分。目の前にラスボス部屋の入口みたいな厳つい大きな扉が現れた。無駄に威圧を感じる。

 明らかに幼女立ち入り禁止って雰囲気だけど。これ、どうやって開けるの……?


『手を触れればよろしいかと』


 言われた通り、おそるおそる巨大な扉に右手を当ててみる。


《認証確認。ようこそ》


 頭に響く謎の声より、より機械的な声が聞こえた後に扉がゆっくり開いた……横に。


「コンビニかっ!」

『過去の遺物ですね、その発想は珍しい』


 なんか聞こえるけど無視ね、無視。それより驚きなんだけど。新たな人生を五年生きてきて今までにこんな扉の認識がなかったんですが……。

 ――というのも。

 今日初めて部屋の外に出たので……元々自分の部屋の扉から出たこともないなら、無理ないとは思う……。


 ――そうか。外の世界はこんななのか~不思議~。


 ……ごめん。若干現実逃避させてね。時間にすれば短時間だったのかもしれないけれど、その短時間の間に予想外の事件が起きすぎて処理が追いつかないのでっ……!

 まず、無駄に長い廊下に無駄にでかい書庫。宙を浮く本に、自動的に整理される本棚でしょ?

 ……ヤバそうなのに目をつけられたのも記憶が蘇ってからだから、おしゃべりなAIらしき声と実は付き合いも浅いのよ。

 ……それなのに。

 さも長い付き合いであるかのようにやり取りしていて実は内心ビビりまくってるわけよ……!


『通常は理解能力が成長をはじめる六歳を過ぎてからAIが発言を開始します』

「疑問の解説ありがとう。でもその理屈だと私、圏外でしょ」

『今回の場合、精神年齢が含まれます』

「なるほど。そういうことね……」


 つまり。

 0歳でも3歳でも転生前の記憶が6歳以上のものであれば関係ない、ということね。それなら納得だわ。

 そんな感じで若干現実逃避してたけど、……そろそろあらぬ方向に回想している思考を改めて現実に引き戻す。


 ――うん、前世でいう学校の体育館が四、五個は入りそうな広さはあるね。


 しかし今世の家族は私含めて三人のはず。一緒に居ることも少ないのに、一体誰が使うんだろうか。まるっきり無駄じゃない? 端から端まで大分遠いよ……。

 そして無駄に広い食堂らしき部屋の中にあって、浮いてる一画が存在した。あまりに自然にセッティングされているからか思わずスルーしかけたけど……ぽつんと置かれているあの机。あれ、コタツではないでしょうか。

 ご丁寧に蜜柑まで乗せられているけど、コタツ……ですよね?

 なんかその場所だけ昭和感漂ってるけどまるっきりコタツよね。どう見ても。


「なんてアンバランスな……」


 西洋風の見た目にミスマッチすぎる。ど真ん中に置いてある上に、周囲で囲むように並べられているセットされた白いテーブルクロスの長テーブル、赤い布で豪華に覆われた西洋式のイスがさらに違和感を増長させてくれる。


『過去の遺物。ロマンですね』

「おぉぅ。これがロマン、なのか……?」


 ――コタツロマンとはいったい……ナゾい。


 前世は平成生まれの私でさえ、おばあちゃんの家でしかお世話になっていないというあのコタツである。西洋化が進んでフローリングが当たり前となりつつあった時代遅れの代物で、ずっと先の未来まで残ってるとは素直に驚きである。ちなみに、コンビニ商売は消えたらしい。

 さらに便利な世の中になったらしいから需要が消えてしまったのは納得できるけど、当時は当たり前だと思っていたものが現世だと存在しないって分かると色々複雑だよね、うん。


 ――感傷に浸るのもいいけど、せっかくだから全部忘れて今はコタツに入ってくつろいでよーっと。

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