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ロストアイ  作者: たみえ
大事な幼少期
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ヨドサンポ


 ――ママとのお話から1ヵ月。

 私は今、ママから許可を貰いお庭で遊んでいる。

 あれほど外へ出ることを禁止されていたのにあっさりと許可を貰ってちょっと怪しみました。でも特になにか裏があったわけではなくお庭で好き勝手に遊びまわっています。


『限定的な許可ですが、良かったではないですか』

『主に叱られる故、可能な限り動かないで頂きたい』


 えぇ~こんなに広いお庭なのに!

 家の中ほどではないけど新鮮な空気を感じられて楽しいのに。


『空に浮いていますから、空気は新鮮ですね』

『あまり動くと他の縄張りに入ってしまう。守れぬ強者も居られるので重々気を付けて頂きたい』


 なるほど。この一定の範囲が楽園か。


『切り替えが早いですね』


 大丈夫。何かあったらヨドさんを生贄に逃げ出すから!


『主に叱られるのもそうだが、わしの後世のため可能であれば控えて頂きたい……』


 大きな巨体を丸めてヨドさんが縮こまる。……最初は呼び捨てだったんだけど、なんとなく交流するうちに前世の友人の中間管理職の苦労っぷりを思い出させてくれたので気付いたらさん付けで呼び始めてました。

 頼まれたら断れずあっちこっちに気配りしてるところがそっくりで、つい……。

 ヨドさんは私の思考をうささん経由でほんわか感じ取れるらしい。だから私の思考がはっきりとは伝わってないはず。

 なので強い思考でないと全く伝わらないのだ。未だに小さく蜷局を巻いてるヨドさんを見て強く思う。


 ――そんなに小さくならなくても大丈夫よ。たとえ何かあって怒られるようなことがあっても多分……きっと、おそらく………………ママは優しいから!

 大丈夫。ヨドさんはママのお気にいりだから生還はできるはず……。めいびー。


『……わし、早まったかのぅ』

『諦めて下さい。あの親があり、この子ありですから』


 失礼な。私はまだママみたいな人外にはなってないんだからねっ!


『無駄な主張ですね』

『わしもそう思う』


 何よあんたたち。主張は大事だからね!

 主張をやめた瞬間、そこで諦めたら試合終了なのよ。

 ……私、諦めずに主張するよ!


『まだ諦めてないんですか。この時代であっても充分に一般からかけ離れた子どもだと薄々感じているというのに』

『わしもそう思う』


 ――なんでなの……?


 なんで……私はただ平凡に新たな生を謳歌したいだけなのにっ!!


『追加されたお勉強でついに軟体生物のように動けるようになりましたからね。構造として既に人外の域かと』

『わしもそう思う』


 あ・の・ねぇ~?


 だからアレはそうじゃないって言ってるでしょうが!

 何度言わせるの?

 子どもの身体は柔軟性に富んでるんだからちょっと柔らかい動きをしただけで大げさに言い過ぎだよ!


『通常曲がらない方向まで曲がることをちょっと柔らかいで済ませるのは……控えめに申し上げましても人としておかしいと思われます』

『わしもそう思う』


 何よ、二人してグルになって。……ズルい。


『意見の一致と言っていただきたいですね』

『わしもそう思う』


 ちょっとヨドさん。さっきから聞いていれば主体性が感じられないんですけど。そこんところどうなんでしょうか?

 うささんに任せず、自分の意見ははっきりと言わないとダメだよ!


『……すまぬ。だがやはりうさ殿の申された意見とわしの思っていることは一致していてな。先に申されたため同じ問答になってしまったようだ』

『決まりですね』


 ――いやいや、何も決まってませんから!


 何をさらっと人外多数決として処理しようとしているの?

 少数の一般人の意見は尊重されるべきだと思うけどなぁ~?


『自己の願望しか繁栄されていない意見ですと民意は得られません。諦めて下さい』

『わしもそう思う』


 くっ……!


 前の私の言葉を逆手にとって……!

 ひどい!

 よわい子どもに対しておーぼーだ!

 ぶぅー! ぶぅ~だ!


『最後は感情に訴える。論理的に降せないと取られる常套手段ですね』

『わしもそう思う』

「…………」


 ……ふーんだ。


 ……いいもんね。

 どうせ一般とは掛け離れてるんだもん。最初からちょっと思ってたのと違うなぁとは気付いていたけど。今更もう一度転生とか怖くて出来ないし。

 このまま開き直って生きようとしてきたけどやっぱりなんか親はヤバめの人たちだし。なんなら相次ぐ過激な修行で自分自身もちょっとヤバめの人になりかけてるなぁとは若干、薄々、思ってはいたけどさぁ……。


 ――やっぱり、まだ人外にはなっていないって主張が最後の砦だったから……。


 そこまで否定されるとなんか……そう。生きる希望が減るというか。HPが瀕死状態で状態異常を沢山かけてきたみたいに追いつめてくるし。

 もうやだここっ……――!


『鬱陶しいですね。一度開き直ったのならもう一度開き直れば良いではないですか』

『わし、それは鬼畜だと思う』


 ヨドさんんんん!!


 ありがとう!

 これで希望をもって生きていけるよ……!


『そ、そうか? それは何よりだ』


 てことで。


 一対一対一でこの話は流しまーす。

 さあ、ヨドさん。その背中に乗せて遊ばせておくれ。


『え、ん? ああ、承知した。背中に乗るがよい。わしの散歩でよければ案内するが』


 んじゃまあ、よろしく。あ、出来ればハイスピードでお願いします。


『わし、腰痛が酷いのだが……』


 大丈夫大丈夫。ヨドさんならあの空も飛べるはずだよ。


『いや、わし、飛べんからな? 翼が無いって見れば分かるでな? ……全く。老骨に鞭を打つとは似たもの親子だのぅ』


 ママがカワイイペットだって自慢してたよ! 嬉しいでしょ……?


『そうか、……そうか。それは殊勝なことよ。それではゆくぞ! 振り落とされぬようによく掴まっておれ!』


 わーい。ヨドさんよろしくー!


『……完全にうやむやにしましたね。現実逃避も長くは続かないというのに、頑張ります』


 ヨドさんの背中に私が乗って、私の背中にうささんを括り付けてその後、ママが帰ってくるまで空中庭園を満喫しました。

 そうそう。……本当はママが「ヨドは素直で純粋。従順で物分かりがいいのに騙されやすいところがお気に入りでカワイイのよ~」とか言ってたけどね。

 ……楽しそうにはしゃぐヨドさんを見て胸にしまっておきました。

 人外にはなってないけどママに同意見です。ヨドさん、カワイイなあ。

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