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ロストアイ  作者: たみえ
大事な幼少期
18/106

ママは偉大なり


「……一緒に、お散歩はいかがでしょうか」


 ――シャァァァァアアアアアッッッ!!!


「ですよねー」


 私は脇目もふらずに全力でダッシュした。ママ助けて~――!!


『運が良いのか悪いのか。当たり所が悪かったですね』


 ――うるさい、黙って!!


 背負われている分際で私の集中をかき乱さないでっ!!

 今超絶ピンチなんだよ!

 うささんに構う余裕がないよっ!


『失礼いたしました。追いかけてくる様子を見る限り相当怒っている様子でしたので、きっと落ちた場所が当たり所の悪いところではなかったのかと思いまして。実際、若干涙目です』


 ――ちょっとぉぉぉおおお!?


 誰が細かく言えって言った、誰がっ。余計深刻な状況じゃんっ!

 状況が見えないけど、状況は分かったよ!

 絶望しかないよ!

 せっかくのお庭もまったく目に入らないよ!?


『仕方ありません。あの蛇のような魔獣、図体が大きいため周りを破壊しながらこちらへ直進していますので』


 ――いぃぃぃぃゃぁぁぁああああっっ!!

 ママに怒られるぅぅぅ!!

 ……バッチリお外に出たのがバレちゃうよぉぉ……。


『心配するのはそこですか……』


 いやさ。脱兎の如く逃げてみたはいいけど、意外と追いつかれないし……。

 ……こうなったら後は逃げ切った後の展開を想像するでしょ?

 そうしたら自然とそうなってしまいまして……。


『しかし、この先は良くありません』


 ――は??


 なんで、……ってぇぇぇえええ――!?


 無理やり急ブレーキをかけた反動で近くにあった石ころがころころと逝ってしまわれた……。

 ここって、――


「――崖っぷち!?」


 ――文字通りの崖っぷち間際なんですけど!?

 えぇぇ?

 下に雲が見えるんだけどっ!!


『当たり前です。この屋敷自体、土地ごと空に浮いていますので』


 ……ぇぇぇぇえええぇぇぇぇえええええ??


 困惑しかないんですがっ!

 ……え、え、え、浮いて、えぇ?


 ――シァァアアアッッッ


 オロオロしてるうちにまさかの大蛇おろちに大ピンチィィィッッ!!

 余裕ぶっこいてたら物凄い窮地に追いやられたっ!

 なんで先に言わなかったの!?


『移動速度が私の発言速度を上回ってしまいましたので』


 嘘つけっ!

 何が何だか分からないけどそれが嘘だってことは分かるよ!


 ――あぁもう終わった……。


 今まで散々新たな人生を儚んできたけれど今回はガチで終わった。はい、人生終了のお知らせが届きましたー。

 きっとあの巨大な蛇っぽい化け物に頭からがぶっと丸のみされるんだ。それで胃の中でゆっくりと時間をかけて溶かされるんだ……。ゔぅぅぅ……。


『それほど、悲観することはありません。何故なら――』


 ――ドゴォォン!!


 私が世の情けを儚んだその時、空から一閃の白い光が落ちた。かなりの振動と衝撃が肌に伝わる。

 突如として舞いあがった土埃に気付くと、――


 ――頭上高く私を見下げていたはずの蛇っぽい化け物が片手で地面に押さえつけられていた。


 そして。


 蛇を押さえつけながらもその人はゆっくりとこちらへ素敵な笑顔を向けたのだった――。


「――これは、いったいどういうことなのかしら~?」

『――マリアのお説教が先ですから』


 ――咄嗟に、私は現実を直視できずに空を仰ぎ見た――。


 確かに助けてって言ったけどさ、それに付随する結果はいらなかったかな……。

 ……ママ、絶賛お怒りのようです。

 ……こうなるって分かってたけど……ああ、天窓から見る空より空は青かったな。


 ――あぁ~あ。せっかく窮地を脱したのにさらなる窮地に追い込まれてしまうなんて……。


 ……いっそのことこの崖から飛び降りたほうが楽になるのではないか、と。

 あまりの恐怖に思考が血迷うほどに逃げ腰になった私をママがガシッと腕をホールドしそのままハウスまで連行となりました。

 そして途中で蛇っぽいやつがダウンしているのを見ていたらママが、「あれはペットのヨドなのよ~」って教えてくれました。

 私が脱走したとき睨みつけたのは近眼のせいで、涙目だったのは腰痛部分に私が落ちたからで……追いかけてきたのは私が落ちるとヨドがママに鉄槌を食らうから保護しようとしたとのこと。


 ……あ。ヨドは念話が出来るみたいです。


 ずっと語り掛けていたのに私が恐怖で先に逃げてしまいヨドの声が聞こえてなかったようです。


 ――良かったね!


 色々と誤解は解けたけどますます謎が増えて結局ヨドは鉄槌を食らってしまった。追いかけ損ですね、分かります。


「何を他人事のようにヨドに合掌しているのかしら~?」

「ひぃぃぃっっっ……!!」


 ヨドの話で逸らそうとして失敗しました。ママ、激おこです。

 ……あ、ヨドが逃げた。


 この裏切り者めぇ、覚えとけよ!


「余所見はダメよ~? ママとしっかりお話ししましょうね~?」

「ひぃぃぃっっっ……!!」


 とてもイイ笑顔を浮かべていらっしゃる。なんだか楽しそうですね……。

 今から逃げてもいいですか? あ、だめですか。そうですか。


『抵抗するほど墓穴を掘ります。諦めて投降してください』


 なんで私が犯人みたいな言い方するの!?

 何も犯罪は犯してないよ!

 ちょっと外に出ただけなのにっ……!


『皆そう言って連れさられて行きました……こんなことはもう、終わりにしましょう』


 だからやってないって!


 ……~ってこれじゃあ何故か私がやったみたいな流れじゃん!

 私ほんとに悪いことなんて何もやってないのに流れだけで犯人になっちゃったよ!

 もう何言っても言い訳にしか聞こえない状態にされたよ!


 ――なんてこと……!


 お前が策士かっ!

 私で遊ぶんじゃありません!


『見えてきました。あそこに収容されれば……』


 いや、見覚えがある私の部屋ですが。何、収容って。

 人聞き悪いんですけど……!


 ねぇ、ほんっっとうにワザとじゃないの!?

 実は本気でワザと変な言い回しとかして私で遊んでるんでしょっ!?


「さあさああいちゃん。中でママとゆっくりお話、しましょうね~?」

「ひぃぃぃっっっ……!!」


 ぎゃぁぁぁぁああああっっ!!


 現実逃避してうささんと戯れている場合じゃなかった!

 やだやだ!

 ママの説教は言葉じゃ飽き足らず地獄の修行メニューが追加されるんだよぉぉ……!!


「いぃぃぃぃゃぁぁぁああああ!!」


 ――ハッ! そうだ……!


 ……さっきから弄ばれているんだ。この際背中に引っ付いてるうささんも道ずれじゃあああああ!!


「あ、うさちゃんはお話し中は外に置いとくわね」

「…………!」


 ――のおおおおおおおおおお!!!!


『逝ってらっしゃいませ』

「いぃぃぃぃゃぁぁぁああああ!!」


 結果、3時間ほどのお話とママの特別レッスンが追加されて事なきを得ました。

 ……いや、思えば色々と事なきを得てませんけどねっ!

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