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ロストアイ  作者: たみえ
大事な幼少期
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お散歩はいかがでしょうか


 ――決めた! 私、お庭に出てみる!


『そういえば、家の中を移動することはありましたが外へ出ることはありませんでしたね』


 そうそう。まずは迷宮な内部を攻略しなければ外の世界になんて出られないからね。


『攻略ですか。常に罠の配置が変わるので現実的に不可能です』


 ――違う違う。


 罠の攻略じゃなくて、部屋の位置とか見分け方とか行き方とか……そっちのことね。……特に部屋の扉の特徴は覚えないと部屋間違えた時点で最悪、人生をドロップアウトしちゃうからね。


『息が無くとも死んでいないのであればなんとかなります』

「…………」


 ……ちょいちょい挟まれる技術力が色々超越しててびっくりなんだけど。それに万が一のことも考えると完全に外の世界は未知なわけだから後顧の憂いは絶っておきたいでしょう?


『それほど大げさに語るほどでもないと思いますが』


 ――甘いわね。もう騙されないんだから。


 なんだかんだで家の中がサバイバルだし。これなら庭が無法地帯でも驚けないよね。

 ……もしかしたら外に出た瞬間にドンパチな銃撃戦に巻き込まれるかもしれないでしょ?


『……どんな危険な想定をしているのですか。庭にそれほど危険なものはありませんが』


 いいの!


 常に最悪を想定しないといつ儚い最期を迎えるか分かったもんじゃないでしょっ。


『それでその装備ですか。厚着ですと動きにくいのでは?』


 ……何言ってんの?


 冬だからこその厚着でしょ?

 いくら子どもは風の子といっても限度があるんだから。

 最悪外に出たら極寒の地かもしれないでしょ?

 ただでさえ家の中はママの方針でエアコンとかの空調が効かないのに……。

 今現在壁に隔てられた状態でこんだけ寒いんだから、外は相当な極寒だって思っても仕方がないでしょうに。


『ただ今の室内温度、11℃ですね』


 ほら見なさい!

 めちゃくちゃ寒いじゃん!

 マイナスではないけどそこそこ震え上がる温度だよ!


『先程見かけたマリアは薄着でしたが』


 ――ママは別格なの。人間という枠で考えてはいけないの。私はどちらかと言えばパパ似だからママと一緒にしないでほしいの。

 ……私、まだ人間の枠の中で生きていきたいの。あ、ママには今の言葉内緒でお願いね。


『それならそういうことにしておきましょう。それでどこから庭に行くつもりですか?』


 それは勿論、窓からよ。


『窓からですか。玄関がありますが』


 当たり前でしょ?

 玄関から出ようものなら番人に捕まって連れ戻された挙句に監視が厳しくなるんだから。


『……いつのまにかすでに玄関行きを試したんですね。それでは窓からとなると逃げようとしている泥棒みたいですが』


 この際、絵面は関係ないの。大事なのはいかにしてセキュリティーをやり過ごして外への扉を開くかなのよ……!


『言ってることはまるっきり泥棒のそれですが……』


 今は細かいことはいいの。それに窓と言っても部屋がこんなに広いのになんで天窓しかないのよ。……外からガラス蹴破ってロープで侵入なら分からないでもないけど。


『完全に泥棒の行動に思考が向いてますが。言わせていただければあの高さですとどちらであっても厳しいと思われます』

「…………」


 ……だよねー。降りるにしても上るにしても手が滑れば一発アウトな高さよねー。

 しかもカギを開けてからスライドしてやっと外に出るとか、いくら身体能力が高いこの身体でも最後はおじゃんな未来しか見えないよ。


『骨は拾います』


 ……どこで覚えてきたの、ムカつく。


 それにそんなミスはしないからっ!

 安全第一だから!

 転生して、散々身体に叩き込まれたんだから……!


 ――どうしてお庭に、お外に出たいだけなのに、皆して私を阻むの……!?


『単純に信用されていないからでは? いえ、ある意味信頼はされているようですが』


 どういう意味だコラ。……こほん。


 と・に・か・く。


 色々考えてみたんだけど、届かないなら届く土台を積み重ねればいける気がしてるんだ、どう思う?


『この部屋にあるものを動かせるのであれば、という前提ですが』

「…………」


 ですよねー。


 ――あ。観覧車に乗って上までいけば後はジャンプで届きそうじゃない?


『足を滑らせなければいいですね』


 ……うささんや、不吉な予想をしないでおくれませんか?

 それね、フラグがたったって我々の業界では言うのだよ……。

 ……まあとりあえずチャレンジはするけど。


『骨は拾います 』


 一辺倒かっ!


 それもういいよ!

 なんでもう失敗するのが確定みたいな雰囲気出してるの!?

 私、絶対成功させてお外に出るんだ!

 天窓から見えるあの空以外の景色を見つけるんだ……!


『しっかりと足をつけていないと本当に滑って落ちてしまいますよ』


 待って!

 今集中してるから話しかけないでっ!


 観覧車の外側に張り付きゆっくりと上昇するのを待って天窓へと狙いを定める。


 ――チャンスは天窓に近づく直前!


 そこを逃せば天井に頭をぶつけて計画は失敗してしまう……。慎重にタイミングを見計らい、ここだ! というところでジャンプ!

 あ、うささんは背中に括り付けてます。

 ……っと、よし。天窓に張り付けた!

 あとはカギを開けて……窓を上にスライドして……。


「……んしょっと、って、出たぁぁぁ!!」


 やっと出られた! やったようささん!


『まさか本当に達成してしまうとは……予想外です』


 ふふふーんだ!

 これで私は自由だああ~~――っあ!?


 ――ああああああっっ、落ちるぅぅ!!


 外に出たはいいけれど、はしゃいで足を滑らせました。


 ……終わった。

 私の一生終わった……短かったな。


 ――思えばこれは因果応報。


 ごめんねうささん。これは背中にイタズラしちゃったまま放置した罰なのね、きっと。


『聞き捨てなりません。イタズラとは何のことでしょうか』

「…………?」


 ――あれ?

 うささんの声が聞こえる……。


「…………!」


 ……よく見れば下に地面があったみたいで思ったほど落下はしていなかったもよう。なんだ。思ってたほどじゃないね。


『先程のことは後で確認しますが……ところで、一度後ろの確認をお勧めいたします』


 後ろ?

 なんで後ろな、の、――


「「…………」」


 大きく太い丸太のような柱。その先にごつごつとした角が生えている。顔だろう部分から、ギロッとした金色の目がこちらを睨みつけていた……。

 心なしか怒っていらっしゃるようにも見える。


「「…………」」


 ――そうだ。こんな時はあれだ。友好関係を築くきっかけを作るべきと誰かが言っていた気がする。


「……一緒に、お散歩はいかがでしょうか」


 勇気を出して誘い出した。だけどお返事は、


 ――――シャァァァァアアアアアッッッ!!


 おぉぅのぉー。へるぷみぃー。

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