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ロストアイ  作者: たみえ
大事な幼少期
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ピンクのうささん


 あれから。


 寝たきりと身体強化を繰り返すことでリハビリを続けている。

 二年仮死状態だったとは思えないほどには回復した。……アクロバティックな動きはまだ無理だけど、普通の子ども並みには回復したと思う。

 ……もちろん。

 あまり使うと死んだように寝てしまうので、身体強化はほどほどにしか使っていないけど。


 ――それはさておき。


 目を覚ましてから色々とありすぎて先延ばしにしていたけれど、そろそろ確認したいと思います。

 ……ということでうささん。かもーん!


『私は何をしたらいいのでしょうか』


 とりあえず両手を広げたままくるっとターンして?

 そうそう、回りきる前に片手を腰に当てて……。

 それで反対の腕を曲げながら上げて手をほっぺに当てたらターンを止めるの!

 腰に当てた側の足を斜め前にちょこんと出して、最後に小首を傾げましょう。


 ――はい、完璧。


『……この態勢に何の意味があるのでしょうか』


 何言ってんの?

 可愛いでしょ?

 カワイイは世界共通なんだから。

 カワイイは正義なの!

 何のために苦労してまでその姿にさせたと思ってるの……!


『どちらかと言えば苦労したのは私だと思うのですが。それに当初の目的とは違う目的にすり替わっていますよ』


 ……可愛い姿で可愛くないこと言うわね。せっかく可愛くなったんだからもっときゃぴきゃぴしたマスコット魂見せなさいよ!


『マスコットですか。それはどういった意味で、でしょうか』


 ? マスコットはマスコットでしょう。何を言ってるの?


 最近は主人公が横に侍らせるのが当たり前なんだから。むしろちょっと影がある、いかにも過去に何かありました~みたいなキャラが受けんのよ。

 背景があると色々と妄想が膨らんで楽しいしね。


『そうなのですか。

 ……そう言えばこの依代、作成者が縫う面を間違え、表に縫い跡が出てしまったために相当恥を掻いたようで……これを最後に二度と新たな作品を作ることは無かったようです。

 そしてそのまま旅に出て未だに行方不明とのことです』


 ――ちょっと待った。


 なんでうささんじゃなくてその依代のバックボーンなの!?

 それに……。

 完全に黒歴史が耐えられなくて旅に出ちゃったよね? これ。

 周りからはそうでもないけど本人にとっては物凄い黒歴史だから逃げちゃったのね?


 ……確かに暗い過去と影はあるけどね、違うの。そういうことじゃないのよ。


 いや、未だ行方不明とか気になるっちゃ気になるけども。そういうのじゃないんだよ、ほんと。


『難しいですね。私自身の過去と申しましても生まれてから数年しか経っておりませんし、元はただのデータですので』


 そうだった!

 過去とか言える段階じゃなかった!


 ……それならそうと先に言ってほしいんだけど。


 ま、でもマスコットは別に必ず過去が無いとだめってわけではないし、いいかな。


 ――それより、


 ポーズをキープしたままで会話するなんて、……やるわね。

 さっそくマスコット魂が芽生えて来てるようでなによりだよ。


『これは失礼しました。まだ実体の伴う身体の存在に慣れないもので』


 ……それにしてはかなり滑らかに指示通りのポーズが出来てたけど?


『自由意志ではありませんので』


 その言い方やめて。

 ……なんか私が物凄く悪いことしたみたいでしょ。


 ――違うよ?


 私何も強制してないからね?

 うささんがノリ良く付き合ってくれただけだから。

 本当に強制じゃないよ!

 カワイイを提供しただけだから……!

 私は無罪なの――!


『何をいきなり変な主張を始めているんですか』


 いいの!


 何もなければいいけど訴えられるネタは出来るだけ失くしたいの。ちょっとしたことで訴えられるんだから!

 世の中ってコワイ……。


『何に恐怖を感じているのですか。それに万が一何かで訴えられたとしても問題ありません』


 問題ないって、……訴えられた時点で問題大ありでしょうよ。

 何が問題ないわけ?


『訴えられた時点で事実をもみ消すか、文字通りこの世から消されますので』


 ……ねぇ。

 それ、どちらにしても訴えた側が絶体絶命の大ピンチに陥ってるよね?

 ……誰がとは言わないけど誰が処理するのかまで想像できるんですが……。世の中を怖がる前に目先のもっと怖い現実に気付いたんですけど。


『怖がることでもないと思いますが。それに決して尻尾は掴ませませんよ、まうんむぅ』


 はい、それ以上はお口チャックね。それ以上はダメよ。


 ……噂なんてしたら来ちゃうでしょうが。


 おぅ、それにしてもナイス抱き心地。まだむごむご話してるけど口のあたりを押さえてるので話せませんよ~だ、へへへ。ざまあみやがれ。

 小憎たらしい口をやっと防げるようになって上機嫌な私は、そのままうささんを抱き上げた状態のまま部屋にある鏡台まで移動する。

 ……それにしてもいつ見ても美少女に生まれ変わったな~って思うけど。うささんを標準装備することでさらに最凶って感じだよ。

 私自身はママ譲りの白髪。顔はパパ寄り、かな?

 ……ちょっとネコ目っぽい赤で肌が白いんだよね。

 まあ前世的に単純に言えばアルビノだよ。この世界、色とか突然変異かなんかでカラフルみたいなんだよねー。不思議ー。

 それにうささん。ピンクのウサギのぬいぐるみなんだけど、デフォルメされたウサギって形をしてて普通に二足歩行できるみたい。

 ……これを抱っこしてる私、マジ美少女。

 これゴスロリとかに着替えたら完璧じゃない?

 誘拐したいレベルだよ!


 ……それはさずがに言い過ぎか。


 いや、前世モテなかった記憶しかないからさ。今の自分の姿を見るとどうしてもテンションが上がっちゃって……。


『毎回毎回、何が楽しいのか理解が難しいですね』


 ひとりで悶えてたらうささんが復活してた。


 でもでもでも!

 実際、皆自分がもし美少女になったら~とか、考えたことあるでしょ!?

 これは民意を獲得できる案件よ。


『……記録はしておきましょう』


 ――その後しばらく満足するまで鏡の中の自分を見て過ごしました。

 うささんはその間心なしか疲れた様子で項垂れていましたとさ、まる

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