表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストアイ  作者: たみえ
大事な幼少期
14/106

目覚めとともに


 遠い過去に、君と出会った。


 遠い過去で、君と別れた。


 生まれた意味を知りたくて、


 死にたい理由を教えてくれた。


 はじまりは大胆に、


 終わりはあっけなく、


 君はひとりを、


 私はみんなを、


 すべてを守ると君は言い、


 すべてを捨てると私は言った。


 君は頑固で優しいから、


 私は厳しく辛くなった。


 ふたりの路は分かれても、君のことは忘れない。


 約束しよう、未来で守ると。



 ――あぁ、長く永く、深い眠りから覚めた心地がする。すっきりとした目覚めとは程遠いけれど、不思議と心は軽い。


 なぜか、とても懐かしい夢をみた気がする……。すでに記憶にはないけど……とても大事な夢を、みた気がする。

 ……それにしても目覚めた心地とは別に身体が重い。まったく動く気にならない……。このだるさはなんだ。まるで自分の身体ではないみたい。

 でも見上げた天井は最近見慣れた天井と一致している……。うーん。今まで眠っていたみたいだけど、どれくらい眠っていたんだろうか……?


『――お目覚めですか』


 ――ん?

 うささん……?


「…………」


 ……あれ?


 頭に声が聞こえてるわけじゃないのに声が聞こえる。

 ……どゆこと?


『今、アイの腕に抱かれています。覚えていませんか』


 へ?


「…………」


 ……ん~~、んっ……?


 ――んっ……!?


 ――お、思い出したああああ……!

 確かうささんをぐーぱんしたくて実体化計画を立てたんだった……!


『その計画は初耳なのですが』


 ……そんなことはどっちだっていいでしょ。


 そ・れ・よ・り。


 紛らわしい言い方すんな!

 寝起きだからちょっと困惑しちゃったでしょっ?


『それは失礼しました。……それと現在すぐ身体を動かすのは厳しいと思います。確認のためにも出来れば腕を動かせるかだけ試していただきたいのですが』


 身体が動かせないって……?


「…………」


 ………ふぉえ?


 ――な、な、ななななっ!

 なんで身体が全く動かないのーー?!

 ……というより。

 目線しか動かせないよっ、なんでっ――!?


『結論から申し上げますと、システムエラーでございます』


 しす、え、えらあ?


『想定より時間が掛かってしまいまして、通常であればシステム上目覚めの時まではある程度変わらぬ状態を維持するのですが、想定以上に時間が掛かってしまった都合上維持が間に合わず、現在の状況となりました』


 つまり?


『想定外の出来事の為、容易に動けなくなっています』


 は……?


 想定外って……私が眠りについてからどのくらい経ってるの?

 確か長くとも数か月って言ってなかったっけ?

 私の記憶違い?


 ――とてつもなく嫌な予感がするんですけども……!!


『――約二年。想定より一年と数か月の誤差が発生いたしました』


 それ誤差ってレベルじゃないよっ!?


 ――え。


 もしかして第二の人生、貴重なフリーダム幼少期、遊んですごせる幼女時代が知らぬ間に二年も過ぎてしまったというの……?

 一体、何が私をそんな眠り姫状態にしたの……。


『気落ちしているところにさらに残念なお知らせです。以前のように動けるようになるまでのリハビリも兼ねて、今初めたとしても数か月はかかると計算結果が出ています』


 のおおおおおおおッッ!


 ――なんてこと!


 ……ただでさえ余裕があったからってお勉強を進められたというのに。溜まってしまった地獄のお勉強タイムがあるのにっ……!

 一歩進んで三歩下がった気分だよ……。


 ――ほんと、どうすんのこれ!?


 ……もう一回眠り姫に戻りたい……切実に……。


『まずは、指先を動かせるようになりましょう』


 いや。さらっと本格的なリハビリ開始しちゃってますけど。

 毛ほども全く動かないよ?

 どうなってんの……?

 まるで土の中に埋められたみたいに動けないけど……!


『思ったよりは元気そうですね。しかし簡単に説明しますと今は死後の硬直状態から目覚めた状態となります。無理せずに指先から始めましょう』


 え……私、死んでたの……?


 ――知らないところで二度目の死を迎えてたの!?

 え、え、生きてるの?

 死んだの?

 実は転生じゃなくて、死後の世界だったのっ……?


『正確には仮死です。生体機能の低下に伴い、一種の植物状態になっておりましたから』


 ……そうなの?


 でもあれ?

 食事とかはどうしてたの……?

 仮死状態って確か、そう長く保たないよね?

 常に点滴注してるイメージだけど……。


『エネルギーを供給していたため、特に食事も点滴もしていません』


 エネルギー?

 供給?

 ……それちょっとガソリンスタンドみたいで嫌な響きなんですけど。

 何エネルギーなの?

 資源はどこから調達されたの?

 資源は大切に!


『……人間が必要とするエネルギーは多々あります。食事が出来ない植物状態ですべてを補うことは難しいものです。

 ですが一つだけ、それを賄えるエネルギーが存在いたします。それは人間に発現した魔法を介して直接エネルギーをやり取り出来る魔力です』


 ――ああ、魔力ね。


 そういうことね。分かんないけど分かるわー。……不可思議パワーならなんでもありか。


 ――魔力か……。


 魔法と魔力で言葉の使いどころが紛らわしいんだよね。確か魔力が核で魔法が魔力を動かしたり現象を実現したり……。止まってると魔力で動いてると魔法って正直分かりにくいんだよね。

 だって魔力が動けば魔法だから。


 ――例えば。


 魔力を動かす、ではなく魔法を動かす。って表現が正しいみたい。……これって違和感あるよねー、分かるー。


『魔力は人間の根源に深く根付くエネルギーですので直接魔法を介してエネルギーのやり取りをすることで最低限の生命維持は事足ります。

 ……難点は身体を動かしている訳ではないので筋肉などは衰えてしまうリスクが伴うことです』


 リスクっていうかばっちりリスキーな状態に陥っているよね、今。考えないようにしてたけどまだ全く身体動かないんですけど。これからどうすんの、これ。


『まずは、指先を動かせるようになりましょう』


 いや、結局そこに戻るのね。


 ――うん、まあ、それしかないって分かってるけどね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ