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ロストアイ  作者: たみえ
学園生活一年目~闘交会騒動後篇~
102/106

不思議先輩と配下くん

なんだかんだと投稿まで時間かかってしまってすみません。

予想以上のシリアスに作者が発狂してしまったので、遅れましたごめんなさい。


「――次の試合では降参しなさい。いずれあなたたちの為にもなるでしょう」

「「「――は?」」」


 ――遡ること数分前


「……シュコー、シュコー」


 ヤマトくんの快い案内により、私とジルニク君は楽に帰途についた。先頭に居た案内人が立ち止まってから振り返ると、道を開けてくれる。その先には間違いなく我らが外見だけオンボロ寮が鎮座していた。


「おおー! さっすがヤマトくん! もう着いたのか! 頼りになる~」

「ヤマト、おめぇはやれば出来るやつだって俺は知ってたぜ……!」

「シュコー……」


 感動の涙を流さんばかりに二人で過剰に褒めそやす。それをヤマトくんは割とドライな対応でさっさと行けとばかりに後列に移動してしまったけど。背後がお気に入りなのは相変わらずである。

 普段からたまーにうささんがナビゲートを無視する。なのでヤマトくんの散歩へ付き添ったはずが、最後は連れ帰ってもらうという……非常に謎な状況を経験しているのだ。おかげで慣れてしまい、反応が薄くなったのかもしれないな……。

 しかしそれでも讃えられずにはいられない、この気持ち。何故褒めるのか? 私とジルニク君だけでは辿り着けなかった場所がある。ただそれだけの理由だ……。フッ……。


「……大将、何変な顔してんだ?」

「凛々しい御尊顔と言い直してっ!」


 何? 心のキメ台詞に対応して美少女がちょっと一人で凛々しくキリッとキメ顔で悦に浸って笑ってただけでしょ。変じゃないし。……変じゃないし。


「ぁあ……?」

「文句ある!?」

「あー、いや」


 怪訝な表情のジルニク君が心底意味が分からないという目でこちらを見ている。失礼な奴だ……待てよ。

 妙に歯切れが悪いジルニク君を見てハッと気付く。もしやイタイ場面を見てもイタイと認識できないのか……! ジルニク君……!

 いやでもそもそも一人で「フッ……」とか笑いこぼしたりするやつを見かけたら誰でも一回放っておくのがセオリーでしょ!?

 ……お願い。だからさっきのは忘れて……!


「アレ……」

「忘れてよろしい」


 何か言おうとするジルニク君に対し、もう十分お前はやったと、何かを悟ったような顔でジルニク君の顔の前へ掌を差し出し、言葉の先を制止する。……お願いやめて、何を言うのであれダメージ食らいたくない。


「は? いや――」

「忘れろ下さい!」


 そう言って必死に制止しても、何言ってんだコイツ? という不思議そうな表情でその先を何の躊躇も無く言葉にしようとするジルニク君。やめて……! 私のライフはもうマイナスよ……!


「いや……けどよ、なんなんだアレは」

「え?」

「シュコー、シュコー」


 ここにきてジルニク君の言いたいことが私の思ってる内容ではないのではないかと気付く。なにそれ余計恥ずかしい……。

 ついでとばかりに、後列に待機していたヤマトくんが、わざわざ親切丁寧にジルニク君が言いたい内容の正体のほうへ指さし教えてくれた。


「――は? なんだアレ?」

「……だよなあ」

「シュコー……」


 とりあえず件の場所は私たちの寮に向かう関係上避けられない運命にあったので仕方なく近づいていくが、オンボロ寮に近付けば近づくほどにソレもはっきりと見えるほどに近付く。

 そして辿り着いた寮の真ん前にはド派手に撒き散らされた花の山があり、その真ん中へ横たわるように女子生徒とおぼしき人が埋まって寝ていた。

 私たちは近付いたまではいいけど、花と女子生徒がもろ邪魔で入れないため立ち止まることを余儀なくされていた。するとそれに気付いたのか、女子生徒が目を開け、横たわったままこちらへ目線を向け――


「フッ……」

「「「…………」」」


 ――い、イタイやつだあああああ……!!


 ただ、鼻で笑ったはいいけど、それ以降女子生徒からの反応は無かった。いや、ちらちらとこちらを伺うような視線はあるもののそれだけである。

 何がしたいんだ……困った。この不審者どうしようか。


「皆さんどうされ……ッ!? …………なんですの、これは」


 いっそのこと無視して飛び越えて行こうか、と足を踏み出しかけたところでタイミングが良いのか悪いのか、リアがオンボロ寮の中から顔を出した。

 危うく踏みかけるところで気付いたようで、足元の惨状にぎょっとした後、たっぷり間をあけてからこちらへ問いかけてきた。


「なんだろう……?」

「知らねぇ」

「シュコー……?」


 しかし三者三様に返せる答えは無い。というよりか先程からその答えを求めているのはむしろこちらである。答え、もとい元凶を四人が注視した。


「フッ……」

「「「「…………」」」」


 やはり無視して踏み越えるべきか……。


 心の迷いが出たのか、足を前に出して引いてのステップを心のビートと共に刻んでいると、どこからともなく男子生徒が現れた。一種異様な空間に割り込んで、


「おお~、控えたまえ~、控えたまえ~!」


 と朗々とした大声で告げられる。さらには女子生徒の近くに移動したかと思うと、私たちへ向けて……というより、四方八方に向けて両手を万歳、頭はヘドバンという謎の動きを披露しながら続けざまに言った。


「ああこのお方を~あぁどなたと~あぁあっ! 心得るぅ~!」


 いや、誰だよ。


 他にも色々ツッコミたい心情に駆られながらも、不信感も露わに棒立ちで見ていると、それが気に食わないのか、心外だとばかりに男子生徒が目をカッ! とかっぴろげ吠えた。


「何をしている! 尊き方の御前なのだぞ!」

「「「はぁ……?」」」


 イマイチ言いたいことが分からない。まあやりたいこと、というよりやって欲しいことはなんとなく分かるけどさ……。

 ……だから何? というか、私たち関係無くない……? 

 これはアレかな、そういうお年頃っていうやつ……? 巻き込まないでほしいんだけどな、と思わずシラケた視線を向ける。


「この貴きお方を前にしてなんと無礼な……!」


 いや、どこからどうみてもただの不審者じゃない?


「このお方をどなたと心得る!」


 憤慨している男子生徒を通り越して下に目を向ける。すると相変わらずこちらをちらちら伺うばかりで寝たふりを決め込む女子生徒とバチッと目が合った。

 

「フッ……」


 変わらぬ反応に女子生徒と男子生徒を交互に見やり、たっぷり考えた末に出た結論を、怒り心頭な男子生徒へ首を傾げながら告げた。


「……不審者?」

「「「(コクコク)」」」

「なんだとぅ!?」


 代表した私の答えに、周囲も頷く。しかしこちらの答えや態度がやはりお気に召さないのか、男子生徒がつばを飛ばす勢いで顔を怒りに真っ赤にし、言い返す。


「どこが不審者だというのだ!」

「「「「…………」」」」


 終始不審者だよ! 紛うことなき立派な不審者だよ!


 ……喉元まで出かかった言葉をぐっと呑み込む。こういう手合いには言ったら最後、余計長引いてややこしくなるのが目に見えている。びーくーる、びーくーる……。

 ひくつく表情を押さえている間もわあわあ男子生徒が喚き散らす。いい加減うざいし、うるさい。


「無礼にも程があるぞ! 大体、このお方を前にして――」


 ――云々がどうたらこうたら。


 最終的に相手の言葉を右から左にスルーし始めたこちらの態度に、完全に頭へ血が上ってしまったのか、「無礼だ!」とか「不心得者!」だとか「不届き者!」だとか、そんな感じのことしか言わなくなった。

 煽ってしまったらしい私としては、よくそんなに語彙が出るなと感心しただけだけど……。

 それでしばらく、ぷんすか湯煙噴いてる男子生徒を放置していると、見かねたのか、ここにきてやっと、今まで寝たふりを決め込んでいた女子生徒が動きをみせた。

 花のベッドから上体を起こし、こちらを真っ直ぐ見上げる。――途端に、周囲に漂っていた困惑と弛緩したような空気が、誰もが肌で感じ取れるほど劇的に変化した。

 先程まで「フッ……」と笑うだけでギャグ要員だったヤバい人物と同一人物だとは思えないようなぽやぽやからガラリと一変し、静謐な空気を纏い、全てを見透かすような金の瞳に射抜かれ、思いのほかギャップで気圧されたのか、足が少しばかり下がった。


「――次の試合では降参しなさい。いずれあなたたちの為にもなるでしょう」

「「「――は?」」」


 何を言い出すのかと思えば、降参しろとはまた大層な言いぐさである。私たちのためって、何を根拠に言ってるんだと怪訝に相手をみる。いたって真剣な表情と雰囲気に、これは冗談で言っているのではないと知る。


「どうい「さすがハイリ様! 慈悲深いお言葉に私は感激にむせび泣いております!」……」


 どういう意図で降参と言っているのか聞こうとすると、遮るように男子生徒が言葉を被せてくる。というか、ここにきて名前が判明したはいいけど、やっぱり知らない人である。

 周囲も聞こえた名前に首を傾げているのを見るに、先程憤慨してどなたと心得る! って喚いていたのはだいぶ理不尽だったようだ……。

 被せられてから口を挟める隙もなく、半ば強制的に男子生徒の賛美を聞かされている間にフラッシュバックしていると、スッ……とハイリ様とやらが片手で男子生徒の賛美をピタリと制止し、こちらを射抜く目を眇めながらも言葉を続けた。


「――あなたたちは本来、ここにあっては、ならないのです」


 なーにを言ってんだ、こいつ? と思った私は悪くないと思う。試合降参云々はどこいったんだ……というか存在全否定って失礼以前に人としてひどくない……?

 そう適当に聞き流した私と対照的に、区切るように告げられる言の葉に一度でも目線を向けられたわけでも無いのにぴくっ、と向かい側でリアの肩が小さくはねる。

 下を向いているせいで表情は分からないけど、視界の端でも小刻みに震えているように見えた。……少し気になったけれど、続く謎掛けのような言葉に脳がすぐ疑問符でいっぱいになる。


「――すべて知るに早く、すべて無くすに遅く、時は無為無感に刻まれ、滔々とその証を得ず。終に願うは傍らに潜む魔と化す。業深き望み唱えし魔に沈みし時、新たな息吹に芽吹くことを禁ず――」

「…………」


 ……いやだからなんだ。何が言いたいんだハイリ様とやら……。


 静かに語り掛けるように告げられた言葉に、どう反応すればいいのか迷う。……これは、やっぱりあれかな。人が一度は通るだろうと言われている大人への通り道、すなわち厨二病、というやつではなかろうか……?


「――今わの際に、初代巫女姫様が遺された御言葉です」

「はぁ……」


 いや、だからそれが試合を降りるのと何の関係があるというのか。やってることが脈絡無さ過ぎて反応に困る。すでに初代巫女姫様とやらの遺言らしい厨二ワードは空の彼方へ旅立ってしまって耳に残っていない。

 イマイチ反応の悪い私たちに、これまでの情報で側近的な立場だろうと推測できる男子生徒が不満そうにこちらを睨みつけるが、ハイリ様の制止がまだ効いてるのか、口をもごもごするだけであった。ざまあ。


「……大切な何かを捨てねば進めぬ道となることを知っておりながら、無慈悲に進むことを願いますか?」

「いや……」


 だから全部脈絡無さ過ぎだし、いったい何の話してるんだ、これ……。

というわけで、再開して早々、脈略なく@その2へ続きます。

お楽しみに~。

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