プロローグ
退職届を出してもう2か月が経ったが、職を辞めた事はまだ誰にも言っていない。伝えたくても心配を掛けたくない気持ちと、僅かな羞恥心が邪魔をする。どうしようも出来ないので、秘密にすることにした。
最近は何もする気が起きず、ただ無気力にアパートでテレビを眺めていた。たまに流れる就職CMを見る度に心が締め付けられるが、他にしたい事も無いし、職を探そうにも恐怖心から行動に移せない。そして、葛藤しながら無駄に時間だけが流れていく。
ある日、電気代や税金の納付書を見て血の気が引く。今まで普通に払っていた金額なのに、このままでは普通に暮らす事も出来なくなると感じた。仕方なく俺は、なけなしの勇気を振り絞ってネットカフェに向かう。なるべく人と関わらない仕事を探す為に。
受付で言葉が出ない自分に驚きながら、何とかパソコン有りの部屋を借りる事が出来た。就職する前に発声練習も必要なようだ。それに、資格も取っておけば良かった等と後悔しながら職を探した。工場勤務や内職と、色々と検索したが出来そうな仕事が見つからない。どうやら自信すらも喪失したようだ。時間の延長を3回した位から、自然に涙が溢れ始める。あと少し頑張ろうと、何度も自分に言い聞かせた。そしてようやく見つけた。
職種:環境整備
内容:土地を開拓して、住みやすい環境を造るお仕事です。最初は単独での作業となりますが、要望があれば増員も可能。衣食住完備で作業量によってボーナス有。自身のペースで開拓出来るので、残業などは一切ありません。
募集人数:一名
俺は迷わずに応募ボタンを押した。すると、突然画面が発光を始め、光があふれだした。電源を落しても発光は収まらず、徐々に光が増していく。やがて部屋全体を包み込み、俺は光に飲み込まれた。