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Ⅵ 夢の救済者
ああ、またこの「夢」だ。
一糸まとわぬ姿の幼い私が、泣きながら必死にドアを叩いている。
そのドアは開かないよ、どんなに泣いても無駄だよ。
心の中でそう呟くけれど、幼い私の感情が流れ込んできて息が苦しくなる。
ごめんなさい、おねがい、ゆるして。
途切れることのない涙が頬を濡らす。
幼い私と今の私、どちらも私だけれど、過去と現在で感情は乖離してしまっている。
唯一共通している恐怖心さえ、その性質は違うものだ。
ただ愛されたくて顔色をうかがってばかりいたあの頃と、我が子を愛する事すら出来ないかわいそうな人なのだと憐れむ今。
この「夢」を見るたび、私はいまだに呪縛から逃れられていないのだと思い知らされる。
そして、目覚めた時に必ず傍にいてくれる『お兄ちゃん』という存在に、私がどれほど依存しているのかも。
今回もまた、目覚めれば『お兄ちゃん』に慰められるのだ。
その存在に、優しい言葉に。
だから私は、静かに目を閉じ耳を塞ぐ。
そうして、この「夢」から目覚める時をただただ待つ。
私にとって「救済者」である『お兄ちゃん』の声が、この「夢」を壊す瞬間を。