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ⅩⅩⅡ 睡り
真っ白い部屋。
風に吹かれた薄いカーテンが、ふわりと揺れた。
彼女はふと目を覚まして、ぼんやりと何もない天井を見つめる。
頭が重く、全身が怠い。
考えなければならないことはたくさんあるのに、思考は何一つまとまらず霧散してしまう。
それは彼女にとってとても大切なことだった筈だが、それさえも忘れてしまう程に彼女は疲れ切っていた。
何もないいつも通りの部屋に安堵した彼女は、考えることを放棄して再び眠りへと落ちていく。
寝返りを打てば、白い壁と風に揺れるカーテンが目に入った。
この部屋を訪れるのは初めての筈なのに、なぜか昔から知っているような安心感がある。
それに疑問を持たない程、彼女の思考は鈍っていた。
この瞬間、彼女は自らの『ペア』の存在すら忘れていた。
『お兄ちゃん』という『幻想』も何もかも忘れ、ただひたすらに空漠とした曖昧な意識に支配されながら、覚醒と眠りの狭間で揺れる心地よい感覚。
再び深い眠りに落ちる間際、彼女はとても懐かしい声に名前を呼ばれた気がした。
「お休み、…………」
「……お父さん?」