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Amnesia Doll  作者: 黒宮杳騏
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Ⅱ 「お兄ちゃん」と私

私とお兄ちゃんは『デュオ』だ。


私が九歳の時『マスター』になり、『お兄ちゃん』が『ペア』として与えられた。

『お兄ちゃん』という呼び名は、現役の『ペア』に固有人名を付ける事が禁じられていたのと、単純にお兄ちゃんが欲しかったから。

『ペア』には『(ハダリー)』と呼ばれる『疑似生命』が体のどこかに入っていて、それは『マスター』にとってとても思い入れの強い物だ。

だから『ペア』は目覚めた時から『マスター』の記憶を知っているし、読心術とまではいかないにしろ、ある程度ならリアルタイムで心を読み取る事が出来る。


悲しい話だけど、『マスター』が死ぬとその『ペア』も動かなくなる。

そうして動かなくなった『ペア』には、基本的に三種類の最後が待っている。

まずは、再生処理を施されて教会や医療施設などの公的機関に寄贈されるパターン。

この時は逆に固有人名をつけられるので、オリジナルの『マスター』がいないのだとすぐに分かる。

次に、遺族などに譲渡するパターン。

けれど「動ける」状態での譲渡の審査は厳しくて、全体の三パーセントにも満たない。

どちらかといえば、故人の形見として動かなくなった『ペア』を手元に置く人の方が多く、そちらは大体十八パーセント程度。

でもやっぱり一番多いのは、そのまま『マスター』と一緒に埋葬してしまう事。

『マスター』の特別な遺志がない限り、大抵こうして『ペア』は最後を迎える。


だけどどんな所にも悪い人はいて、『(ハダリー)』を血で汚して『ペア』としての機能を失わせ、ただの傀儡にして闇取引をする悪徳業者も存在するというから、私はなるべく『お兄ちゃん』と離れないように気を付けていた。


『お兄ちゃん』と『デュオ』になった時から、私には『お兄ちゃん』しかいなかったから。


けれど、私ももう十九歳。

『お兄ちゃん』が「お兄ちゃん」じゃなくなってしまうまで、多分あと数年しかない。

だから私は、『ペア』を『人間』にする事が出来る賢者が住むと言われている森に行く事にした。

『お兄ちゃん』には「リスクが多いし、そんなのお伽話だ」って反対されたけれど、私は『お兄ちゃん』に『いつまでも外見が変わらないお兄ちゃん』ではなく、毎年一つずつ歳を取る『人間』の「お兄ちゃん」になって欲しかったから。

こうして、私が『お兄ちゃん』を押し切る形で、私達は賢者が住むと言われるガラテイアの森を目指して旅立った。

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