ⅩⅨ 半身の条件
見えない片目がズキズキと幻痛を訴える。
再び泣き出したこいつの心理は滅茶苦茶だ。
自分への苛立ちと後悔、俺を失うことへの恐怖、そして淋しさ。
膝の上で握り締めた手に力を込めて、時折しゃくり上げては大きく震える肩が、かえって俺を拒絶しているように感じられる。
俺はこいつの頭へと伸ばしかけた手を引っ込めて、かけるべき言葉を探した。
だが、今は孤独に支配されているこいつの心に、一体どんな言葉が届くのだろうか。
繋がりが切れている訳でもないのに、こいつの心情は不明瞭にしか伝わってこない。
はたしてそれが亀裂のせいなのかは分からないが、もしそうだとしても俺はこいつの一番の理解者でなければならないのだ。
それが出来なくなった時、俺は俺でなくなり、当然『デュオ』でいられなくなった俺は廃棄処分される。
廃棄処分が怖いかと訊かれれば、特に何の感情もない。
ただ、スリープ状態と同じように意識がなくなり、そのまま目覚めなくなる。それだけだ。
だがそれはあくまで俺にとっての話だ。
こいつにとっては違う。
自分の半身を引き裂かれる精神的負担は、想像を絶する痛みだろう。
もしかしたら、それがきっかけで壊れてしまうかも知れない。
それでも、今の俺にできることなんて何一つなかった。
気にするな、と言うだけこいつを苦しめるのは分かっていたから、俺はあえて黙って何もせず、自然とこいつが泣き止むのを待つことにした。