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冬のうた  作者: ひなた
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冬に凍えないように

 涙が零れることはなかった 瞳から落ちることはなかった

 凍った心からは想いの水も 出てこないんだから……

 零れようにも 涙まで凍ってしまうんだから……

 温もりを求めた指は 冷たい武器を手に取った

 生温かい赤に 冷たくなってしまった体に 僕は

 僕は確かな 歓びを感じてしまっていたんだ


 氷の欠片を握り締めれば 手が冷えるのは当たり前

 だけど手で溶けた氷の 冷たい水がどこか気持ち良くて

 赤くなる手でも 氷の欠片を握り続けていた

 ”もっともっと”と力を込めれば 欠片は砕けて手を切った

 溢れ出す液体は赤い手を赤く染め上げ それさえも僕には愛おしくて 手で舐めとった


 感覚も徐々に失われてくる…… もう最期かな

 痛みにさえも快感を覚え 冷たい武器を手に取った

 凍った心から涙は出ない 凍った雫は零れ落ちない

 だけど 血だけは違うでしょ? いつも温かいまま流れてきてくれる

 その温もりがもっと欲しいの あの味を忘れられない

 悲鳴も今や心地良くて 人の涙や血を舐めるのが好きで

 狂っていると言われようとも僕は 武器を手放せなかった

 血の味を知ってしまって 今更やめられるはずもなかったんだ


 涙が溢れることはなかった 瞳にいっぱい溜めたままで

 凍った心を溶かしてくれたけど 思いの水は枯れ朽ちていた……

 瞳いっぱい溜まっていても 零せるはずもなかった……

 狂った僕には 涙を零す権利がなかったのかもね


 温もりを求めた指は 君の体にそっと触れた

 僕が冷たくしてしまったの? 君の心も体も……

 生温かい赤に 冷たくなってしまった体に 僕は

 冷たい心は変われない僕だから 体も冷たくすれば良いと決めた

 温かい心と体を求めたけれど 僕の心も体も凍り付いた

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