〇月☓日 気分が悪い
5月はそう、子供の日です!全国の子供たちが柏餅を食べる日です!え?違うの?
どうも、カナタです。500歳になりました。今、俺はリビングに作った木のテーブルといすに腰掛けてコーヒーのような何かを飲んでいます。
いや、あれからリビングに家具とかを置いてみたんだよね(素材は眼下の森から運んできました)。そうしたらすっごいくつろげるようになっちゃったんだ。
ちなみにこのコーヒーっぽい何かはあのサバンナなところの近くにたくさん生えてたのをむしり取って、100年前に作ったアイテムボックスの中にもっさり放り込んだのを乾燥させて粉にしてお湯で溶かして飲んでいる。
なんだかすごくおいしい。これはここ50年の午後の楽しみとなっている。ほっとするよね。まあ俺の生活って暇の塊だから息抜きも何もないけどね。24時間息抜きだからね。今はブラックと微糖しか飲めないけどそのうちカフェオレも飲めるようになるはずだ!まあそこまでにどれだけの年月がかかるかは知れないけど。
あ、あと髪の毛は切っちゃったよ。だって邪魔くさいからね。前髪はちゃんと残してあるけど髪型は耳の後ろからシャギいれておしまい。さすがにぱっつんはダサイと思ったからね。今も1か月に1度ぐらいの割合でざくっと切るよ。
あーあ。これでだいぶ体型は前の状態まで戻ったけど背が低いよ!!おおよそ155の状態から伸びないよ!一向に伸びないよ!!なぜだああああああ!!!
・・・もういいや。もう俺、すべてを気にしないことにした。もう何事も無関心でいなきゃな。それにしても俺、なんだか性格が緩んできている気がしなくもないが気のせいだろうか?まあどうでもいいんだけど。こちとら500歳超えてるからそんなこともあるだろうさ。500歳のババアだからね。ふはは。
ところで最近はあのコーヒーもどぎのように、世界各地からおいしそうな食べ物を探してきては貯蔵庫にしまいこんでいる。でも森に行くたび虫の鳴き声一つしないのはしんみりするんだよなあ。生命の起源って海だからなあ・・・でもここは先に植物生えちゃってるんだよね。地球では植物も水草から進化したって考えられてるんだよ。知ってた?
アミノ酸とタンパク質はたくさん溶け込んでるはずなんだけどなあ。まだ菌類も生まれてないのかな。いったい生き物と意思疎通ができるのにあと何億年かかるんだか・・・
うう・・・考えるのはやめにして気長に待とう。いつかボッチ生活にも終止符が打たれる時が来るさ。
ところでこの500年お腹がすいたり排泄とかは全くもってなかったんだけど大丈夫なのかなあ?まあ超自然神秘的怪奇現象ってことであり得るのかもしれないんだけど。
ところで今日はこの500年間ウンともスンとも感じなかった不調があるんだよね。なんだか肌寒いというか悪寒があるというか・・・そしてちょっと頭が痛くてお腹がジクジク痛むんだよね。それでどうしちゃったんだろうなーって思って今日は自宅で引き籠ることにしたんだ。
あったかいコーヒーとユグちゃんの実で作ったクッキーさんを食べつつ和紙っぽい紙に小説を書いている。なんか木をグルグルねちょねちょブオーッってやったらできちゃった和紙に、鉛の細い芯を入れた木の棒(つまり鉛筆)で書き込んでいる。ちなみに消しゴムは作れなかったから一度間違えたら終わりだよ。
本を読みたいなーでもさすがに本は魔術で作れないよなー・・・じゃあ自分で作ろう!という経緯でここまで来たわけだ。ちなみに書いてたらどんどん話が膨らんでいくんだよね。暇人な俺にとっていい遊びになるわけだ。他にも縄跳びや綾取りなんかもできるぞ。一人遊びならば俺の右に出る者はない!!!
・・・むなしい
はあ、思えばこの500年間ずうっとボッチだったんだな。この先に生命が生まれるのが何億年後になるかもわからないのに俺はちゃんと自我を保てるのだろうか。もう心の拠り所がユグちゃんしかいない。そしてそのユグちゃんも言葉を返してはくれない。
さみしいな・・・
その瞬間今朝から続いていた腹部の痛みがギリリッと激しくなった。
「グウッ!?」
男であった時の急所に受けた痛みよりは全然ましだけれど、耐え難い腹痛が俺を襲う。痛みを必死でこらえて寝室へ向かった。あそこならば少なくとも暖かい苔たちがある。そこで元の姿に戻ってゆっくり休めば治るだろう。
俺はこんもりと生えた苔と芝生たちの中にうずくまった。
その時
ドロオ・・・
「・・・ッ!?」
腹部に気持ちの悪い感触が走った。生温かい何かが撫でるように、垂れるように滑り落ちてゆく。強い不快感を感じ、長い首をもたげてその部分を覗き込む。
血だ。
血が垂れていた。一瞬パニックになった後、ふと気づいた。これが女子が必死で隠していたアレなのだと。
そうか。そりゃあ女子も隠したくはなるだろう。こんな気持ちの悪いどす黒い粘液のような血の塊がぬらりと出てくることなんか。そして女子に男の痛みがわかるか!と、高をくくっていたがこの腹部の激痛に長時間耐えている女子たちもすさまじい根性があったのだと初めて気が付いた。もしかしたら男子よりも男気があるのかもしれないな。
というか俺の血はまだ赤色だったんだな。これが分かっただけでも安心した。うう、痛い。ジクジクと腹を抉るように痛みが走る。だけどこんな時にも背中をやさしく撫でてくれる人はいない。俺はいつまで孤独でいなけりゃならないんだよ・・・
その後三日三晩俺は苦しみ続けたのであった。
四日目の早朝、俺はすがすがしい気分で目が覚めた。この爽快感は何だろうと思い、ふと思い当たる。あの鈍痛がない。どうやら初の女の子の日とやらは終ったようだ。
立ち上がって大きく伸びをすると苔に腹這いになっていた部分にベットリと血がついているのを見つけた。うおえ、気持ち悪い。
即座にクリーンという魔法をかけると汚物は消え去って苔はまたふわふわに戻る。俺はそのまま外の泉に向かった。
泉の水を少し飲んだ後、俺は水にダイブした。こぽこぽと水泡が上がる澄んだ水の中を翼をオールの代わりにして進んでゆく。この防水性抜群の翼は水がついても飛べなくなることはない。不思議なことに水中でも俺は息ができるようだ。そのまま引き寄せられるように泉の真ん中の最も深い場所へと俺は近づき、水底に横たわった。
そのまま俺の意識は薄れて行った。
こいのぼりはかわいい。