〇月☓日 世界を創った
お待たせいたしました!明日は節分ですねー。作者は大みそかに吹き飛ばしたはずの108のコトがもはやそろっております。今年もパソコンをしつつゲームに入りびたり、金をねだって隙あらば宿題を最小限に抑え頑張りたいと思いますよ。さて、明日は鬼をフルボッコにしてばびゅーんしましょう!
最初に感じたことはただそこに”いる”ということだった。
別に暖かいとか寒いとかではなくてただそこに”いる”ということだけ。
目を見開けばそこは無であった。
何もない。
空も大地も雲もない。風だってないし緑もない。そんな上も下もない無の世界に俺は”いる”。
まず、眼というものがあるのかさえ分からなかったがとりあえず周りを見渡していると突然叫びだしたくなった。こう・・・何かむしゃくしゃしているという感じではなくてただ叫びたいような言い表せれないような感じだ。
周りには俺以外に生物と呼べるべき存在はなかったので思いっきり叫ぶことにした。
だがそれは叫び声、というよりは獣の雄たけびに近い物であった。
「グルルルルルルルルルルルルルルオオオオオオオオッ」
俺から何か波動のようなものがこの無の世界に広がって行った。その波動の力が地と空を分け、空気を作り、大いなる海が現れる。地面が隆起して険しい山と谷が形成されてゆく。
ふと風が吹く。生命の風だ。風と共に小さな緑たちが次から次へと芽吹き始める。小さな芽はどんどん太く大きくしっかりと成長してその体と体を絡み合わせていった。それらはやがて一本の大木となった。
「オオオオオオオオン・・・」
やがて長い長い雄叫びが静まる頃には壮大な景色が広がっていた。大きな恒星が昇っている。いつの間にやら地面が出来ており、眼下には一面に雲海が広がっていた。今立っている地面は芝生に覆われ、どうやら一番標高が高いところのようだ。後ろを振り返れば大きな大きな大木がそびえたっていた。それこそ屋久杉なんかかすんでしまうほどの太さであり、バオバブを軽く凌駕する高さでもあった。根元には大きな裂け目が開いている。
さらにほのかに甘い香りがすると思えば桜のような白い花たちが一斉に花開き、その間に大きな実がぷっくりと虹色に色づいていた。食べてみるとプルリとみずみずしく、とても上品な香りとともにさわやかな甘みが楽しめた。
そこで初めて気が付く。なぜこれだけの大木に頭が届いたのか、そしてどうして手を使わずにこの果実を食べたのか、と。
大木の向こう側に深く、そしてその水底まではっきりと見えるマリンブルーに輝く泉が広がっていた。その静かな水面に自分の姿を映した。だが、そこにいたのはいつも鏡で見ていた自分ではなかった。そこに映る者は人ではなかった。
竜。
水面に映りこむその者はまぎれもない竜。まるですべての光が反映されたかのような白い鱗を持ち、それは別の角度から見るとさまざまな色が映って玉のように美しく光る。背から生えた大きな翼は鳥のように羽毛が包み込み、その一本一本が淡く光り輝いている。銀色の美しい鬣は触ればさらさらと零れ落ちるのだろう。額から生えた雄々しい2本の角は恒星の光を浴びて七色に輝く。耳の後ろからはリボンのような暖色のひげが波打っている。
そんな光の化身のような竜が泉のほとりで鋭い鍵爪のついた四肢をそろえて、その金の眼で自分を見つめ返してきていた。
「これが・・・俺・・・なのか・・・!?」
声は深いアルトで全てを包み込むような声色であった。まるで自分ではない何かを見ているようだ。
竜はしばらく自分自身の姿を驚いたように見つめていたが、やがてそのしなやかな首を折り曲げて泉の水をこくこくと飲み始めた。
水は冷たくておいしかった。水を飲み終わってからもう一度この景色を見渡した。
青い空に(眼下ではあるが)白い雲。空には太陽と同じような恒星が浮かんでいる。涼しい風が吹き、地面には青々しい草が生えている。雲を翼で払ってその下を見れば深い深い谷が見える。
まるで地球のどこか、大自然がそのまま残っているような地域のようだ・・・
地面に寝そべるとふかふかで気持ちがいい。最初の波動の放射の影響で体がだるくなっていたおかげもあってすとんと眠りに落ちた。
目を覚ますと眼下に雲があった。その光景に少し動揺するも、それもつかぬ間で昨日のことを思い出して納得した。
起きたら300年後でした、とかいうことはどうやらなかったようなので安心した。それと一つ思ったことがある。昨日やったことは”聖書”に載ってることに似ていた。世界を作った後、神様は生物を生み出したらしいけどそんなことができるのだろうか・・・この世界に俺一匹永遠にひとりとかやめてほしい。
今日は俺の寝床づくりでもしようかなと思う。ちょうどいい具合に大木の大きなうろがある。ここを拠点にして生活していこうかと思う。
大木・・・このままだと紛らわしいから”レインボーフルーツの木”とでも名付けようか。俺、センスないなぁ・・・やっぱり”ユグドラシル”と名付けよう。
ユグドラシルの木のうろにたどり着く。入口は俺の体が入るほど大きい。中もそれなりに広いがせいぜい体を丸められる程度だ。
俺はこの世界に魔法がある、と思っている。昨日放出した力はおそらく”魔力”やら”マナ”と呼ばれるものなのだと思う。
前世の記憶があることに感謝だが、地球での漫画には体内の力を放出してまた構成・・・とかわけわからないことを”呪文”によって行っているだのなんだの言っていた。たまに無詠唱とかかっこいいのができるヤツがいたけど俺にそんなことはできるのだろうか・・・
とりあえず山火事になったりしたら大変なので一番無難だと思った水属性の魔法を実演してみることにした。
昨日放出した感じでブワーッとやって水をぎゅぎゅーって感じだ。そんな風に念じていたらあらびっくり、ユグドラシルの100倍は大きなウォーターボールが頭上に出来上がりました。
違う!
ど、どうしようかこれ・・・念じただけでこんなのが出来ちゃったよ・・・これ、落としたら大洪水だよね?り、竜だからきっと口からビームが出せるはずだ、うん。それで何とかしよう。
とりあえず口に魔力を集めてみる。そして最大出力で放つ!!!ふぐおおおっ!?くっ高威力過ぎて踏ん張るのがつらいッ!
俺の口から真っ直ぐ一直線に伸びた極太の光のビームは水の弾を突き抜け宇宙へと放出していった。
「は、ははは・・・こりゃだめだぁ・・・」
なんだか乾いた笑いが漏れる。俺、完璧人外になっちまったなあ・・・
と、水の弾が爆音を立てて破裂した。頭上から大量の水が落ちてくる!!!急いでユグドラシルのうろに入り込んだ。ああ・・・ユグドラシルの実が流されちまう・・・
この生まれたての世界に初めて雨が降り注いだ瞬間であった。
豆が食べたい豆が食べたい豆が食べたいきなこぉ・・・