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1話

1話


朝の事を思い出しても、こうなった原因は全く分からない。


それにしても、おかしなことだらけだ。


まずどう考えても場所が違う。

さっきまで公園ににいたのに、今は目の前に湖がある。


数分前まで日の出前で真っ暗だったのに今は昼のように明るい。

それに暑い。さっきまであんなに寒かったのに、今は夏のように暑い。

ノワールも見当たらないし。無事だといいけど。


今一番の問題は、目の前の黒い狼。


さっきの光で、目がイカれたのか?

大きさがおかしい。

座った状態だから正確にはわからないいけど、体高2メートル以上ある……デカ過ぎだろ。馬以上の大きさだぞ。

そんな狼なんて聞いたことないぞ?


それにしてもさっきからこいつ全く動かないな。死んでる?いや、ベロ出して呼吸してるな。


襲ってこないってことは、ひょっとして危険な生物ではないのか?

なぜかわからないけど襲われる気がしない。あまり怖いとも感じないんだよな。

よく見ると『おすわり』してる。こんなにデカいと鎮座しているって感じだけど。



目の前の狼のことを考えていると、その狼から突然声をかけられた。


『御主人、大丈夫ですか?』


はいぃ?


喋った?

狼って喋るの?喋るわけがない。

でも俺が知らないだけで喋るのかも?


わからん。保留だ。


もう一つの問題は「御主人」だな。


御主人て誰?


周りを見たとき自分しかいなかったよな。


そうなると俺か?俺なのか?


言葉を返せない俺に、狼はもう一度声をかけてきた。


『御主人、聞こえていますか?』


「き、聞こえてますけど、御主人って僕のことですか?あなた誰ですか?」


少し口調がおかしい。狼にあなた誰とか聴いてるし。


『私です。ノワールです』


「ノワール?ノワールだって!?」


家のノワールは膝くらいまでの大きさだぞ。明らかに大きさ違うだろ。

それにノワールは話せないはずだ。


だけど顔は似ている。

胸の白い毛の模様も似ている。

冷静に見れば、見た目が大きいだけでノワールに見える。

この狼がノワールなら俺が襲われなかった事も頷ける。

一緒にいたはずのノワールがこの場にいない事の理由にもなる……か?



「俺の知ってるノワールとかなり姿が違うんだけど、何かノワールだと証明できる物はないか?」


『証明出来る物は記憶しかありません』


記憶か。

話の内容次第では信用できるかもしれない。聞いてみよう。


「ならここ数年の俺の話とノワールの事を聞かせてほしい」


狼は少し間をおいて話し出した。


狼の話は俺の記憶と大差ないものだった。




俺の自己紹介とここ数年の話をまとめるとこんな所だろう。


名前は天堂牧人(てんどうまきと)

21歳の大学1年生だ。

身長180センチで標準体型、容姿は普通だと思う。


趣味はバイクとノワールと遊ぶこと。

ゲームもするしネット小説や普通の小説も読むし漫画も好きだ。

1人暮らしなので家事もそこそこ出来る。


高校の時に付き合っていた彼女には最初の受験に失敗した時に振られた。

その後は余裕もなくて彼女は出来なかった。


家族はノワールだけ。

両親はもういない。


あれは2年前の冬だった。

その日は両親が2人で出かけていた。俺は浪人生でもうすぐ受験だったため、誘われたが行かなかった。


夕方に病院から両親が亡くなった、という電話がかかってきた。

最初は相手が何を言っているのか分からなかった。

病院や警察で話を聞き分かったのは、相手のよそ見運転による交通事故で、即死だったということだ。


その後は、両親以外に身内もいなかったため葬儀や色々な手続きが忙しかった。

忙しさが落ち着くと、今度は悲しさが込みあげてきて、立ち直るのにずいぶんかかった。

当然勉強も手がつかず、受験も失敗した。


しかしなんとか立ち直り、次の年の受験で合格することができた。


今は将来の目標を探してる普通の大学生だと思う。



そしてノワールだ。


ノワールはボーダーコリーの雄で現在11歳だ。

好物はビーフジャーキーで、嫌いなものはバナナ。

家に来たのが、生後10ヶ月の頃だった。今より小っちゃくて可愛かった。

親父が犬嫌いなのに無理言って買ってもらった。まあ何日かで親父もメロメロになったわけだが。


家に来て楽しかったことはたくさんあったと言っていた。


やはり一番悲しかったのは、俺の両親が亡くなった時だったそうだ。




話を聞いた限りは本物っぽい。

でも犬ってこんなに記憶力いいのかな?


彼女に振られた愚痴の話はノワールにしか言ってない。

犬にそんな話をするとか、かなり病んでるな。

正直忘れてほしい。


それにしても俺の記憶を覗かない限り分からない話ばかりだ。

さすがに俺の記憶は覗けないだろう。覗けないよね?


そもそも俺を騙しても意味ないんだよな。

そうなるとノワールだと考えて良いんではないかと思う。



「なるほど……確かにノワールっぽいけど、なんでそんなにデカくなってんの? バカにしてるわけじゃないんだけど、犬って今のノワールみたいに記憶力良いの? 会話も上手にしてるし」


『突然周りが明るくなって、なぜか御主人より大きくなってしまいました。どうして御主人と話せるようになったのかは分かりません。 

それから御主人や御主人の家族や自分の事等の記憶や思い出は覚えています。でも以前よりかなりはっきり思い出せるので、賢くなっているのは確かでしょう』


やっぱり普通なら有り得ない。こんなことが起こるんだろうか?

頭がおかしくなって妄想でも見ているのか?それともまだ夢の中なのか?


でも妄想や夢だとは思えない。

景色も地面の感触も空気もこれが現実だと主張している気がする。


俺がおかしくなっていないとするなら、こんなことが起こる現象って何だ?


異世界転移か?


いやいや、常識で考えればそれこそ妄想や空想の世界だろう。


だけど今起こっている現象を常識で説明出来るだろうか?


正直言って出来そうにない。


異世界転移説を採用すれば、ノワールは異世界に来て何かの力が付与されたと考えられる。

周りの環境についても、異世界に転移したせいで地球とは気候も場所も時間も違うと考えられる。


今の段階ではそう考えて行動した方が無難かもしれない。


地球だと思って救助を待っていても死ぬだけだ。

そもそも通報する人が誰もいないし。


ノワールについても受け入れよう。

信用して良さそうだし。

一緒に暮らしていた愛犬を見間違えるなんて反省だ。


「ノワールごめん。本当にごめん。予想外の事が起きて訳が分からなくなってたんだ」


ノワールは俺の顔を1度舐めてから言った。


『信じられなくても仕方ありません。でも信用してもらえてよかったです』


「許してくれるの?」


『当然です』


「そっか、ノワールありがとね」


『どういたしまして。御主人』


尻尾を振って喜んでるみたい。本当に許してもらえたみたいだ。

よかった。


実際見捨てられたらやばかったな。


何にしても巨大狼がノワールだったおかげで、直近の危機は回避できたわけだ。


喰われないことが分かったし。


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