~第一層~「少年と男」
「や、やめろ、やめてくれぇ!」
と男の声が建物のなかに反響する。
「やめる?何をやめると言うんだ?」
と男の声に答えるものが一人いた。それは、学生服を着た高校生らしき少年だった。
「お、俺はまだ死にたくないんだ!頼む!助けてくれぇ!」
と男はその少年の足にしがみつきながら言った。だが、その少年はまるでサッカーボールを蹴飛ばすかのように男の頭を蹴り上げた。
「確かに、あなたには色々と助けてもらったし感謝もしている。だが、これとそれは話が別だ。俺は、自分が生き残るためにあなたを殺す。」
そう言って少年は手に持っていた斧を振り上げる。して、そのまま男の頭部に向かって斧を振り下ろす。
「ぅぎゃぁぁぁぁぁあ!!」
と叫ぶ男の頭部に振り下ろされた斧は男の頭部を割り脳味噌をまき散らしながら男の下顎まで行きそこで止まった。少年の服は男の返り血で赤黒く染まっていた。少年はゆっくりと斧を引き抜きその刃にこびりついた血と肉片を男の服で拭きながら言った。
「すまないな、山田さん。俺はこの事態を引き起こした奴を消すまでは死ぬわけにはいかないんだ。」
そう言って、手を合わせて暫く黙祷をしたあと、少年は立ち上がりその場を去ろうとしたときに少年のポケットから学生証が転がり落ちた。そこには「黒森 鉄雄」と書かれていた。鉄雄はそれを一別したが、そのまま立ち去っていった。鉄雄はすべての始まりである三日前の出来事を思い出していた。