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つきのしずく

 ヒナちゃんはおばあちゃんが大好きです。


 おばあちゃんはヒナちゃんがおらしをしてもわらってトイレにれてってくれます。


 ごはんべさせてくれて、ごほんんでくれます。


 おばあちゃんはヒナちゃんがらないむかしうたをいっぱいっていて、お手玉てだまやおはじきをおしえてくれます。

 ヒナちゃんはおとうさんとおかあさんがおおむかえにくるまでおばあちゃんとごすのです。


 あるおばあちゃんがねむっていました。


「おばあちゃん」


 ヒナちゃんがらしたらすぐにっこりわらってきてくれるおばあちゃんがいつもとちがっておきてくれません。


 ひゅうひゅうとかぜいてきました。


 ぽかぽかになったお布団ふとんをおばあちゃんがよっこらしょといってもってくるのがヒナちゃんはきです。


 お布団ふとんの上であそんでおとうさんにしかられることがあるけど、おかあさんとおばあちゃんがかばってくれます。


「おばあちゃん。おふとん」


 さむいのでヒナちゃんはおばあちゃんがさむくないようになにかしないととおもうのですがどうすればいいかよくわかりません。おとうさんがいたらすぐあたたかくすることをしてくれるのです。おとうさんはかしこいんです。


「おきて」


 おばあちゃんをおこそうとするのに、おばあちゃんはきませんでした。



 おとうさんとおかあさんがいていました。

 シンセキのおじちゃんおばちゃんたちもいていました。


 おとこおんなちいさい大人おとなひとくろふくをみんなて、ヒナちゃんたちはへんなにおいのするところにいました。


 すごくたいくつでつまらなくて、おばあちゃんがいたらあそんでくれるのに。


「ヒナちゃん。しずかにしようね」


 おかあさんがいています。


 ヒナちゃんはおとうさんやおかあさんがいているのをたことがかったので不思議ふしぎでした。


 ふしぎってむずかしいことばですよね。わからないってことです。


「どこかいたいの? おくすりをとってくるよ」


 ヒナちゃんがそういうとおとうさんはヒナちゃんをぎゅっときしめました。


「おばあちゃんとおわかれなの」


 おかあさんはおばあちゃんのまえでそういっておはなをおばあちゃんのているところにおきます。みんなみんなきます。


 ヒナちゃんはよくわからないまま、おはなきます。


 おばあちゃん。またねてる。つかれたんだね。しずかにしないとだめなんだね。


「おわかれって明日あしたあえるよね」

「ううん。おばあちゃんとはもうえないの」


 ヒナちゃんはいやだとったのですが、みんないているだけでした。



 おばあちゃんがかえってこないので、ヒナちゃんはおとうさんとおかあさんがかえってくるまでずっと一人でお留守番るすばんをしないといけなくなりました。幼稚園ようちえんにもかようようになりました。


 最初さいしょいたけど幼稚園ようちえんたのしいし、先生せんせいやさしくて、お友達ともだちはみんな喧嘩けんかしたりするけどなかよしですけど、やっぱりひとりはつまらないです。


 おばあちゃんがいないので、ヒナちゃんはお友達ともだちのおうちからかえってきたらおとうさんかおかあさんがかえってくるまでちます。


「おばあちゃんがいればなぁ」


 テレビもゲームもきちゃいました。


 おばあちゃんがんでくれたごほんはヒナちゃんにはまだめません。

「おばあちゃん何処どこにいったんだろ。はやくもどってきてほしいな」


 ヒナちゃんはぼろぼろになったごほんています。ごほんにはおおきなおおきなお月様つきさまいていありました。


つきのしずくをつけたらね。いたいひとえるんだよ』


 おばあちゃんがそういってんでくれたごほんて、ヒナちゃんは思いました。


「つきのしずくってほしいな」


 ヒナちゃんはおとうさんにおねがいしてみることにしました。

 ヒナちゃんがずっとずっと待っているとおとうさんがかえってきました。


 おとうさんに「つきのしずくをちょうだい」とお願いすると知らないようです。

「ヒナちゃん。つきのしずくってなにかな」

 おとうさんにヒナちゃんがおしえるのはめずらしいことです。ひなちゃんはがんばっておとうさんにおしえます。


「あのね。つきのしずくがあったらね。おばあちゃんにえるの」

「うーん」


 おとうさんはかんがんでしまいました。


「おばあちゃんはんだんだよ。ヒナちゃんにはわからないだろうけど」

「しんだってなぁに」


いまえなくなるけど、そのうちえるから。ヒナちゃんが立派りっぱ大人おとなになるまでっていなさい」

いまいたい」


 おとうさんはまたいたそうにしていましたのでヒナちゃんはお父さんに『いたいのいたいのとんでいけ』をしてあげました。



 おとうさんはへんにおいのするものにをつけます。たばこじゃないけどヒナちゃんはさわってはいけません。


 ちーんとおとがしました。


 ヒナちゃんがあそぶとおとうさんにしかられるのですがオトナはおこられません。オトナってずるいですよね。


「だってさ。おふくろ。ヒナがいたいって。よかったな」


 おとうさんはおばあちゃんとおはなしできるのかなぁ。ヒナちゃんがくと「元気げんきにやってるかってってるよ。ヒナが元気げんきそだつのが一番いちばんだって」

 おとうさんはそういうけれど、ヒナちゃんはおばあちゃんにいまいたいのでうれしくありません。


「おばあちゃん。はやくもどってきてください」


 おとうさんにわれるままにすわっておばあちゃんのお写真おしゃしんまえいます。おかあさんがかえってきて、シチューをおとうさんがつくってくれていたのでヒナちゃんは美味おいしいごはんをたべておもいました。


「おばあちゃんにおすそわけしよう」


 でも何処どこってけばいいのでしょう。


 そうくとおかあさんはおばあちゃんのお写真しゃしんまえちいさなおわんれたシチューをきました。


美味おいしい。美味おいしいって。ヒナちゃん」


 おかあさんはヒナちゃんにうそをつきます。


「うそ。わたしこえないもん」


 いーだ。

 ヒナちゃんはへそをげてしまいました。


 おへそってどうやったらがるのでしょうね。

 おかあさんやおとうさん、オトナのひとたちにきいてみてください。



 ヒナちゃんはつきのしずくがおつきさまのしずくだとおかあさんにおしえてもらいました。


「じゃ、って」

えないんだよ」


 おとうさんがおしえてくれます。


「ほら、ごほんの中でもうものじゃないでしょ」


 おかあさんがおばあちゃんのわりにごほんんでくれました。


 それでもヒナちゃんはつきのしずくがないか幼稚園ようちえん途中とちゅうさがしてみることにしました。


むしさん。つきのしずくってないかな」


むしさんはごほんのようにおはなししてくれませんでした。


「おはなさん。つきのしずくっていかな」


 おはなさんはごほんのようにつきのしずくの場所ばしょおしえてくれませんでした。



「せんせい。つきのしずくは何処どこにありますか」


 ようちえんの先生せんせいいてみます。

 先生せんせいはなんでもっているのです。やさしくて綺麗きれいでヒナちゃんもだいきです。


「つきのしずく? 絵本えほんのあれ?」

「うん。おばあちゃんにいたいの」


 ヒナちゃんに先生せんせいはにっこりわらってくれました。


「じゃ、みんなにナイショでおしえてあげるね。ほら、こっちにきて」


 先生せんせいがぎゅっときしめてくれます。となりのこうちゃんがずるいとったので先生せんせいはこうちゃんやよっちゃんやみきちゃんたちをぎゅっとしていました。


「せんせい! おしえてよ!」


 ヒナちゃんがおこると先生せんせいおしえてくれました。


「ヒナちゃんのむねなかにあるの」

「むね?」


 先生せんせいはヒナちゃんのおなかうえにさわっておしえてくれました。


「ここがむね


 ヒナちゃんはおなかうえからつきのしずくをそうとおもうのですがどうすればいいのかわかりません。


「どうやったらだせるの」

「ううん。あのね。おばあちゃんのことをかんがえたらね。むねのなかでおばあちゃんにってるの。おとうさんもおかあさんも先生せんせいもこうちゃんもよっちゃんもみきちゃんもみんなヒナちゃんのむねにいるの」


 よくわかりません。


 いつでもみんなにえるなんてオトナはいいなあとヒナちゃんはおもいました。


「オトナになったらえるよ。だからいまあそぼう」


 おとなになるのが待てないとヒナちゃんが言うと先生はこう言いました。


「オトナはね。大人おとなになるのがいやになるのよ」

「なんで? おばあちゃんにえるんでしょ」


いたり、わらったり出来できないことがあるの。いやだなっておもうの」


 先生せんせいはそういうけどよくわからないです。


「おばあちゃん。ヒナちゃんがみんなとあそんでいるのがうれしいってってくれているわ」


 そうなのかなぁとヒナちゃんはおもいます。ヒナちゃんはおばあちゃんとはなしたいのにおばあちゃんは大人おとなひとにしかあえないみたいです。


つきのしずくはね。つきているとえることがあるよ」


 先生せんせいがおそらゆびさします。


 おそらにうっすらとあるおつきさまをヒナちゃんはました。よくみえません。よるになったらえるのかな。

 ヒナちゃんはおばあちゃんにいたくておうちで絵本えほんのおつきさまていました。


 絵本えほんのおつきさまがまっくらになってみえなくなって、おそらおおきなおおきな本当ほんとうのおつきさまかがやきだしました。


 絵本えほんのおつきさまがヒナちゃんのお部屋へや綺麗きれいひかりだしました。

 すごくきれいで、びっくりしたヒナちゃんは絵本えほんを落としてしまいました。


 絵本えほんのお月さまはぴょーん。ぴょーんとウサギさんのように跳ねると、まどからおおきなつきにむかってんでいきます。


 やがてつきからしずく。

 つまりちいさなみずたまですね。


 つきからふってきたしずくがヒナちゃんにたりました。

 絵本えほんのおつきさまとおそらのおつきさまがつきのしずくをくれたのです。


「ヒナちゃんや」


 かえるとおばあちゃんがいます。


 ヒナちゃんはいっぱいいっぱいおばあちゃんとあそびました。

 いっぱいいっぱいおはなしして、ほんをよんでもらいました。


 そしてヒナちゃんはおばあちゃんの御歌おうたを聞きながらつかれてねむりました。


 おばあちゃんにえた。

 つきのしずくって本当ほんとうにあるんだとヒナちゃんはお父さんやお母さんにおしえてあげました。

 おとうさんもおかあさんもびっくりしてよろこんでくれました。

 かったですね。ヒナちゃん。


 それから何年もしました。

 もうヒナちゃんはお漏らししません。

 ヒナちゃんは自分でお布団を入れられます。


 ご飯を自分で作れるようにお母さんとお父さんから習っています。

 来年、しょうがっこうに行くことになりました。


 月のしずくが空から落ちることはないけど、お婆ちゃんが喜ぶように勉強をがんばろうと思っています。


 おしまい。

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