冬休みと雪の子
この寒いときに良く来てくれたネェ。
そうかそうか。
寒くて冷たくて大変だったか。
ほら、蓑を脱ぎなさい。
傘はこっちに。
こっちに火鉢があるからね。
さぁ入った入った。
ちょっと待っててね。もうすぐ梅の花も咲くだろう。
梅が咲けば桃が咲き、桃が咲けば桜が咲いて、大人たちは桜の木の下で酒を交わしてよろこぶものさ。
外は吹雪かい。
そうか。本当に毎年毎年、きてくれてありがとう。
お土産に七草を持ってきてくれたって? ああ嬉や。粥にしようね。
ほら、粥だ。たーんとおあがり。
ふうふう。婆やが冷ましてあげましょう。
ほら。暖かいかい。しょっぱいかい。美味しいかい。
ふふ。私もお前が微笑むと嬉しいんだ。
もっとそのやさしくてあたたかい笑みを婆にみせてくれ。
じゃ、そろそろ準備をしましょうか。
ほら、雪の下から出てくる準備だ。虫さん。へびさん。かえるさん。
あとちょっとで春になるよ。森の樹さん。一緒に春の夢を踊りましょう。
子供たちよ表に出なさい。ほら、空からは白く輝く贈り物。
君たちに捧げる贈り物。雪が舞い、街を白く包めば、君たちは外に出てはしゃいで踊る。
私たちはそれが喜び。さぁ一緒にあそびましょう。
私たちは雪の子、春の精。
雪が溶けたら春になる。さぁ今から踊ろう優しい歌とともに。
さぁ子供たちよ。遊びなさい。白い雪を握り締め、暖かい白い吐息を吐きなさい。
君たちの暖かい微笑と喜びの声は私達のお祭りなのだから。