大きな木と小さな木
丘の上に大きな木と小さな木がありました。
小さな木はおひさまの光をひとりでとってしまう大きな木があまり好きではありません。
大きな木は小さな木が大好きでした。
風の日は小さな木をその大きな身体でまもってあげました。
雪の日は小さな木に雪がかからないようにしてあげました。
暑い日は小さな木が枯れないように身をはってあげました。
雨の日は小さな木に枝の傘をさしてあげました。
そんな大きな木を小さな木は嫌だ嫌だといっていました。
ある日のことです。
にんげんたちが丘の上にあがってきました。
大きなのこぎりを持っています。
にんげんたちは大きな木を切ろうとしています。
大きな木は木ですので逃げることは出来ません。
小さな木はやめてと言いましたがにんげんたちには聞こえません。
そして大きな木は小さな切り株になってしまいました。
小さな木にお日様の光が降り注ぎます。
でもちっともうれしくありませんでした。
小さな木は大きな木にごめんごめんと泣きました。
その涙は雨になって丘を濡らしました。
やがて、小さな芽が出て、小さな木に言いました。
僕は大きな木の子どもなんだと。
小さな木は大事に大事に大きな木の子どもをまもりました。
あめがふりました。
小さな木は芽が流されないように枝を伸ばしてまもってあげました。
風がふきました。
小さな木は芽が飛ばされないように幹をはってまもってあげました。
ひでりの日は根っこを伸ばして、水が地面に残るようにがんばりました。
やがて、小さな芽は小さな木になっていきました。
ある日、またにんげんたちがやってきました。
その手には大きなのこぎりがありました。
にんげんたちは小さかった木を切っていきました。
ちいさかった木はばらばらになって、橋になって旅人たちにかんしゃされました。
家になってにんげんたちを雨からまもりました。
椅子になって子ども達のべんきょうを助けました。
小さなはぎれは薪になって、さむいさむいと震える子どもを助けました。
あなたのがっこうに大きな木で出来た机と小さな木で出来た椅子があります。
お友達のがっこうにもおなじ机と椅子があります。
あの丘の上には小さかった芽が大きな木になろうとしています。
かなしいけど、つよくなろうと芽だった木は思っています。
いたくてつらくていやだったけど、大きな木と小さな木はかんしゃされています。
大きな木と小さな木でできたつくえといすでべんきょうしたおともだちはいまもがんばっています。
むかしむかしから、いまとみらいにつながるおはなしです。