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居候  作者: KMY
58/60

第58話 決戦

「入りなさい。」

 警官がハルスに、牢屋に入るよう促すと、ハルスは黙って入る。後ろから警官が檻の鍵を閉める。

「いたの。」

ハルスは、そこにいた少女に聞いた。

「すっと。」

その少女は答え、続ける。

「話の続き?」

「ついてにする?」

ハルスも短く答えた。

「お姉さん。」

玲子は、ハルスに尋ねる。

「話題は何?」

「復讐する・・・」

「さっきも言ったけれと、相手は強いのよ。」

「でも、」

「お姉さん。」

玲子は、ハルスの肩を掴む。

「やめてよ、」

しかしハルスは首を縦に振らない。

「そのためにあたしは生きているようなものなのよ・・・。」

「・・・・・・。」

玲子は重い顔をした。

「お助けに参りました!」

 突如としてそこに一人の男性が立っていた。

「ハデス様!」

その男性は、玲子に対して言う。しかし玲子は首を振る。

「あたしはもう・・・。」

「ハデス様、逃げますよ。」

「じゃ、あたしに成功の確信を持たせて。」

「というと?」

玲子はそこで口をつぐみ、ちらっとハルスの方を見る。

「お姉さん。」

「何?」

「・・・・・・この人が、お姉さんの仇敵・・・。」

「えっ?」

ハルスは半信半疑の顔でその男性の顔を見るや、思い出したのか、顔に怒りがこみ上げてきた。それを認めた玲子は、改めてその男性に言う。

「あたしが逃げる条件として、この子を倒して。」

「はい?」

「この子は強いと認めたわけではないけれと・・・、覚えている、この顔。」

と、玲子はハルスの顔をすいっと男性の前に突き出す。

「これは?」

「・・・・・・リサ。」

「はい?第一髪がピンクで、」

「とにかくこの人はリサ。」

「あの・・・、まあハデス様がそこまで言うのなら、やりましょうか。それでは後ほど。」


「言っておきますか。」

 校長室で、浜田幸恵一ノ谷中学校校長は、治を厳しい目で見る。

「いくら自分の学校の生徒だろうと、それをひいきにするよう警察に働きかける事は出来ません。」

「そんな・・・。」

「そうすれば、他の補導された中学生達も、厚遇しなければいけません。」

「・・・・・・。」

治は下をうつむく。

「わかりました。」

とだけ言って、失礼しましたも言わずに校長室を去る。

「どうだった?」

 廊下に、檸檬が向かい合って立って治を待っていた。しかし治は黙って首を横に振る。

「こんな形で別れるなんで・・・。」

檸檬も斜め下を向く。

「こうなったら裁判で争うしかないよ。」

治が重い声で言う。


「覚悟は出来ておりますか。」

「いつでもどうぞ。」

 どこぞの工事現場の廃材置き場。今日は晴れているにもかかわらず工事現場は無人で、廃材置き場も当然無人であった。その中心辺りにあり何もおいていないやや広い空間があり、その空間の端っこと端っこに、ハルスとエロスは陣取った。

「勝負は、どちらかが倒れるまでてよろしいですか?」

エロスは、ハルスに尋ねる。

「当然。」

ハルスも即答する。エロスは続ける。

「それでは、始めましょうか・・・。まずはあなたからどうぞ。」

「大変な自信ね。じゃ・・・。」

と、ハルスは杖をエロスに構える。

「イクスプロージョン」

 これは強烈であり、エロスのいる場所諸共廃材も焼け付きそうな勢いであった。しかしその爆煙が尽きる頃、そこには誰もいなかった。

「隙だらけですな・・・。」

後ろから声がする。ハルスは慌てて後ろを向く。

「スタフェン」

途端にハルスの体は動かなくなる。

「うっ・・・、その呪文はハイクラスの呪文のはず・・・。」

「はい、私が自信を持っている理由も、それなのです。数少ないハイクラスの魔法使い・・・、彼らが3人いると世界征服も容易であると叫ばれるほど強力な呪文を持った魔法使い達です。」

「なんでそれを最初に言わないの。」

「はい?戦う時は先ず相手を知る。これが大原則ではなかったのでは?」

「く・・・・・・。」

ハルスは硬直した体を必死に動かさんとする。しかしそのもくろみも、前に廻ったエロスからまともに呪文を浴びた。

「イクスプロージョン」

その呪文が届く前に、ハルスは必死に杖をなんとか斜め下に持ってゆき、必死に声を張り上げて叫ぶ。

「ミラー」

 爆発したのはエロスの方であった。御自らの魔法が反射し、魔法は自分を襲ったのである。同時にハルスも硬直から解放される。

「ばかね・・・、あたしもハイクラスよ。」

「なんですって?」

「知らなかったの?玲子・・・あんたがハデスと呼んでいる女の子は、母が違うあたしの実の妹なのよ。」

「何ですって?」

「その玲子も、ハイクラス。あたしもハイクラス。」

「血が繋がっているのか・・・。」

「こんな重大な事を知らないで自信を持つなんで、よっぼとのばかね。」

「く・・・くそ・・・。」

 廃材置き場で、互角な戦いが繰り広げられていく。


「おかえり。あれ、ハルスは?」

 玄関で治を迎えた母は、治に問う。

「それは・・・、ちょっといろいろあって、あれで、あはは・・・。」

治は言葉を濁した。それに対し母は追及する。

「警察に届けるわよ。」

「うっ・・・わかりましたよ、言いますよ。実はハルスは補導されたんだ・・・。」

「えっ?」

「それはその・・・・・・、」

まさか居候が人を殺したとは言えず、治は一時ためらい言い訳の糸口を探す。

「あ、あのさ、前テレビ放送の収録の時ちょっとあっただろ。」

「あ、あれね。あの後お客さんにやじを飛ばされて、」

「それで事情徴収されているんだよ。」

「そっか、そういうことね。じゃあしき帰るのね。」

「うっ、うん・・・・。」

治は重い声で言う。

「聞くことがいっぱいありすぎで、ハルスも警察に泊まると言ってたし、当分は帰れないかも・・・。」

「そうなの。」

母も答える。


「くっ・・・。」

 エロスは瀕死の重傷を負い、倒れる。

「うう・・・、は、はるす・・・、こ、これは引き分けかもしれない・・・。」

「と、とういう意味よ・・・。」

ハルスも瀕死の重傷だった。そして廃材にもたれていた。

「う・・・ううん、あたしの勝ちだもん・・・、お母さんの仇を取れたんだもん・・・。」

「そうか・・・。」

かすれ声だった。エロスはそれだけ言うと、地べたにばたっと頭をぶつけた。同じく頭から血を流しているハルスは、必死で立ち上がると、廃材をつたい、歩き出した。

「うう・・・。」

しかしその体力も限界に来て、ハルスの手は廃材からするっと抜け落ちた。

「治・・・。」

 これが、ハルスの最後の言葉であった。


 治は、自分の部屋に行き、あの時ハルスが座っていた自分の机の椅子に座る。

「思えば・・・、あの日から始まったんだよな・・・。」

 ハルスは、治の家の前で倒れていた。そしてその後髪の毛を踏んでしまった事から治の運命は一変。僕扱いをされ母に助けを求めるも、母も僕と呼ばれ、しまいにはテレビまで壊れて・・・。

「ハルス・・・、今から思えば、君が好きになる事が、その時は考えられなかったかもしれない・・・。でも、好きだよ、ハルス・・・。」

治は、机に座りながら、いろいろ回想をはせた。


 ハルスに記憶を奪われたかの日。

 ハルスに蹴られたかの日。

 いろいろな記憶が蘇ってゆく。一つ現れては、一つ消える。


「治!」

 突然後ろから声がした。

「えっ?」

治は驚いて、後ろを向く。

「ハルス?」

果たしてそこに立っていたのはかのハルスであった。

ついにいよいよ次回、

衝撃の最終話です。

タイトルは「第59話 心中」

内容は概ねタイトルから読み取れると思います。


さて、第60話ですが、

それからの主な登場人物の未来について紹介します。

それから、第60話の最後にちょっとした詩を挿入する予定です。


思えば、この小説も、

ここまで続くなんで思いませんでした。

あと一押しでこの小説が完結します。


次回作の紹介についてですが、

タイトルは「王子」

登場人物の名前は居候と同じですが、

その特徴などは一切関係ありません。

まだしても主人公の零時治とハルス・・・

いや、この場合のハルスの本名は、

ハルス・トルエンディング・ド・モルデス

トルエンディング国の王女です。

ハルスはチャールズ国のウィルソン王子を慕っていて、

自分の結婚相手を決める召喚の儀式でも

ウィルソン王子をあてたくで念じていたのですが、

出てきたのが治で・・・。


王子には多少の「治と結婚したくない」暴力シーン、

それから戦争もあります。

いろいろと複雑ですが、

とうぜ僕の野望も空しく、途中で終わるに決まっています。

途中で。はい。

あまり期待しないてください。

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門前
居候をリメイクして新しく書き直した小説です。
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