第57話 会話
「ちょっと待ってください!」
治が立ち上がり、警官を制す。
「ハルスが誰を殺したと言うのですか?」
それに対し、警官は即答える。
「有里巍鳳風さんを殺害した容疑です。」
「はい?どうやってやったか証拠は掴めているのですか?」
「魔法ですね。」
それを聞き、治は一呼吸をしてから警官に問いかける。
「現在の法律では、魔法は認められているのですか?魔法を使って犯した罪を問う事は出来るのですか?」
「それに対しては裁判で争って、」
「科学的根拠のない殺害方法を問うなんで聞いたことがありません。」
そう言われ、警官達はお互い顔を見合わせ、そのうちの一人が携帯電話を取り出す。
「もしもし、五十木でございます。」
しばらくして、一人の男が電話に出た。
「坂本刑事でございますか。」
「そうだ。何だ。」
「あの・・・、今そこの男の子から指摘されたのですが、魔法をどうやって裁判に問うのですか?」
「魔法ではなく何かトリックを使った可能性がある。とにかくくすくすしないて補導しろ。」
「はい・・・。」
警官は答えると、そこにいた『男の子』零時治に答える。
「魔法ではなく何かトリックを使った可能性がああるとの事です。」
「・・・・・・。」
治は閉口した。
「というわけで、補導させていただきます。」
警官が、静かに立ち上がったハルスの両手に手錠をかける。その感触を見たハルスは、静かに言った。
「治。」
「何だよ、反論しろよ。」
「・・・・・・大丈夫、絶対・・・。」
その確信もない笑顔だったが、その顔からは重みが伝わってきた。
はてな博士は、毎日のようにパソコンのメーラーをチェックしていた。そして、ついにその日がやってきた。自分がかくまっていた五十嵐由美の母からメールが届いたのである。
「こちらには由美はいません。」
という、一行の短い旨だったが、はてな博士は、母の存在を確かめることが出来、希望を持って返信をした。
「とうです、実際に会って話をしませんか。」
余りにもストレートすぎたのだか、はてな博士にとってはメールは古く、なるべく早く結論を知りたいのである。しかし、その数十分後、母から来たメールは以下の内容であった。
「私は人妻です。」
これを見て、はてな博士は内心あきれた。そんな気持ちで送ったわけではないのに。
「ならば、僕の作ったプログラムでチャットをしませんか。」
「私は人妻です。」
「そんなつもりはないんですよ。」
「私は人妻です。」
「いや、あなたの子供が死ぬかもしれないんですよ。」
「北朝鮮に送られたらたまりません。」
「子供がですか?」
「いいえ、私がです。」
「なんでそんな話になるのですか?」
「私は人妻だからです。」
「あの・・・あなたの苗字だけでも伺いたいのですか。」
「時田です。」
「あなたの子供の名前は?」
「由美です。」
「その苗字は?」
「五十嵐です。」
「あなたの子供のお父さんは今どこへ?」
「今、行方不明です。風の噂では、はてな博士と名乗っているとか。」
それを見て、はてな博士は驚いた。まさかあの由美が、自分の子供だったなんで。自分の妻とは喧嘩をして、20年前から別居をしていたのだが、別居中に子供を産んだらしい。はてな博士は、自分の子供との出会いを回想する。
1年前。はてな博士は呑気に、公園を散歩をしていた。すると、いきなり前から一人の少女がぶつかった。
「こめんなさい!」
と言ったきり、少女はその場を去ろうとする。
「待ちなさい!」
はてな博士は、その少女の襟裳を掴む。
「離してください!私は追われているんです!」
「それじゃ、ここでは事情は聞けなさそうだね。私の家で聞きたいか。」
「はい?」
「とりあえずここは危険だ。すぐに逃げよう。」
追われている、と言ってこんな反応をする人を見て、この人は変わっているのではないかと、少女は一時ためらったが、
「はい。」
と、静かに言う。そして、一つかまをかける事にした。
「あなたはヤモリを知っていますか?」
それに対し、はてな博士は即答した。
「虫の名前ですか?」
実際にヤモリに属している人は、心理によりつい「知らない」と答えかちで、それをあやにしたかまであり、少女は続ける。
「じゃ、急ぎましょう。」
「う、うむ、で、でも、ヤモリって?」
そう言うはてな博士の手を、少女は強く引っ張った。
「あの日から戦いは始まったんだよな・・・。」
はてな博士はつぶやく。そして、メールに返信をする。
「あなたの本名は、もしや五十嵐綾子さんですか?」
「そう言うあなたは?」
「とにかく、あなたは、はてな博士とやらに別れられた後、再婚した。そうですよね。」
「いいえ、事実上の再婚ですが、同棲です。結婚したでしょ、とよく言われますので、それにならって五十嵐と名乗っています。」
「そうですか・・・。」
「そうなんです。これでおしまいですか?」
先程「そのはてな博士は僕です」と書きかけたが、ちょっと巡回してから告白しようとはてな博士は思った。
「あなたはなぜ夫と喧嘩したのですか?」
「夫は研究が好きですが、夫の部屋から異臭がしたからです。」
「それは何の匂いですか?」
「硫黄とのことです。」
「20年前の事ですか?」
「はい。今はもう許してやろうと思っているのですが、所在が分からない以上・・・。」
とうやら相手も自分に親しみを持ったらしい。そもそも自分がその夫なのだか。
ハルスを連行した警官達がドアを閉めるのを、呆然と時田先生と生徒達は眺めていた。時田先生が気合をいれる。
「さあ、いつまでもぼーっとしていないて、授業に戻りましょう。」
と言うのと、チャイムがなるのと、ほぼ同時だった。教壇に立った時田先生は、
「しょうがないですね。大日本帝国議会の続きはまだ明日ですね。」
とか言っている。時田先生は、授業の事さえ大日本帝国議会だと思っている。それに対してあきれた生徒達も、時田先生の下では授業の事を大日本帝国議会と呼ぶよう心かけている。か、毎日これに対して反兪するのはおなじみの・・・。
「ちょっと待ってください!」
羽生かおるが、大声を張り上げて立ち上がる。
「これは大日本帝国議会ではありません。普通の授業です。」
「何を言うのだね。伊藤博文ぶっている。いまざら大日本帝国憲法を改正しようとでも?」
「それはもう既に廃止されているはずです!」
「ならば国際連盟は?正式に解散したとどこに書いてある?」
「とにかく、これは授業です。大日本帝国議会ではありません。そこんとこきっちり弁えてください!」
「生徒が先生にそんな言葉を使ってもいいのですか?」
と、時田先生は竹刀を取り出し、羽生に向ける。
「戦時中は剣道をやるべきだ。生徒達は直ちに運動場へ集合。運動場でさつまいもを作る。」
「あの・・・、ちょっとそれはやりすぎでは。」
見かねた蛍崎惇が立ち上がって言う。
「いや、この時分運動場が畑になってもおかしくない。」
「今戦争中だと思っているのですか?」
「戦争中だろう。」
「ストライク。」
「外国語を使うとは非国民だ!」
それに対し岡田檸檬が口を挟む。
「ちょっと待ってください。今は何年ですか?」
「2007年だろう。」
「高度経済成長は何年に、何をきっかけに終わりましたか?」
「1967年、アメリカがイラクに侵攻したからだ。常識だろう。」
「あの・・・。」
檸檬は閉口し、惇諸共座る。しかし、かおるは立ったままである。
「あなたのような先生が歴史を教えるなど、言語道断です。教育委員会に言い付けます!」
「今日行くいいんかい?どこにいくのだね?」
「だから、教育委員会に行くのです。」
「女王の教室みたいなことをいわないて、授業に集中しなさい。」
「だから、さっきチャイムはなりました。」
「そうか。」
時田先生はそう言うと、かおるに向けていた竹刀を下げ、教壇に戻る。
「これで授業を終わる。」
「ちょっと待ってください!」
治が立ち上がり、大声を張り上げる。
「生徒が補導されたのに、そんな平気でいられるのですか?」
こめん。
第6部までいけそうだと何回も話しましたが、
やっぱり無理です。第5部で落ちます。
ごめんなさい。
当初の約束を破ってしまい、申し訳ございません。
というか約束ってしたっけ^^;
王子では1話1000〜2000字という、
ちょっとした時間に一気に一話を書けるように
短くしておきます。
そのぶん居候は1話3000字。
小回りが利きません。なので、進むのが一斉過ぎるのです。
というわけで^^;