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居候  作者: KMY
53/60

第53話 暴行

暗号で、「らむのは おる くろす」は誤りでした。

この場をお借りしまして、

「らむのは おる くらさろす」と訂正いたします。

本当に申し訳ございません。

「・・・・・・よし、決めた。」

 一人の女性・・・玲子の母、長谷川村子は、決心したように、自宅のソファーから立ち上がる。そして、隣の和室に行くと、そこに置いてある自らの夫の仏壇に手を合わせ、言った。

「玲子は・・・、私の子です。」


「おい、治!」

 拝行館で、坂本刑事は後ろから治に怒鳴る。

「ダイイングメッセージに第二の答えは無用。それなのに・・・。」

しかし、治は冷静に応対する。

「刑事。犯人がこの殺人を犯した目的の1つは何ですか?」

「分からん。」

「ハルスに罪を着せることですよ。だから被害者はその意図を垣間見て、このようなメッセージを残したんですよ。」

「・・・・・・。」

「では、もう1つの答えを、今ここで明かしましょうか・・・。まず、この3つの単語のおのおのの最初の文字の子音は何ですか?」

「RとOとKだか?」

「そう・・・、ラ行とア行とカ行の3つになりますね。単語の頭文字は子音を表し、そして単語のつづりの数は、上から何段目かを表しているんです。」

「何!?」

「そう、だから、『らむのは』は、ラ行で、文字の数が4つなので、ら、り、る、れ、ろのうち4番目のれになり、『おる』は、あ、い、う、え、おのうち2番目で、」

「『くらさるす』は、か、き、く、け、この5番目の、」

「そうです・・・、れいこと読みます。」

そう言い、治が玲子の方を向く。その治の顔を見て、玲子は焦った声で言う。

「ちょっと待って!これで犯人は二人になったでしょ!で、なんであたしのほうなの?」

「確かに、ハルスが犯人じゃないなら玲子が犯人と言うのは、消去法だぞ?」

刑事も同調するが、治は冷静に答える。

「被害者は、自分が倒された場所にすけすけと文を書いています。これに犯人が気付かないほうが無理があると思いますか?」

「ち、ちょっとまって、ハルスは字が読めないんじゃ?」

玲子が言うと、ハルスが横から顔を出す。

「確かに読めなかったけれと、治に教えてもらって、平仮名と片仮名と簡単な漢字は読めるようになりました。」

「えっ・・・?」

玲子は驚いた顔をしたのち、言った。

「ねえ、このメッセージには答えが2つあるんでしょ。だったら答えが3つあったって4つあったっておかしくないでしょう?」

「確かにこのメッセージで犯人を決めるのは、少し不安定な推理だな。」

刑事まで同調する。

「それだけではありません。この連続殺人は、花鳥風月に見立てていますが、なぜこれほどしょぼい見立てなのか考えた事はありますか?」

それに対し刑事は反射する。

「その前に見立てをしたかどうか自体が危ういだろう。」

「それですよ。それに、見立てに敏感な人もいましたし。」

治がそう言ってチラッと後ろを見ると、緒形さんはビクッとした。

「つまり、店員にとって、こういうことは大きいから、些細な事でもすぐに花鳥風月を考えてしまいます。」

「だから?」

「それを想定した上で、見立てを無視して普通の殺人として処理する刑事を利用して、犯人は小細工を講じたんです。」

「何だ?」

「最初の『月』の時点で、これで殺人が終わると見せかけるため、月と分かりにくいなぞらえ方をしたのです。」

「それで?」

「これで殺人が終わり、しかも不審者を逮捕したため、刑事は一度帰りました。実は、刑事に一度帰ってもらうのが犯人の狙いでした。」

「目的は?」

「ハルスに逃げてもらい、疑いをそらすため・・・。」

「なら、取調べの時に否定する方法もあるだろう。」

「しかし、ハルスの性格を熟知している人は、あらかじめこうするだろうと垣間見るのです。そして、こう考えると容疑者は俺と玲子の二人になります。」

「・・・・・・。」

「そして、第2と第3の殺人の時、彼女は、被害者がメッセージを書いているのを見つけながらも、意図的に消さなかった。」

「・・・・・・。」

刑事が黙るのを見ると、治は改めて玲子の方を向く。

「まだ中学生だから補導で済むんだけれと・・・、なんでこんなことをしたんだ?」

それに対し、玲子はしばらく黙った後、口を開く。

「それは・・・、あたしね、あたしね・・・。」

 玲子は涙を流し、治の方を見上げる。

「本当は普通の人間として・・・、魔法の使えない人間として生きるはずだった・・・。」


 長谷川玲子は、ある秋の夜に生まれた。

 偶然、その夜はとても寒かったので、名前は、冷と同じ読みの玲に決まった。

 玲子は何も知らずに、時を過ごしていき、6歳、小学校に入学した。

 玲子が2年生になって、父は、玲子と母を和室に集め、二人の前でこう言った。

「玲子は魔法使いだ。」

「・・・えっ?」

二人ともびっくりした顔で、父の顔を見つめる。

「実は私はこの世界の人ではない、魔法使い達の世界からきたんだよ。」

まだ酒を飲んだのね、と母が言おうとしたが、父の顔が真剣だったので、矛盾が出来てから突っ込もうと思った。父は続ける。

「まず、私はあの世界で、ある女の人と結婚した。それから・・・、その女の人と喧嘩をして家を出ていった・・・。それから、村子、君と結婚した。」

それを聞き、母は矛盾に気付いたので突っ込んだ。

「じゃ、玲子は魔法が使えるの?」

「使える。」

「じゃあ、ここで実際に使ってもらいます?」

母が言うと、父は黙って近くのたんすの一番下の引き出しを開け、その中をいじくりまわって、一本の杖を取り出す。

「玲子、これを持ちなさい。」

玲子は、初めて触る杖に目を丸くしていた。

「呪文を唱えなさい。」

「呪文、分かりません。」

「私の後に続けていいなさい。イクスプロージョン」

「イクスプロージョン」

突然、3人の間が爆発した。規模は小さなものだったが、二人の目を丸くし、円周率がどうのこうのとか言えなくするには充分だった。

「とりあえず、玲子は魔法使いだ。これからは魔法使いとして生きていきなさい。」

「でも、急に言われたって・・・。」

その玲子を、母は隣から真っ青な顔をして眺める。


「たたいま。」

 玲子は学校から帰り、家の玄関のドアを開け、言う。それに対し、母は何の返事もしない。あの夜以前は、いつもおかえりとあいさつをしていたものを。玲子は悲しい顔になる。が、ショックがまだ隠せないのだろう、と考え、そのまま上がる。

「誰?」

突然、居間のドアが開き、そこから母が顔を出す。

「玲子だけと?」

「玲子って誰?」

「え?」

「あんた誰なのよ。」

「えっ?」

その母の顔は真っ青になっていた。玲子は、靴を抜くと居間の方へ歩いてゆく。

「ち、ちょっと、近づかないて!」

怯えた声だった。しかし、玲子はそれでも歩く。母は、手に持っていた棍棒を玲子に振り下ろす。

 ドン

「痛い!」

玲子が涙を流さんとする前に、母は第2撃を加える。その後、何撃も棍棒を食わされた玲子は、体中傷だらけになり、くったりとしていた。

 それだけならまだいいのだが、晩御飯も抜きにされた。

 毎日のように暴力、ご飯抜き。玲子にとって給食は、一日で唯一の食であった。休日は地獄だった。ご飯が全くない、朝から夜まですっと暴力。そして、幾度なく母から聞いてきた言葉。

「殺すんでしょ、あたしを!だったらあたしから殺してやる!」

 それを見かねて、父は玲子を寝かせた後、母と二人で、和室で話した。

「離婚しないか?」

「しましょうよ、もうあんな娘にはうんざりです。」

「しかし、玲子は何もしていないだろう。」

「でも、いつかあたしに盾突く前に殺さなければいけないの。」

「そんな殺生な・・・。」

そう言うと、父は横においてあった紙、離婚届を母に差し出す。

「親権は当然私のもの。それでいいな?」

「ええ、いいわよ。それにそっちのほうがいいですもん。」

「じゃあ、サインを。」

父が促すと、母はそれに黙って自らの名前を書く。

玲子の過去が・・・・・・

次回に続く^^;

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門前
居候をリメイクして新しく書き直した小説です。
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