第52話 暗號
「治君。」
突然後ろから声をかけられ、治は慌てて後ろを見る。そこには檸檬が立っていた。
「な、何だよ、檸檬。」
「あんた、ハルスと話していたでしょ。」
「えっ?」
「下手したら共犯になるわよ。」
「それは脅している?それとも忠告している?」
「・・・・・・忠告よ。」
檸檬がそう言うと、治は静かに立ち上がる。
「大丈夫・・・。」
「座って。」
檸檬がそう言うと、治は静かに座る。
「用はもう1つあるの。」
と言い、檸檬も治の隣に座る。
「何?」
「それはね・・・。」
と言うと、檸檬はポケットから携帯電話を取り出す。
「五十嵐さん、最近見なくなってるのよね。」
「うん。」
「実は五十嵐さん、魔法使いじゃないけれと、未来の予知に長けていて、」
「えっ?」
「で、五十嵐さんはあたしとハルスと一緒に行動していたけれと、途中でいきなり真っ青になって、」
「ハルスから聞いたけと?」
「そっか・・・、で、五十嵐さん、自分が死ぬ時まで予知できていたようなの。」
「何だって!?」
「で、パソコンにソフトを取り込んで、指定日時にメールを送るプログラムを置いていたらしくて、これを・・・。」
と、檸檬はそう言い、2つに折ってある携帯電話を開け、かちかちとボタンを押しつけ、一つの画面を導いた。
「これ、読める?」
「えっ?」
その画面は、由美からのメールらしかった。しかし、内容は、ある程度の文章は理解できるのだか意味不明なものであった。
「実はあたしが青くなっていたのは、
ヤモリの頭領の素顔を見たからです。
これを、零時治が解読できると予知し、
ここにヤモリの頭領の本名の暗號を書きます。
らむのは おる くらさるす」
「何だこれ?」
治が言うと、檸檬が付け加える。
「治が解読できると書いているから、できる?」
「できるもなにも、それはこの紙に書いてるのと一緒だよ。」
「うん・・・。」
「それにしても、暗號って何で読むの?」
「あんごう、じゃない?」
「じゃ、號は旧字?」
「そうらしいわね。五十嵐さんのパソコンは相当古めのものだし・・・。」
「・・・・・・パソコン?」
治ははっとした顔になり、檸檬の携帯電話を分取ると、急に立ち上がり、メールに書かれた暗号を眺める。
「これは・・・・・・!そうか・・・。」
「えっ?」
「この連続殺人事件の真犯人はハルスじゃない・・・。でも、そうなるともうひとつ足りないんだよな・・・。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・そうだ!」
治の顔から曇りが消えてゆくのを、檸檬は感じていた。治は再度はっとし、檸檬に聞く。
「そういえばさ、聞きたいことがあるんだけと・・・。」
この二人の様子を、影から坂本刑事は眺めていたが、二人は気付いていなかった。
拝行館にも誰も入らない真っ黒な部屋があり、夏にもかかわらず気温は低い。その真っ黒な部屋は、もともとは執務室として使われていたが、執務の役職が10年ほど前になくなった後は、昼間もカーテンが閉められ、一日中闇と言っても過言ではなかった。
ハルスは、治の指示で、この部屋に立ち、壁にもたれていた。さすかのハルスでも幽霊とかには弱いらしく、不安な顔つきをしてあたりを見回していた。
「修羅場ね。」
「えっ?」
突然、闇の中から声がする。ハルスはビクッとする。
「心配しなくでもいいのよ・・・。」
闇から、杖に明かりをともして、現れたのは・・・。
「長谷川さん?」
果たして、そこにいたのは長谷川玲子であった。杖に明かりをともしていて、その顔がよく見えたが、その辺りに及ぶほど大きな明かりではなかった。
「びっくりした・・・、何?」
「ふふふ・・・、あたしの本名を知っている?」
「えっ?」
「あたしの本名は、レライ・ド・ブラウン・・・。あなたの実の妹よ。」
「えっ?」
「なぜなら・・・、あなたの父とあたしの父は、同じだから・・・。」
「えっ!?」
ハルスの目は丸になり、口はぼかんと開いていた。
「あんたの父は、浮気をしてあたしのお母さんと結婚したのよ・・・、まさか魔界から来た人とは知らずに、お母さんは幸せそうな顔が写真に映っていたの。」
「・・・・・・。」
「あたしが生まれてから、お父さんは全部を吐いたわ・・・。お母さんのショックは大きくで、あたしをさんさん虐待した上、今は別居している。」
「・・・・・・。」
「お父さんとお母さんとあたしは、それぞれ3つに分かれて暮らす事になったの・・・。」
「・・・・・・。」
「だから、あたしは誅殺する事にしたの・・・。」
「・・・・・・!」
ハルスは嫌な予感を覚えた。
「ふふ・・・、あたしがヤモリを設立したのも、あたしを嫌な運命に追いやった人たちを誅殺するため・・・。」
「・・・・・・。」
ハルスの顔は、汗びっしょりになっていた。
「あんたの母を殺し、父も殺し、そして残るがあなただけだったの・・・。」
「そんな・・・。」
玲子は杖にともした明かりを消し、そして呪文を唱えんと杖を構える。ハルスも目をくっと閉める。・・・と、辺りが急に明るくなる。電気がついたのである。
「!?」
玲子は驚き、入口の方を眺める。ハルスもそこを眺める。そこには、一人の少年が立っていた。
「治!」
ハルスは安堵の息を漏らす。治は厳密な顔で言う。
「まず・・・、この事件の全貌を俺が代わりに言いましょうか・・・。」
そう言い、治は玲子を指差す。
「この連続殺人事件の真犯人、長谷川玲子さん・・・!」
彼の後ろに、坂本刑事、警官一人、それから何人かの宿泊客が顔を揃える。治が部屋に入ると、後出の人々もあとに続く。
治はある程度進んでから足を止める。人々も、治の前に出、玲子を囲むように立つ。治は言った。
「まず、お前のこの連続殺人の目的は、さっき聞いた通り、ハルスを殺すことだけだった・・・。だけれとハルスには俺がついている。それで、ハルスに罪を着せ一人になったところを殺すつもりだった。」
「・・・・・・。」
「さっき檸檬から聞いたけれと、お前はハルスに、俺がいない間に言ったようだな?目の前に屍があるのなら、あんたが犯人を倒しなさい、とね。」
「・・・・・・でもそれだけではハルスが凶器を持つわけないじゃないの。」
「だから投げたんだよ。氷室さん殺害現場に出ていたへこみはそれだ。」
「でも、へこみがあるだけではそうは考えられない、そうだ、氷室さんがいなくなったのはいつ、緒形さん?」
玲子が言うと、緒形さんがおそるおそる言う。
「前日の夕方からです。」
「そうよ・・・、酒井さんの死亡推定時刻も朝だったじゃないの。この時差はどうするの。しかもハルスは死体の前に立っていたじゃないの。とう考えてもハルスでしょ、現行犯で逮捕したこともあるし・・・。」
「いや・・・、ハルスがその場に来る直前、あなたは氷室さんを殺害したんだ。」
「えっ?」
「あなたは前日の夕方、氷室さんを薬で眠らせ、夜が明ける頃に、死体を誰もいないロビーに寝かせてからナイフをさしたんだ。」
「えっ!?」
「寝かせてからナイフを刺せば、重力の関係で返り血は腕のところまで届くのが限界だし、今は夏・・・半袖の袖の口にたとえついたとしても微量で気付きにくい・・・。」
「・・・・・・じ、じゃ、何であたしがやったの?」
「さっきハルスの前で明かしました?」
「そ、それは・・・・・・あたしがハルスを殺そうとした事は認めます。じゃあ何であたしはあの3人も殺したの?」
「それはちゃんとダイイングメッセージがあります。」
「何ですって!?」
玲子が言うと、治は一枚の紙を取り出し、玲子に見せつける。
「この文字、何と読みますか?」
「らむのは おる くらさるす でしょ。」
「これは誰を差していると思いますか?」
「ハルスよ。」
「理由は?」
「3つの単語の最後を繋げるとハルスになるんじゃないの。」
「誰が読んでもそう見える・・・、しかしこの暗号には、もう1つの答えがあるのです。パソコンという単語を聞いた時、ひらめきました・・・!」
「何ですって?」
「そして、この暗号は2人を差しますが、なぜ片方を対象としているのか、その確信も得ています。」
「せ、説明しなさいよ!」
「・・・・・・わかりました、ご説明しましょう。このダイイングメッセージに隠された2つの顔、そしてなぜその片方の顔が犯人なのか、もね・・・!」
予定より遅れていますので、今一生懸命考えています。
しかし、今、「時わ戦国」なるオンラインゲームを開発していまして、
このアルファ版の公開を今週中と約束しましたので、
アルファ版を公開次第続きを書くと思います。
実を言いますと、殺人事件で、
解決編を書くのは、これが生まれて初めてでございます。
なにぜ殺人事件の章に入りますと、途中で飽きますので^^;
お恥ずかしながら、これがぼくが生まれて初めて書く殺人事件の解決編でございます。
ここまてくると書くのも楽になりまして、
らむのは おる くろす
は、勘のいい方、
「れいこ」とお読みになったようで。
では、何でそう読めるかお答えください。
その答えは次回。
そして、なぜ犯人が「はるす」ではなく「れいこ」なのか、
そこんとこも併せて頂かないと・・・




