第42話 撮影
「ここがスタジオっていって、撮影するところだよ。」
才本さんは、丁寧に、治とハルスに説明をしている。スタジオといわれたところには客席がたくさんあり、カメラがたくさんあり、そして広かった。
「へー。」
ハルスが、空っぽの客席を眺め、うなずく。治は、不安そうな顔で、そんなハルスの後ろ姿を眺める。
「じゃ、もう少ししたら撮影を始めるから、控え室に行ってて。」
「はい。」
才本さんが行ってしまうと、治は、ハルスを引っ張って控え室に入る。
「いつか見つけて殺してやる、カムロめ・・・。」
玉鈴と名づけられた赤ちゃんは、母と共に退院し、檸檬の部屋でうわ言をつぶやいていた。それを心配そうに、母は眺めている。
「いつか見つけて殺してやる、カムロめ・・・。」
玉鈴が再度そう言うと、母は、玉鈴の小さな体を抱く。
「ねえ、玉鈴、カムロって誰なの。」
母は、玉鈴に語りかける。しかし、玉鈴は、相変わらず同じ文句を繰り返すのみであった。
「いつか見つけて殺してやる、カムロめ・・・。」
学校。これより4時間目。呪いの解かれた蛍崎惇は、しかしそれでも癖となり、毎日のように4時間目は必ずトイレにこもっていた。意味のないこの行為だが、惇はすっかり慣れてしまい、癖となっていた。
「こんな癖、変だよな・・・。」
惇は、そうつぶやく。
一方、2年1組で、これより社会の授業を始める時田賢昭は、クラス中の人々を全て巻き込み、”作戦”を展開しようとしていた。
「では、毎日のように4時間目は行方不明になっている蛍崎惇を、みんなで手分けして探しましょう。」
時田先生が言うと、生徒達は、あきれた顔で、それぞれ言い合う。
「まだ始まったよ・・・。」
しかし、そんな世論を無視して、時田先生は続ける。
「では、大日本帝国第3番海軍隊長には、五十嵐由美を任命します。・・・あれ?」
何かに気付いたように、時田先生は言う。
「五十嵐さん、いませんね。」
時田先生が言うと、生徒達は、一斉に由美の席を見る。確かにその机には誰も座っていなかった。
「何で休んだんですか?」
「それは、」
羽生かおるが立ち上がり、時田先生に言う。
「旅行に行くとのことです。」
朝、葛飾先生から言われた言葉を、そのままかおるは言った。時田先生は、顔を真っ赤にして怒鳴る。
「こんな非常時に旅行なと!五十嵐由美は、非国民だ!除名する!」
時田先生の怒鳴り声が、教室中に響く。
「もういい!授業を進める!鎌倉幕府だ!悪いか!」
激怒した時田先生は、鬼と化すのである。生徒達は、怯え顔でノートを開く。
「教科書を開け!45ページだ!鎌倉幕府の成立だ!このやろー!足利尊氏だ!」
「それ、室町幕府ですけと・・・。」と言う自信もなく、生徒達は、黙ってノートに書きこむ。
「その孫が徳川家康だ!その妻が平塚雷鳥だ!よく覚えとけ!」
もはや言っていることがめちゃくちゃになっている。時田先生が黒板に書いた内容も、先ほど言ったことにもとついていた。生徒達は、教科書を見ながら、黒板は見ずにノートに書きこむ。それに気付いた時田先生が、再度怒鳴る。
「おい!黒板を写せ!それだから、織田信長と織田信秀の違いが分からないんだ!ええい、くぞくらえ!そこ!」
時田先生がかおるを指差し、怒鳴る。
「織田信秀と山田五十六の関係を述べよ!」
戦国時代の人と昭和時代の人の関係など、言えるわけない。しかし、かおるは立ち上がり、適当に言った。
「はい、義兄弟です。」
「違う!夫婦だ!」
二人とも男ですけと、と言うことも出来ずに、かおるは黙って座る。時田先生は続ける。
「聖徳太子が安土城をたてたんだぞ!これは復習だ!」
5時間目の授業は、理科。関口先生が教壇に立つと、生徒達に言った。
「では、教科書の56ページを開いて。」
生徒達が教科書を開き、それぞれ黙読する間をおくと、関口先生は続ける。
「水の原子記号は?花尾武子さん。」
「はい、H2Oです。」
「そうですか。」
武子が座ると、関口先生は、次の質問をする。しかし、生徒達は、さっきの社会の時間で充分緊張していた。
「では、オゾンの原子記号は?長谷川玲子さん。」
「はい、O2です。」
「そうですか。」
O2は酸素であるが、生徒達は何も言わない。
「では、先ほどのテストを返します。」
関口先生はそういい、テスト用紙を、教壇から見て一番手前の列の生徒達にまとめて配る。前の生徒達が一つ後ろの生徒達に、自分のテスト用紙を抜いて残りを渡す。全員配り終えると、生徒達の中から「なんじゃこりゃ」の声が漏れる。なんと、点数が書いていず、○×も書かれていなかった。
「正解か間違っているか分かったら、悲しいでしょ。」
関口先生が平然と言う。生徒達はあきれた顔で、それぞれ教科書とテストの解答用紙を見比べ、それぞれ採点をした。いつものことであり、慣れた手つきで教科書をめくる檸檬。と、檸檬の理科の教科書から、一枚の紙がひらりと舞い落ちる。檸檬は、その紙を拾い読む。
「あっ・・・。」
その紙には、「れもんちゃん ちゅうがくせいになったら ぜったいにあおうね おさむより」と書かれていた。檸檬は、ふと治に渡した手紙を思い出した。
その文面は、「おさむくん ちゅうがくせいになったら ぜったいにあいにいくから れもんより」。幼稚園の時の事に回想をはせていると、後ろの席の人が檸檬に声をかける。
「答えあわせしろよ。」
果たして彼は渉であった。
「うん。」
檸檬はうなずくと、紙をポケットに押し込み、答えあわせを再開した。
一方、放送局で、ハルスと治は、リハーザルを済ませた。
「じゃ、いよいよ本番だよ。生放送だから気を付けてね。」
才本さんが治とハルスにそう言う。客席には、たくさんの観客が座っていた。カメラマンが、スタジオに立っている人々に言う。
「2時まで、あと3、2、1、0!」
「はい、」
どうやら才本さんは、「名探偵真実」の司会らしかった。
つれづれなるままに
日暮らし 硯に向かいて
心に移り行く よしなしごとを
そことなく書きつくれば
あやしゅうこそ ものくるおしけれ
「では、毎度このオープニングで失礼しています、お待たせ、名探偵真実の時間でーす!」
明るい声で、才本さんがマイクを持って言うと、観客達も拍手をする。
「では、今回は、先週特集した超能力に続き、魔法についてです!どうそ!」
才本さんが明るい声でそう言うと、スタジオの背景が開き、そこからハルスと治が出てきた。観客達の拍手は、最高潮に達した。もしもししているハルスを見て、治は、その手を引っ張ってやった。
「ではー、自己紹介をお願いします!」
才本さんがマイクをハルスの口に近づけると、ハルスは、初めて見るマイクにたしろいた。
「これ、何ですか。」
ハルスがマイクを指差して才本さんに言うと、才本さんは答えてやった。
「マイクだよ。」
「マイクって何?」
「だから、何かをしゃべる時に使う・・・。」
「マイクがなくでもしゃべれるの?」
「だけれと、番組の中では、マイクを使ったほうがいいし、」
才本さんが説明に困惑していると、治が才本さんに言う。
「すみません、ハルス、何も知らないんです。この女の子、ハルスと言います。」
「で、君は?」
才本さんがマイクを治の口元に近づけると、治は、不安そうな声で言った。
「零時治です。」
「じゃ、」
才本さんがマイクを自らの口元に近づけ、観客達の前で言った。
「今週は、魔法について検証しまーす!今回検証する科学者の紹介でーす!」
才本さんが平手でさしたところには、スーツを着た3人の大人が座っていた。
「では、毎週おなじみの利本さんですね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「では、真ん中のはどなたでしょうか?」
才本さんがマイクを真ん中の人に向ける。
「はい、日達正雄です。」
日達さんが座ったままお辞儀をすると、才本さんは、
「よろしくおねがいしまーす!」
と言った後、一番右の人の口元にマイクを向ける。
「では、どなたでしょうか?」
「はい、ヘファイストスです。」
彼は、彼の名前をそのまま言った。
すみません三国志NET KMY Versionの兵種追加や、
CodeZineへの記事投稿とか、
手間取ってしまいました。
それで、最近、更新が遅いんです。
この小説、駄作ですから。
つまらない話ばかりなんです。はい。
第43話から、
ハルスとヘファイストスの最初の戦いが始まります。
ハルスとヘファイストスの戦いは、長めにするつもりです。
アレスのような、一発で倒したり、とかはなしです。
・・・でも、これからつまらなくなります。
期待しないて読んでください。