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居候  作者: KMY
39/60

第39話 第一

「不思議なこともあるのね。」

 治の部屋で、机の椅子に座っている治と隣に椅子を置いて座っているハルスが言うと、治も頷いた。

「確かに、昔の人は日本語が書けないのに喋れる、って事は珍しくなかったんだけとさ、やっぱりさ・・・ハルス。」

「何?」

「ハルスの世界にも文字があるなら、何か書いて見ろよ。」

そう治に促されて、ハルスは、治が真っ白のB5程の紙と鉛筆を机の上に置くと、鉛筆で紙に何かを書きはじめた。果たして、それは読解不可能な記号の羅列であった。

「なんで意味?」

「おはよう。」

ハルスがそう言うと、治は黙ってしまった。

「なんで書き方が違うのに、喋り方は同じなの。」

ハルスがそう聞くと、治は口を開けることが出来なくなった。ハルスは、話題を変えようと、続ける。

「さ、勉強の続きね。」

「う・・・うん。」


 次の日の朝。

 ハルスと治は、手をつないて仲良く歩いていた。今日は土曜日。ハルスがこの街をもっと見たいと言うので、治がつれていってやったのである。ハルスは、誘いの文に、どこかのレストランで昼食を取ろうという旨を付け加え、言い換えれば・・・

「ねえ、」

ハルスがうつむいたまま言う。

「何?」

治も答える。その瞬間、後ろから強い殺気が襲ってきた。それに気付いたハルスは、治の背中を前に倒す。

「伏せて!」

二人が伏せると同時に、二人のすぐ上から爆発音が聞こえた。治とハルスは立ち上がり後ろを見る。

「ちっ・・・。」

一人の男が、こちらに杖を向けていた。果たして、彼は。

「アレス?」

ハルスが尋ねる。

「その通りでございます。」

「不意打ちとは卑怯ね。」

「ハデス様のご命令でございます。」

「ハデスって?」

「我らがヤモリの頭領でございます。それ以上は言えません。」

「ヤモリって?」

「善を殺し悪を助ける、組織なのでございます。」

「目的は?」

ハルスがそこまで言うと、アレスはため息をついて言った。

「いくら冥土の土産とは言え、これ以上は言えません。では、ご観念なさいませ。」

アレスが改めて二人に杖を向ける。ハルスも、アレスの方に杖を向ける。

「下がってて。」

ハルスがそう言うと、治は物陰に隠れて二人を見ることにした。

「・・・では、決闘と行きましょうか。」

「臨むところよ。」

二人は、真剣な顔をして、お互いを睨む。

「速撃ち勝負ね。」

「そうでございますね。」

二人はにらみ合う。治も、心配そうな心境で物陰から二人を見つめる。次の瞬間。イクスプロージョンの二色の呪文が響く。二つの呪文が合い、大きな爆発と化す。爆煙で二人が見えない。治は、その大きな灰色の濁った空間をかきわける。

「は・・・ハルス!?」

次の瞬間。

「ウィンド」

の呪文と共に、風が大半の煙を吹き飛ばし、杖を構えたハルスと、その前でうつぶせに倒れている男が現れた。ハルスは杖を納めると、しゃがんでアレスの様子を見た。

「死んでる。」

ハルスのその一言に、治は真っ青になって言った。

「こ、こ、殺したら、捕まるんだよ!」

「えっ!?」

ハルスは、驚いた顔をして、治の顔を見咎める。

「そうなの?」

「お前の世界ではどうなんだよ!」

「その前にそう言った事はないから、決める余裕がないじゃないの。」

「そっか・・・。」

治は呆れ顔で、ハルスに言うと、ハルスの手を引っ張る。

「警察に行こう。」


「では。」

 110番で呼び出された数人の警察官が死体を検分している。その傍らで、治とハルスは、二人の警察官から聞き込みを受けていた。片方はメモを取っていて、もう片方は聞き手だった。

「あなたが魔法で殺したと言うのですね。」

「そうです。」

ハルスがそう言うと、聞き手は、笑いをこらえるような顔で、そして無理に笑顔を作って、ハルスに言った。

「あのね、殺し方がいけないんだよ。魔法で殺したなんで誰も聞いてくれないよ。本当は脅迫されたんだろ?」

「キョウハク?」

「脅迫も分からないのかい?それはね、相手を脅かして、あれをやれ、これをやれ、と無理やりやらされることだよ。」

「だから本当に魔法で、」

そう言うハルスの手を、治は掴んだ。

「それ以上言うと精神病院に入れられるよ。」

治が言うと、ハルスは平然とした顔で警官に言った。

「わかりました。魔法がだめなら、あたしは殺していません。」

相殺的な殺人ではあるが、ハルスはあえてそう言った。警官も黙って笑顔で頷く。

「では、捜査の邪魔だから、ね。」

「はい。」

治はそう言い、ハルスを引っ張って、野次馬の中をかきわける。

「あっ、あの時の。」

誰かがハルスに言った。ハルスは答えた。

「はい?」

「この前のマナーじいさんの前でやったんだろ、爆発。」(第23話)

その人が言うと、周りの人も注目の目をハルスに集めた。治は、黙ってハルスの腕を引っ張り、ついに野次馬の中から出た。それでも未だに後ろから視線がある事に気付き、治はハルスを引っ張って駆け出した。


「んー、今日もいい天気ねー。」

 街中で、檸檬は腕伸びをした。目の前にあるのは書店の入り口。そして、店頭のテーブルの上にひら積みにされているのは、「究極の何か」という本、そして「トンネルを抜けると白かった」という本。前述したが、後者の本は檸檬が書いたものである。

 檸檬が、隣にある「究極の何か」を手に取り、自分の本とどれくらい面白さの差があるか自らの記憶と見比べていると、そこをハルスと治が通りかかった。

「あっ。」

檸檬は、治の匂いに気付き、振り返る。

「お、おはようございます・・・。」

そう言う檸檬の顔は真っ赤であった。ハルスは、黙って治の腕をぐいぐい引っ張る。ハルスが横にいる事に気付いた治は、普通の挨拶に等しい返事も出来ない。

「あ、うん・・・。」

そう言う治に対し、檸檬は、「トンネルを抜けると白かった」の本を平積みの中から取ると、治に突きつける。

「買わない?」

その本の著者に「岡田檸檬」と書いているのに気づいた治は、後ろの剣幕も考慮して、これを排除した。

「そ、それよりも、こっちのほうが面白そうだなあ。」

そう言い、治は、その隣にある「究極の何か」を手に取る。

「あっ!!」

檸檬が大声でそれを制す。檸檬の強要商法を防ぐためには、他の本を買うことが第一である、と考えた治は、そのまま店に入り、30秒ほどすると袋を持って店から出てきた。その袋の中から「究極の何か」の文字が浮かび出ている。

「そんなにあたし嫌いなの。」

檸檬がストレートに聞く。それに対し、治は言った。

「普通。」

途端に、ハルスの剣幕は限界に達した。ハルスは治に掴みかかると、怒鳴った。

「ちょっと!あたし以外の女の子に普通以上を使うの禁止!最低以下を使って!」

「ちょっとなあ、それは、ちょっと避けすぎ・・・。」

「そうもしないとあたしがわざわざ浮気の心配をしてあけているんだから、あんたも協力しなさいよ!」

「言っていることがめちゃくちゃだけと。」

治がそう言うと、ハルスは黙って杖を振る。治の体に憑いていた妖魔が動き、治の手は、自然と檸檬の頬を叩いていた。

「痛い!何すんのよ!」

妖魔に気付いた檸檬がハルスに怒鳴る。しかし、ハルスは、檸檬に対して返事を返さず、治に言った。

「あんたの唇と体はあたしのものってことを忘れないて!」

そう言うと、治は真っ青になり、

「あ、あれ・・・。」

と、ハルスのすぐ後ろを指差した。

「なによ。」

ハルスがそう言い、振り返る。果たしてそこにはハルスの天敵、葛飾先生が立っていた。

「書店の前で派手に喧嘩して・・・、他の客が迷惑だろうか!」

久しぶりの剣幕だったが、ハルスは昨日見たものと勘違いするほどの怖さを味わった。

「ひ、ひぃ・・・。」

ハルスは土下座を開始した。この4人を多くの客が囲んでいる事に、ハルスのみは気付いていなかった。


「アレス・・・死んだわ。」

 何かに感づいたように、ハデスは、暗闇の中でヘファイストスに対して言った。

「そうですか・・・では私の出番ですね。」

ヘファイストスがにやりとして言った。ハデスも答える。

「アレスが死んだと言う事は、それまでの男だったと言うこと・・・。勇躍、期待しているわ。」

「はっ。」

ヘファイストスは、頭を下げる。ハデスは、その頭に続ける。

「まずはリサ・ド・ブラウンね。」

「はっ。」

ついに、

ヤモリの三魔人「アレス」「ヘファイストス」「エロス」の中で、

第一の犠牲が出てしまいました!

ちなみに強さの比は、さっき挙げた順番に強くなっていきます。はい。

ちなみにアレスとヘファイストスは、ほぼ同じくらいの力ですが、

それに知恵をつけたヘファイストス。

どうなるんでしょうか・・・?

ぜ・・・ぜっ・・・絶対

ハルスは負けるに決まっています!

そして、ハルスは、殺されるのです!

ヤモリのとんでもない野望を前にして・・・!

(オイ自分が作者だろ)

どうも失礼しました。

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門前
居候をリメイクして新しく書き直した小説です。
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