第31話 体持
「浮気なんでしねえよ!」
治が抗議すると、ハルスは平然と言った。
「女の子とキスすると赤くなるんでしょ。」
「そんなことねえ!」
「嘘でしょ。ね。」
ハルスがそう言い、杖を振ると、治の体は勝手に前に倒れる。
「何だよこれ!」
「妖魔に命令しただけ。」
「おい、取れ!」
うつ伏せになった状態で、治は無理に顔を上げて言う。それに対し、ハルスは迷惑そうな声で、治の頭を踏んで言った。
「僕。」
「ひっ!」
ハルスが黙って杖を振ると、治の体は急に軽くなる。自分の意志で立ち上がった治は、ハルスに怒ったように言う。
「わあったよ。」
「そう。」
ハルスの生返事は、勝ち誇った声だった。
その二人を、水晶玉を通して見ていた者がいた。
「く、くぞ、」
その人は、悔しそうな顔をしていた。
「ずるい!ハルス!」
広く、飾られている部屋で、岡田檸檬は、水晶玉を睨んで唸った。
「こ、こ、こうなったら、あたしも負けないんだから!」
檸檬は、そう言ったきり、さっとドアの近くの、ドアの3分の2の高さくらいの棚の上に置いてある白い電話をばっと取り、電話番号を入力した。
「もしもし、零時です。」
治の家で、治の母が受話器を取った。
「檸檬、檸檬よ!」
「あら、檸檬ちゃん?息子から話は聞いているわ。」
「お、治はいるの!」
焦った声だった。治はいないと分かりきっていながらも、檸檬はあえて尋ねた。
「いないわ。」
「どこですか!」
「大通りに散歩に行っているわ。」
「ありがとうございます!失礼します!」
「あ、ちょっ・・・」
檸檬は受話器を置く。その顔は煮えきっていた。水晶玉に映る視界は狭く、場所の特定が難しい。場所さえわかればもう用はない。檸檬は、急いで着物に着替えると、机の上に置いていた杖を掴み取り、言った。
「ワープ」
同じ頃、もう一人の少女も、大通りに散歩に行っていた。
その少女の名は、五十嵐由美という。
彼女は、特にはてな博士にプログラミングはされていないのだが、自動習得プログラムも精巧であり、日曜日に散歩することを覚えたのである。
由美は、建物と建物の間の狭い隙間からハルス、ついて自分の好きな治が出てきたのに気付き、声をかける。
「ねえ、」
「何?」
治が返事をしたので、由美の顔は真っ赤になった。
「何よ!」
ハルスが割り込む。由美は、一転して真っ黒になった。
「あんたこそ何よ!」
気が付いていたら、反論していた。ハルスは、由美に杖を向ける。
「治に近づいたらどうなるか分かってるわね!あんた溶かすから!」
「まあまあ落ち着いて・・・。」
治が言うと、ハルスはぎっと治の方を向き睨んだ。その剣幕に、治は後退りをした。ハルスは、再び由美の方を振り向いて、怒鳴る。
「治は、絶対に渡さないから!」
「ううん、治君はあたしのもの。」
「違う!あたしの!」
「絶対あたしと結婚するから!」
「ロボットに赤ちゃんは産めないでしょ!」
「愛は関係ないわ!」
ハルスは、由美の鼻に杖の先を押し付けて言った。
「ねえ、動物は何のために子供を産むんだと思う?それぞれの子孫を作って、その動物が絶滅しないようにするためよ〜。」
このハルスのセリフに少子化という言葉が付けば、鬼に金棒である。しかし、またこの社会のことを余りよく知らないハルスは、少子化という言葉ももちろん知らない。
「ロボットは人間の仲間じゃないのよ、ねぇ〜〜〜?」
勝ち誇った声でハルスは言う。しかし、由美も負けてはいられなかった。人間と全く同じ脳を持っているのだから、愛のレベルも普通の人間と同じで当たり前だ。
「でも、人間は、子孫を作る事だけでなく、たくさんのことをするようになったわ。その中に、愛も含まれる。もはや、子供を生む目的は、子孫だけでなく多目的化してきたのよ!いまざら『人間が絶滅しないように子孫を作るため』という理由が通用すると思う?」
「で、でも、子供を生むのは、そもそも子孫を作るため、」
「多目的化してきた今、そんな理由で子供を産む人はいないわ。」
「うっ・・・。」
ハルスは追い詰められた顔をして、ちらちらと治の方を見る。
「あ!!」
はっとして、ばっと治の方を向く。そこには、檸檬と戯れている治がいた。檸檬は治の左肩に頬をすりすりしていた。ハルスは激怒した。激怒して、杖を治に向ける。
「あっ!」
治の足が勝手に動き、檸檬の股間を蹴る。
「何すんだよ!」「何すんのよ!」
と、檸檬は治を、治はハルスを、それぞれ怒鳴った。
「わー、食物連鎖だー。」
そこに口を挟む声がした。4人がはっとしてそこを振り向くと、女子高生のセーラー服を着た女の人がいた。
「誰よ!」
ハルスが高校生に怒鳴ると、彼女は言った。
「あたし、赤木杏。」
「関係者以外はひっこんてて!」
由美が怒鳴るが、杏はその勧告に応じない。
「食物連鎖ですね〜。前にいる人に怒鳴ると、自分も後ろから怒鳴られていたり。」
「俺は食べ物か!」
治が抗議するが、杏は明るい声で続ける。
「食べ物予備軍ですね。」
「あ、杏!こら!」
また別の男の声がして、5人が一斉にその声の元を向くと、そこには葛飾先生がいた。ハルスは慌てて治の背中に隠れる。
「するい!」
と、檸檬も治の背中に隠れる。ハルスは、その檸檬の頬をぶつ。檸檬も、負けしとハルスの頬をぶつ。治の背中で、喧嘩が始まった。
「あ、お父さん!」
杏が言うと、葛飾先生は杏に言う。
「また知らない人に変なことを言ったな、・・・ん?零時と五十嵐ではないか!」
葛飾先生が、そこに存在する自分の生徒に気付く。
「あ、こんにちは。」
「こんにちは。」
二人は挨拶をし、少し高めにお辞儀をした。
「こんにちは。さあ、杏、行くぞ。」
葛飾先生が後ろに向きをかえると、杏も「またね」と言って、葛飾先生の背中についていった。
治の背中での喧嘩は、やまない模様であった。治や由美もその喧嘩に気付き、治はハルスを、由美は檸檬を、それぞれ引っ張る。
「ぎぎぎぎぎぎぎぎぃ〜〜〜」
ハルスと檸檬が唸る。
「失敗ね。」
さっきハルスと治が手をつないて通った道で、一人の少女と一人の男が話している。
「はい、ハデス様。」
「計画、最初から立て直しね。今度は不意にいきなり襲い掛かるように。」
「はい、ハデス様。」
「それじゃ、アジトに戻って続きの作戦を練るわ。」
「はい、ハデス様。」
アレスが返事をすると、玲子は杖を振り下ろす。
「ワープ」
夕方。檸檬は、彼女の家に帰ると、早速地下室へ通じる暗い階段を下りた。その階段は、幅が狭く二人してやっと通れる程の幅であった。30段ほどのその階段を降り終わると、檸檬はその目の前にあるおりの中を見た。その中には、ハルスが不良組織にさらわれている間檸檬が墓地で捕まえた二人の男があぐらをかいて座っていて、こちらを睨んでいた。
「出せ!」
片方の男が言うと、檸檬は平然と言った。
「そろそろ白状して。ヤモリの全貌を。」
「言うか!」
「忠誠が強いほうなのね。」
「ああ!」
「死んでも教えない?」
「ああ!」
「もし解放されたら、ヤモリにもう一回行くつもり?」
「当たり前だ!俺はハデス様に忠誠をつくしている。」
「ハデス様とは?」
「ヤモリの頭領だ!それ以上は言えない。」
「そう。」
檸檬はそこまて言うと、杖をさっき話した男に向ける。
「ブロー」
男は顎を空気の塊に殴られ、後ろに転ぶ。
「白状するまて放さないわ。」
檸檬はそう言うと、また暗い階段の方を向き、そしてその階段を上る。階段のドアを閉める刹那、檸檬は階段の底の牢屋を見た。二人の男が話しているのが見えた。
3つのビッグニューズがあります!
1つ目。
なんと、この小説「居候」の延べ読者が、1000人を突破しました!
この後書きを書いている現在、1003人です。はい。
・・・どうぜなんとなく読んだ人が999人に決まっているのですか。
自信がないのにこんなに来るなんで考えもしていませんでした。
2つ目。
なんと、生まれて初めてファンレターと見られるものが届きました。
HPのメールから送信されていました。はい。
相手は自分と同じく小説を書いていましたが、
そのほとんどが挫折しているようです。はい。
思えば、アフリカと日本の食生活の違いと同じなのかな・・・。
(わけのわからない例えw)
たくさん食べ物を食べているのと同じように、
途中で挫折している人々に代わって、僕が居候を完結させます!
そして、居候を初の自作完結小説とするのです!
おはずかしながら、この居候、小説自己最長記録を更新しています。はい。
3つ目。
http://my.formman.com/form/pc/FAAqNvkpZs9T3UCC/
で、居候のアンケートをしていましたが、
一つ目の投票が来ました。
感激です。入れてくださった方ありがとうございます。
濁点不評にもかかわらず、無理して濁点評価に「気にせずに読める」を入れてくださいました。
あたたかい心に感謝します。
総合評価も普通でした。はい。
小説「居候」を普通に見てくださった方がいる事は、
一生忘れません!
以上、3大ビッグニューズでした。
これからも、居候はもっと面白くなり、
中学生が書くに恥じない内容になるよう努めます。
なお、アンケートの受付は、今も続いています。
お暇な方は、5分を裂いてアンケートに投票していただければ嬉しいです。
あと、アンケートで、
テレビ放送に関する項目がありますが、
僕の目的は、
テレビ放送をする時に視聴要求が殺到して
放送サーバーがバングすることです。
それで、テレビ局から
「居候をテレビ放送する事はテレビ界のタブーだ」
とか言われるのが理想ですね。はい。