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居候  作者: KMY
20/60

第20話 終了

 前。横。二人の魔法使いに一斉に杖を向けられているあさきゆめみしのボス。しかし、彼は、平然とした顔で言う。

「ここがどこかわかるか?」

白昼の光があまり差してこないくらい建物が高く、薄暗い。この空間で何が出来ようか。

「わからない。」

檸檬が言うが、ハルスはそれを否定する。

「ううん・・・ここ、確かあさきゆめみしの、」

「アジトだ。」

連歌の如く、ボスが続ける。

「ってことで、来い!」

と、あちらこちらから、一斉に人が出て来る。それぞれ、リーゼントをしている人が多い。黒い服が主だが、白い服もあちこちに点在していた。その数20人。ハルスは、檸檬と治の方に駆け寄り、3人で固まっていた。前と後ろには、それぞれ10人ずつの不良が囲んでいた。

「やれ。」

ボスが、言った。ハルスと檸檬の、イクスプロージョン、ゴストなどの呪文が響く。しかし、ここは狭い所。呪文の詠唱が不良が寄ってくるのに間に合わず、3人は約3分を経て、ぼこぼこにされ、縛り上げられて端っこに座らされていた。

「さて、こいつらをどうするか。」

ボスが、3人の前に立って、勝ち誇った声で言う。その後ろに、不良約20人がばらばらに立っている。

「この杖を折るぞ?」

ボスが、2本の杖を右手に差す。そして、左手で端っこを掴む。

「やめて!」

ハルスと檸檬が同時に言ったその時・・・


「スリープ」

 どこからともなく声がして、ボスの後ろの20人の不良たちは、みなばたりばたりと倒れこんで、眠りだす。ボスは、後ろを見て、かれきの山と化した手下達を見る。

「起きろ!」

ボスが慌てて、前で眠っている数人を蹴飛ばす。すると、近くから足音がする。

「誰だ!」

ボスのその声に応えて、一人の男が曲がり角から出てきた。彼は、ギターをひきながらの登場であった。

「名乗れ!」

ボスがそう言うにもかかわらず、彼は勝手に言う。

「祇園精舎の鐘の声、」

「名前は何だ!」

「諸行無常の響きあり、」

「言え!」

「娑羅双樹の花の色、」

「名乗れ!」

「盛者必衰の理を表す、」

「まじめにやれ!」

「おごれる人も久しからず、」

「おい!」

「ただ春の夜の夢の如し、」

「このやろー!」

「たけき者もついには滅びぬ、」

「こんちきしょー!」

ボスは、ついに彼の所へ歩み寄り、彼のぼろぼろの服の襟を掴む。

「名乗れ!」

しかし、彼は平然と言う。

「最後の節を言わせないとは、君もなかなか高慢だね。」

「何だと!」

ボスは、怒って彼の顔を殴ろうとする。しかし、その手の手応えはなく、男は消えた。

「はっはっはっはっはっはっはっはっは・・・」

ボスの後ろから笑い声がする。ボスは、後ろを振り向く。そこには、ギターを持っていて、杖を自分に向けているさっきの男がいた。

「気付かないの?僕は、さっきそこの女の子にギターを壊させた、乞食さ。」

「なに!?」

ボスが、慌てた声で言う。

「ただ乞食乞食とみぐびった君が、いけない。さあ、無条件降伏してくれるかな。」

「は、はい・・・。」

ボスは、真っ青な顔でひざまずく。


「カット」

 乞食が、3人に向かって杖を下ろすと、3人の縄はあっけなく切れた。立ち上がった3人の中でハルスは、男に頭を上半身こと大きく下げた。

「ごめんなさい!」

しかし、男は、少しも表情を変えずに、言った。

「気にしなくていいんですよ。君は操られていたんだから・・・。」

「本当にごめんなさい!」

「いいんですよ・・・。」

ハルスと男の会話は、いつまても同じ内容が続く。それを聞いて呆れた檸檬が、治に言う。

「さ、帰ろ。」

「はい?」

治が、呆然とした顔で言う。

「学校は?」

「明日一緒に叱られてあける。」

「というか、明日土曜日。」

「そう。」

檸檬は、最初から知っていたとでも言うように、薄い微笑を顔に浮かべる。

「あの・・・。」

恥ずかしそうに、下を向いて言う。

「あの時の、け、結婚の、約束、」

檸檬がそこまて言いかけた時。治の股間をハルスが後ろから思いっきり蹴った。

「そんなやつなんかと結婚するの?」

ハルスが怒鳴ると、治は軽く会釈で済まそうとする。

「子供の冗談。」

「嘘から出た誠。」

「だからさー、」

治とハルスの口論は、休むことなく続けられた。それに呆れた檸檬と男。檸檬の方から話しかけた。

「あのう、あなた、なんで言うんですか?」

すると、男は答えた。

「ただのしかない旅人。」

「どこをどう旅しているんですか?」

「・・・・・・」

男は、それっきり何も言わなかった。

「ところで、君、岡田檸檬?」

「はい。」

「もうすぐ『トンネルを抜けると白かった』って本を出すんでしょう?」

「はい。チラシを見ましたか?」

「はい。」

男は、そう言うと、持っていた杖を胸のあたりまて持ち出し、軽く振る。すると、1枚の色紙と1本のペンが出てくる。その2つは、檸檬の足の下へ落下する。男が杖をもう一回振ると、その2つの物体は、檸檬の胸の前で止まって浮いた。

「サインを。」

檸檬は、だまってその色紙とペンをはらいのけた。しかし、魔法のかかったままのその2つは、位置が変わっただけであり、二人の横で遊弋している。

「なぜ?」

男が、尋ねる。

「サインすることが、あたしの運命ではない。」

「大胆だねえ。」

男は、それだけ言うと、ぶいと後ろを向いて歩き出した。檸檬が後ろを見ると、ハルスと治の口論は喧嘩に発展している。というか、この喧嘩、ハルスの魔法が一方的に勝敗を決している。

 爆発の音が響く。檸檬の足元には、色紙とペンが落ちていた。


「今日から、そ、その、」

 月曜日の朝、玄関で靴を履いている、学校に行かんとする治の隣で、セーラー服をしたハルスは、もしもしとしていた。

「い、い、一緒に、学校、」

「だめだ。」

治は、その申し出を強く否定する。

「手をつないて、」

「厳禁。100%実現するとは思うな。」

昨日の喧嘩のことなど忘れたそぶりで、治は靴を履き終え、立ち上がる。

「なんだよ。急になつきやがって。」

治は、それだけ言うと、玄関のドアをばんと開け、閉めた。ドアが完全に閉まるのを見ると、ハルスは彼女の持ち込んできた靴に足を入れる。

「大丈夫?」

後ろから、お母さんが心配そうに尋ねる。

「何がです?」

ハルスが答える。

「本当に好きなの?」

「ええ。」

「友達として?それとも、異性として?」

「異性。」

「なんか仲悪そうね。」

「あっちがバカだから気付いてないだけ。」

「将来、結婚する?」

「・・・・・・絶対、する・・・・・・。」

ハルスが、小さい声でそう言うと、母はにんまりとした。

「何ニヤニヤしているんですか?」

ハルスが尋ねると、母は「ううん。」と言う。

「いってらっしゃい。」

母が言うと、ハルスも立ち上がり、かばんを掴んで、ドアノブを掴む。

「いってきます。」


 ハルスは、治の行った通学路を走りながら、以前は機械的に仲良くなろうと思っていたんだけと、治から別れた瞬間、ちょっと寂しかったなあ・・・、これ、恋心なのかしら・・・なんで考えていたら、視界に治が入る。

「あっ、治!待って!」

「ややっ、ハルスか!」

ハルスに気付いた治は、走り出す。二人の追いかけっこが、始まった。

「待ってぇ〜〜〜」

ハルスがこう言っても、治は答えない。ひたずら走るのみ。

「待ってよ〜」

ついに、ハルスは杖を構え、治の背中に向ける。

「ストップ」

しかし、そこは十字路の曲がり角で、治は右に曲がってしまった。向かいで散歩していたマナーじいさんに、その魔法が当たる。ハルスが杖を構えたまま右に曲がる頃、マナーじいさんは、叫んだ。

「体が、動かない、おい!そこの女の子!」

しかし、ハルスは走ったまま振り向きも減速さえもしない。

「こら!困っている人を助けろ!」

マナーじいさんのその声は、もうすでに治のことばかり考えているハルスの頭へは入らなかった。

ついに、第21話から、

ハルスと治の恋愛が本格始動します。

第3部からは、さらに面白くなるつもりですが・・・


とにかく、ここから

登場人物がこれでもかというほど増えますので、

メモの用意をお願いしますw

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門前
居候をリメイクして新しく書き直した小説です。
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