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居候  作者: KMY
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第16話 不良

 突然現れた4人の男にいきなり自分の杖を見せられ、

「返して!」

と言うも、体が前に進まない(零時)ハルス。

「魔法が使えなければ何も出来ないだろ。」

と、翻弄する4人の男。

「か、か、かえし、かえしてください・・・」

と、怯えた声で、真っ青な顔で、言う葛飾元不良先生。

 一人の男が、手に持っていた小さなつぼを前に突き出した。

「これ以上お嬢さんが変なことをしたらこのつぼを開けまして?」

「そ、それだけは・・・。」

葛飾先生は、必死で応える。

「いいじゃないか、よう、相棒にそれはないだろ。」

この言葉に、生徒達はどよめく。

「ちょっと、先生、どういうことですか!」

羽生かおるが立ち上がる。他の子供達も、次々と立ち上がる。生徒達に背を向けたまま、葛飾先生は重い声で言った。

「座りなさい。」

しかし、多くの生徒達は座ろうとしない。座っている、若しくは座った生徒は十数人しかいない。それを見て、不良たちはにやっとした。

「これから3数えるうちに全員座っていないと、このつぼのふたの行方は知れなくて?」

「ひ、ひぃ・・・」

葛飾先生は、怯えた声で、生徒達の方を向いた。

「3」

「座れ、座れ、座るんだ!」

「2」

「座れ!さもないと死ぬ!」

「1」

「座れ!座るんだ!後でどうなっても知らないぞ!」

葛飾先生は、その剣幕を以って生徒達全員を座らせようとするが、杖を盗られたハルスだけは座ろうとしない。

「座れ!」

「0」

この、ゼロの声が大きく響いた。

「ち、ちょっと、猶予をください・・・。」

葛飾先生が、真っ青な顔になって、不良たちの方に向かって言う。しかし、不良たちは、

「約束を破った。そこの少女には厳しい罰を。」

「そ、そんな・・・。」

「見たところ、かわいいじゃないか。俺達のメイトにぴったりじゃないか。」

「そ、それだけは・・・。」

「だめだ。じゃ、ふたを開けてやる。」

「ひ、ひぃ・・・。」

葛飾先生は、両耳を塞いで、しゃがみこむ。教育者が子供達に見せるべきではない、哀れな怯え方であった。しかし、その理由は、生徒達にはすぐに理解できた。

 前にいた不良がつぼを開けると、そのつぼから黒い何か(黒雲?)がざばーっと飛び出て、ハルスの体に巻きついてきた。

「何なのよ、これ!これじゃなくで、杖がほしいの!」

「その高慢さが命取りだぜ、お嬢さん?」

と、不良は指をちっちっちする。葛飾先生は、しゃがんだまま、後ろを全く見ていない。ハルスの体に巻きついた黒いものは、やがて少しずつ色が薄くなり、ハルスの中に溶け込んでいくのが分かった。

「ハルス!」

治が、立ち上がる。ハルスの、下を向いた顔を両手で持ちあげる。そして、その目を見て驚いた。今まてピンク色の髪の毛と共に彼女の象徴となっていた、ピンク色の目がどろんと黒みを帯びている。

「何か言え!」

「無駄だ。」

葛飾先生が、全てを知っているような、重い声で、しゃがんで後ろを見ないまま言った。

「じゃ、杖をあける。来い。」

一番前にいた不良が、勝ち誇った声で言った。ハルスは、黙って治の手を振り払ってそちらの方に行った。

「ち、ちょっと、ハルス・・・!」

しかし、ハルスは振り返ろうともしない。一番前の不良が、黒いサングラスと短い茶色が混ざっているリーゼントの頭で、ハルスに杖を差し出した。ハルスがそれを受け取ると、不良は言った。

「その少年を殺せ。」

少年とは、言うまでもなく治のことであった。ハルスは、だまって治に杖を向けた。

「ち、ちょっとまっ、ハルス・・・?」

治が、慌てたように言った。しかし、ハルスは何も言わない。

「はっはっは、すぐざま殺せよ。」

そこまて言って、ハルスは、やっと口を開いた。治は、期待さえしたが、それは呪文であった。

「イクスプロージョン!」

いつもの小さな爆発は嘘かのように、大きな爆発があった。その爆煙が欠ける頃、中心地に一人の少年が倒れていた。体操服がひどく煤に汚れている。真っ黒と言うわけではないが、肌色の部分は見当たらなかった。

「それじゃ、来いよ。」

ハルスは、黙って不良のそれに従う。

「ち、ちょっと・・・」

かおるが立ち上がろうとするが、言う元気もない。

 足音がなくなってから、葛飾先生は、やっと立ちあがった。

「ち、ちょっと、生徒が連れ去られたんですよ!」

葛飾先生は、重い顔をしている。剣幕というわけではなく、強く反省している顔をしていた。

「なかったことにしなさい。校長先生の反応を見る。」

「は、はい・・・。」

かおるは、そう言った。そして、続ける。

「さっきの黒いものはなんですか?」

「・・・・・・それには、まず私の過去を話さなければいけないな・・・。」

葛飾先生は、いつもの葛飾先生ではなかった。


「こっちだよ。」

「待てよ!」

 二人の高校生が、おいかけっこをしているかのように走っている。前を走っているのは、さっきの不良集団で一番前にいた男。後ろを走っているのは、今の葛飾先生。二人は、高校生の制服をしていて、人通りの多い夜の街の中を走っていた。やがて、人は少しずつ減っていく。気が付いたら、裏道にいた。ここは、袋小路の裏道の奥らしい。そして、壁にもたれて、10人くらいの高校生がいる。リーゼントをしている人がいれば、たばこをすっている人もいる。座っている人もいる。

「あ、はい、」

と、今の葛飾先生は言う。

「お前か。新入りの申し込みは。」

「はい。」

「強く!」

「はい!」

「そうか。もうすでに会議は済んでいる。合格だ。」

「ありがとうございます!」

「お前は、今から我らが『あさきゆめみしグループ』の一員だ。」

「はい!」

「それでは、これから、このグループに所属している人たちの機密を教える。知らない人はいないと言う位大切な機密ではあるが、外に漏れては大変だ。忠誠を払って、聞いてくれるな?」

「はい!」

「それでは、・・・そこの人、壷!」

一番奥の真ん中にいたボスらしい人が、近くの人から壷を受け取ると、言った。

「この壷の中にはな、何が入っていると思うか?」

「お金ですね。」

「ばかもん!おはいらん!金と言え!それに、違う。」

「それでは、何でしょうか。」

「この中にはな、人を操る生命体が入っている。」

「そ、それは・・・」

「人にとり憑いたら最後、何でも俺の言いなりになってもらえる。死ねと言えば死んでもらえる。今まて逆らった人は誰一人いない。この壷を見せられたからには、お前にも忠誠を尽くしてほしいんだかね。」

「は、はい!」

昔の葛飾先生は、少し怯えきわまった声で言った。

「いいか、これは使い捨てではなく、何度でも使える。出して、入れて、出して、入れて、の繰り返した。」

「はい!」

 その壷を見せられた日から、葛飾先生はグループを脱退した。そして、あのような嘘をついてまて自分に従わすような人を作らないため、自分がそういった子供を作ってやると誓った。

 しかし、不良グループに入る前に発揮していた独特の剣幕などは、名残として教師になってからも残った。


「ちょっと!もともと先生が悪いでしょう!責任を取ってください!」

「たった一日の入部だけでそこまて言わなくてもいいだろ!」

 治が、立ち上がって言う。

「治君、死んだはずじゃ?」

目の前で見た光景と反射した治を見て、かおるは言った。

「死んだふり。あの爆発、いつもよりすこしやわらかかった・・・。」

「えっ!?いつもより大きいのに!」

「きっと、魔法のかける位置を間違って上にそびれたんだと思う。」

治は、そう解釈する。かおるも、そりゃそうよね、と納得する。そして、先生の方を向いて、言った。

「校長先生にも、それ、話してください。」

「濁点を気にしないて読んだら結構面白かった」という意見を頂き、すごく元気がつきました。

というわけで、これからもよろしくお願いします。

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門前
居候をリメイクして新しく書き直した小説です。
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