2nd day Ⅲ
さっきの表情も気になるし……黒石の奴、何を吹き込ん…
「彰、おい彰!」
「!?」
竜華の声に気づいた俺の正面に電信柱があった。
「あぶね!?」
とっさに避け、直撃を待逃れた。
「全く、しっかり前を見て歩かないからそうなるんだ」
竜華に呼ばれてなけりゃぶつかってたな。
「サンキューな、竜華」
「なにか考えごとか?」
「あぁ、さっきの雀耶さん、黒石と何話してたんだろうなって」
「黒石か……また何かよからぬことを考えていなければ良いのだが……」
黒石のサプライズ。サプライズ故に、好まない人もたくさんいる。
大半が先生。D組のクラスメイト達は基本楽しんでいるが、反対派もごく一部、竜華はその筆頭と言っていい……
「でもきっと雀耶さんの歓迎会とかじゃないか? 竜華もそれなら協力するだろ?」
「むっ、それならば……しかしだな……だが雀耶の歓迎会ならば……むむ……」
ただ竜華はその内容によっては協力してくれる。半、反サプライズ派と言った方が良いかもな。
「もし動員要請があったら声かけるか?」
「っ……こ、この話は終わりだ! そもそもサプライズをする相手にそれを伝えてはダメだろう!」
そういえばそうだな。
「じゃあ、あの会話は何だと思うよ」
「今の時期を考えると……進学の話とかではないか?」
「……」
進学……
「彰?」
「……なぁ、竜華は高校卒業したらどうするんだ?」
「私か? 第一志望は進学だ。後を継ぐために必要な事を学ばなくてはな」
竜華の実家は中華料理屋だ。子供の頃は俺もよく行っていた。
「調理師免許も必要だが、店を経営するとなれば経理の能力もいる。それらを学べる大学をすでに調査済みだ」
そうか、竜華ももう、先を決めてるんだな……
「そういう彰はどうなんだ」
「俺か? 俺は……」
まだ、決めてない。これはしたくない。というのもなければ、これがしたいというものもない。
このままなら、卒業と同時にアルバイターになる。バイトはしてるからニートにはギリギリならない。
「まさか、まだ決めてないのか?」
「……」
俺の無言で竜華は理解したらしい。
「彰、余計な世話かもしれないが、この時期に決めていないのはマズくないか? せめて進学を…」
「別に良いだろ、竜華に迷惑かけてねぇし」
つい、怒気の隠った声が出てしまった。
「うっ……」
急に俺が怒ったように見えたからか、竜華はたじろいだ。
「……悪い、また明日な」
空気が悪くなりすぎた。俺は竜華に謝りつつ、その場から逃げたい一心で走り出した。
「あ、彰!!」
後ろから竜華の声がしたが、止まることなく、俺は寮まで走り続けた。
「マズったかな……」
寮の自室、息切れながらも入った俺はそのままベッドに飛び込んだ。
竜華の言葉は正論だ、何も間違っていない。だが、そういう正論を述べられてしまうとついイラッとしてしまうという人の性だとかなんとか……
「……ダメだ、考えるほど罪悪感が……」
明日、竜華にもう一度ちゃんと謝ろう。謝る。として、他の事を考えよう。
朝、雀耶さんと出会って一緒に登校した。
実は記憶喪失だという凄いカミングアウトをされたが、それは仲良くなれたってことだよな。
本日の紀虎対竜華は、竜華に軍配が上がった。
その時にふと最初の勝負を思い出し、その頃から紀虎とはお互い名前呼びになってた。
昼休みには、玄平を昼食に誘ったらあっさりと承諾した。
声水には困らされたが、そのおかげで玄平の笑みというのを始めて見た。
そして、放課後には竜華と……
……結局、ここい至るのか。
明日、必ず謝る。とりあえずこれだ。
だが、先も考えなくちゃいけないよな……
「……昔は、何を考えてたんだろうな」
小学校や中学校の卒業アルバムには、将来の夢というのを書いた覚えがある。
内容は覚えてないが。少なくとも、その時の俺がなりたかった職業が書かれている筈だ。
今度、家に帰った時に見てみよう。
そう、もう少ししたら、秋休みだから……
2nd day fin →
二日目が終了しました。
そろそろ、主人公の動く理由が分かってくるようになってきました、彼を中心に起動し始める『秋』。
そこに関わり、起動の最終スイッチを押すのは――――――
それでは、