fall days
―――誰かの声が、聞こえる。
「紫、少しいいですか?」
「ん? どうかしたの、狼」
紫との灰中の2人だ。なんか珍しい組み合わせな気がするが、確か、2人は付き合ってるんだよな?
「紫、進路は決めましたか?」
「う……い、いや、まだなんだ」
「あまり遅いと、先生に呼び出されます。去年部活の先輩がそうでした」
「それは困るな……でも今すぐに決められるものでもないし」
「あえて呼び出されてから決めるっていうのも、手の一つかもね」
「それでいいのですか?」
「……いや、あまり良くないかな。そうして時間を使ってしまうのは」
「分かっているのでしたら、自分で決めてください」
「そうだね、そうするよ」
「ワタシはすでに決めています。分野が同じなら、勧めていたんですが」
「大丈夫だよ。お互い得意分野が違うのは元々のことだから、選ぶ大学も違って当たり前だ」
「……どうせなら、離れ離れにはなりたくないのですけどね」
「え? ごめん、聞き取れなかったんだけど」
「なんでもありません。気になさらず、進路を決めてください」
「うん……?」
この2人も、進路の話をしてる。
今までの声もそうだったが、もしかして、そういうことなのか?
―――誰かの声が、聞こえる。
「ねーねー、ハルくん」
「どうした?」
山吹と陽斗だ。この2人も、もしかしたら。
「ハルくん、進路決めた?」
「一応、ただ少し成績が追いついてなくってな」
「そこ受けるの?」
「おう、だからこれから猛勉強しないと」
「そうなんだ~、頑張ってね」
「そういうナツはどうなんだよ」
「わたしも決めたよ。ここなんだけど」
「ふーん……え、こんな良い所あったのか」
「知らなかったの?」
「見つけた一か所でずっと狙い付けてたからな。そこなら今のままでも行けそうだな……」
「じゃあ一緒に受けようよ!」
「うーん……でもなー、知り合いと一緒だから良いってことでもないんだよなー」
「え~、せっかく見つけたのに~」
「え? 見つけた?」
「うん。せっかくならハルくんと同じ大学行きたいな~って、思ってたもん。だからハルくんがやりたいことが出来る大学探したんだ~」
「マジか……サンキューな」
「どう致しまして~」
あの2人、大学も同じところに行くみたいだな。頑張ってもらいたい。
「しかし、アイツはどうするんだろうな、進路」
「アイツって?」
―――2人の声が、まだ聞こえてくる。
「彰だよ。アイツまだ何も決めてないだろ」
「あ~、そういえば」
「彰にも進路先を少しでも考えさせてくれる奴がいれば、良いんだろうな」
「例えば~…」
……そうか。
やっぱり、そういうことなんだな。
分かったぞ。
最後の鍵を、持つ一人が。
それは……