epilogue~re start~last key
ふと、最近の出来事を思い返してみる。
一日目。雀耶さんが転校してきて、話を聞いた。
二日目。体育の時間、休憩時に隣に並んできた紀虎の話を聞いた。
三日目。授業前に配当係として玄平と共に動き、話を聞いた。
昼休み。竜華の弁当を食べて、その美味しさと共に話を聞いた。
そして今、放課後―――
―――今がずっと、続けば良いな
―――今という、『秋』の時間が
「……」
全てを、思い出した。
暑すぎず寒すぎない。それもだけど冬になれば俺達3年生は受験生としてそれぞれの道へ完全に進み始める。
受験の準備や公休などで全員が集まる時は少なくなり、それが終われば卒業式の練習……つまり卒業式がある。
それは高校生活の終わりで、それは皆とのお別れだ。
今みたいな事が終わる
今みたいな事はもう出来ない
今みたいな秋は、もう、来ない
―――あぁ、そっか
「今がずっと、続けばいいな」
確かに俺はそう言った。
それでこの後に、
「その願い、ちゃんと聞いたぜ」
前から声がして、
「今がいい、今が続けばいい、今とはイコールこの季節。『秋』」
聞き覚えのある声の主が向こうから歩いてきた。
「黒石」
「よっす、どれくらいぶりだろうな」
「多分、玄平の時だな」
それ以外では会っていないと思う。
「で、どうだった?」
「どうだったって聞かれてもな、そもそもこれは何なんだ?」
「コレだよ」
黒石は一冊のノートを見せた。それは先日書いていた小さなノートで、雀耶さんの歓迎会だと思ってたやつだ。
黒石はポケットからペンを取り出した。
いつもサプライズを開始する時はアレを出して、宣言する。
「黒石 曜、おそらく今年最大にして最後のビックサプライズ! 題名は、fall〜coda〜autumn」
「それを終わらせるには、鍵を5つ集めるといい」
すでに聞いていたその後の言葉を、俺は先に言った。
「教えてくれ黒石、最後の鍵はいったい誰が持ってるんだ?」
「ありゃ、まだ分かってないのかよ。せっかく仕掛けを変えて分かりやすいように組み替えたのに……これじゃもたないな」
「もたない?」
「この世界を維持し続けるには、どうも未来への期待と影響力を持つ人が多すぎる。物語の進行上ここでずっと秋を続けているわけにはいかない奴が沢山いたんだ。本当、あの学校は面白いよ」
言っていることはよく分からないが、つまり、この秋は俺が最後の鍵を手に入れるまで続くとは限らないということだろうか。
「黒石、まさかお前が最後の鍵の持ち主、ってことはないよな?」
「いいや。俺が持ってるのは鍵じゃない。俺のは鍵穴、鍵を使う物だ」
「じゃあ……」
最期の鍵は、誰が持ってるんだよ……
などと考えていると、黒石はやれやれとため息をついた。
「まさか彰がここまでだったとはな……なら仕方ない、ラストチャンスをやる」
黒石はペンでノートに何か書きだした。そこに書かれたのは、例えるなら魔方陣と呼ぶべき形。
書き終えた途端、魔方陣が輝きだした。
「先に言っておくけど。これでダメなら諦めてもらうしかない、これ以上は全てにおいて足りずこの世界は終わりへと進む。ちゃんとしたエンディングに向かいたいなら、ここで最後の鍵を見つけてくれ」
「あぁ、分かった」
「ま、そんなに心配はしてないから安心してくれ。99.9%見つけるような仕掛けだから」
魔方陣の光が増して、黒石の姿が次第に見えなくたっていき……
「他の奴にはこっちから言っておく、だから彰は、必ず見つけてこい」
目の前が光一色になると、足元が無くなったように、真下へと落ちて―――
いよいよ、終わりが見えました