3rd day 〇
隣の席を借りていつもの四人組を作る。
さて、昼飯の準備だ。
「今日は誰が行く? やっぱりジャンケンか?」
昼は毎回ジャンケンで負けた2人が購買まで買いに行く。たまに賭けと称して別の方法を取ることもある。
「いや、今日それはいいんだ」
しかし、竜華が訂正した。
「え? どういうことだよ竜華」
「あぁ、実はな……」
用意していたんだろう、席の下から包み袋を取り出して机の上に置いて、言った。
「……お弁当を作ってきたんだ。さぁ皆、遠慮せずに食べてくれ」
包みが解かれ、その中身がさらされた。
竜華の実家は中華料理屋をしている。俺も昔から何度も行っているが、店主である竜華の親父さんが作る料理はどれも旨い。竜華のお袋さんもそれにひけを取らない腕前、だった。
だが、その2人の血を引いた竜華の料理は……何をどうしたらそうなるのかと言いたいくらいに美味くなかった。
美味くないのも問題だが、更に言えば、見た目だけは良いという方が問題だ。
その姿に騙され、過去何度口にした事か……今思い出すのも嫌になる。
そんな品物が今、俺達の前には並んでいるのだ。
『……』
俺、陽斗、山吹は互いに顔を見合わせる。3人共その威力を知っている以上、出来れば手を出したくない。何とかして、ごまかす方法を…
いや、そんなの必要ない
俺は弁当箱の中からおにぎりを一つ手に取った。
「竜華、サンキューな」
「あぁ」
「いただきます!」
決意を固め、俺はおにぎりを一口で―――
「……うん、うまい」
まさかそんな言葉は想定していなかったんだろう、陽斗と山吹が目を丸くして恐る恐る弁当に手を伸ばした。一口食べると、
「!? 本当だ、普通にウマい……」
「おいしい! おいしいよりゅーちゃん!」
2人も竜華の料理を絶賛した。
あんなに美味しくなかったはずの竜華の料理が、こうも美味しくなるなんて、いったい何が起こったのか。
いや、何が起こったのか、知っているような……
「どうやら皆、順調に進んでいるようだな」
竜華が何か呟いた。陽斗と山吹は弁当に夢中のため、俺は聞き返した。
「どういう意味だ?」
「分かるだろう」
分かると言われても、さっぱり……
でも、ないような……
「彰、私は秋休みになったら家へと帰る。その時彰を共に誘って一緒に帰郷するんだ。そこで店の手伝いをしつつ、私は父さんに料理を習う。次第に腕を磨いていたある日、彰と父さんが私に何かを秘密にしていることに気づいてしまうんだ。私が問いただしても彰は答えず、その日まで秘密は秘密のままなのだが……それは、私の為も思ってのものだった。だから私も、彰に隠していた秘密を明かすことになるんだ」
どうしてだろう、竜華の言葉を、その内容を、俺はよく知っている。
「その後はまだ、私も分からない。そこからは、一つの選択肢を選んだ後に見えてくる」
何か、思い出せそうで、まだ思い出せない。
「それでもしも彰が選択肢を選ぶことになった場合。その時は自らの決定に従えばいい、それで偶然私と同じ道になったなら……その時は、まだ彰が秘密にしていることを、教えてもらうからな」
思い出すのに、必要な鍵が……まだ、足りていない。