Fall VacationⅠ
始まったのは、選択肢の一つだった『 』
「明日から秋休みだが、部活動は普通にあるから間違えないようにな」
帰りのホームルーム、谷門先生の挨拶が終われば、秋休みだ。
クラス中皆、まだか早くしてくれと声に出さないが、思っている。
「よし、じゃあ終わりだ。秋休みにあまりハメを外すんじゃないぞ。日直、号令」
日直が速やかに全員を立たせ、礼をする。
その瞬間、秋休みになったクラスメイト達が一斉に騒ぎ出した。
待ちに待った休日に予定を立てる話を者、部活へと向かう者、何か予定があるのだろう教室を出ていく者とに別れている中、俺は、
「で、話ってのは何だ? 竜華」
前回の席替えで隣になった竜華に、昨日のメールについて訊ねることにした。
「あぁ、話というのはな…」
「竜華、緑葉くん」
雀耶さんがやって来た。
「一緒に帰りませんか?」
「……すまない雀耶、少し待っていてくれ。彰に話さないといけないことがあるんだ」
「それは、わたしが聞いていても良いんですか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「では、お話しが終わるまで待ってますね」
竜華の前、空いていた席に雀耶さんは腰かけた。
出鼻を挫かれた竜華は、ふぅ、と一息つくと、改めて俺を見る。
「話というのはだな、彰、秋休みに…」
「おーす、竜華か彰、いるかー?」
扉を力強く開け、紀虎が教室内に入ってきた。
席に座っている俺達を見つけ、近づいてくる。
「どっちも居たか、なら好都合。2人とも、秋休みはヒマか?」
「……す、すまないが紀虎、後にしてくれ。今、彰に言うべきことがあってな」
「ん? あーそうだったのか、ワリィ、じゃあ順番守るわ」
紀虎は雀耶さんの隣、俺の前の席に座った。
「……」
まさか2回も口を挟まれるとは思わなかった竜華は、一度深呼吸した。
しかし、2人を待たせるのほどの話って、いったい何を言うつもりなんだ?
「……よし」
気を引き締めたように、ただ真っ直ぐオレ絵を見た竜華は、
「彰。お前、私と共に…」
ピンポンパンポーン
校内放送が入った。
『生徒の呼び出しです。3年D組の玄平さん、この放送が聞こえていたら、至急、職員室へ来てください……繰り返します―――』
『……』
クラス内にいた生徒の視線(2人を除いて)は一点に集まった。
「……」
放送で呼ばれた玄平は、ゆっくりと席を立つと、教室を後にした。あのまま、職員室へ行くのだろう。
「何の呼び出しでしょうね?」
「悪事働くような奴には見えねぇから、進路関係とかじゃね?」
玄平の進路ね……アイツ、将来何になるんだか。
「……で、竜華、大丈夫か?」
「あ、あぁ……平気だ」
2度あることは3度あると言うが、放送が入ったら項垂れてしまった(だからさっき2人と言った)竜華がゆっくりと顔を上げる。
「何か厄日っぽいし、今日じゃなくていいなら…」
「いや、今、言わなくてはダメだ」
その目は本気だった。
3回ものバットタイミングがありながら、それでも竜華は、俺に伝えた。
「単刀直入に言う……彰、共に帰郷するぞ」
秋休みが始まり、進むべき道が見えてきたという感じです。
しかし、これはあくまでも一つの道、まだまだ話は続きますので、どうかご拝読を。
それでは、