5th day patternⅦ
〜席替え〜
朝、HRで教室に入ってきた谷門先生。
挨拶が終わり、教卓に荷物を置いた途端、
「席替えするぞ」
と言った。
その言葉に、もちろん皆はざわざわと騒がしくなる。
なんでそんな急に席替え? ではない。
やっぱり今週もあるんだ。の方でだ。
実のところ、このD組では毎週席替えが行われている。というのも、もう半年も経たないで卒業するこのクラスメイト達に、どうせなら色んな人と隣の席になればいい、という先生の気持ちで、週の終わりに席替えが行われるんだ。
「移動の準備が出来たのからくじを引け、一限に被らないよう早めにな」
教卓の下から毎週使われるくじの入った箱が取り出して置き、谷門先生は黒板に席と番号を適当に振っていった。
皆移動の準備を終え、先に引こうと思う山吹のような人は教卓の前に集まり 、後でのんびり引こうと思う陽斗のような人は集まって喋ったりと、大きく2つに分かれていた。
俺はどうするかな……
〇早く引く ☓中盤辺りで引く △最後の方で引く
〇……さっさと引いちまうか。
選択肢が多い方が何かと良いだろうし。
Select → 〇
最初に並び始めた列に入り、教卓の前へ。
順番が来て、箱の中に手を入れ、後ろのことを考えて素早く引く。
後ろの邪魔にならないところに移動してから、開いてみ見た。
番号は……
「26番」
黒板を見てどこの席か確認。番号は適当に振られているので、1番だからって一番前とは限らない。一番後ろの可能性もあるが……
「真ん中辺りか」
4列目の4番目。前の席から一つ前と左に動いた席だ。
するとその時、
「ん、彰も真ん中」
隣に並んだ竜華が、自分のくじを見ながら訊いてきた。
「そういう竜華はどこだ?」
「私は、17番だから……お?」
「あー、隣だな」
竜華の新たな席は、3列目の4番目。俺の右隣だった。
「……なんか、アレだな」
「あぁ、新鮮味ゼロだな」
小学校から同じクラスの竜華。席が隣になることなんて、珍しくもなんともない。
自分の席に戻って荷物を整え、席替え後の席に向かう。
その隣に、竜華も座る。
「まぁ、一週間。隣でよろしく、っつうことで」
「一週間か……途中、秋休みが入るから、ほとんどこうして並ぶことはないだろうが。そうだな、隣でよろしくだ」
かくして、俺と竜華は何度目かの席隣どうしになった。
~購買戦争~
昼休みの購買は……戦争だ。
昼飯を求める生徒たちが学年問わずに訪れ、集い、そして求める。
少し遅れれば波は去るが、そこに残るのは小物のみ。
波にのまれたくない者たちは、昼休みの前に買いに行くのだが、昼休みにならなければ手に入らない物もあるので、生徒たちはそれを求めて、今日もここに集うのだった……
「……って感じなら、少しは見方が変わるよな」
「変えてもあまり意味はないだろう。どちらにせよ、ここへ行く必要があるのだから」
「だよなー……」
という訳で、ジャンケンに負けた俺と竜華は、昼の購買へとやって来ていた。
「ま、それだったら少しは楽しめそうだけどな」
途中で紀虎と出会い、共に購買の前へ。すでに人だかりが出来ていた。
「とにかくだ、2人の分も含めて昼食を手に入れるぞ、私は奈津保の物、彰は藍田の分を頼むぞ」
「へーい」
とりあえず何かは買わないと昼食抜き。それは避けないといけない。
どっからどう攻めてみるか……
〇横から回り込む ☐正面突破で △少し状況を見る
〇……やっぱりいつも通りに、横から回り込むか。
一番入手率も高いし。
「そんじゃ行くか、竜華、彰、健闘を祈るぜ!」
紀虎の声を合図に、俺達は動き出した。
Select → 〇
「さて……」
やはり人の少ない横側に到着。
こっちは買い終えた生徒が出ていく道がある為、あちらへ進む人は必然的に少なくっている。
そこを上手く利用し、前へと進んでいく。そして、途中で本当の列に潜り込む。
言ってしまえば、堂々とした横入りなので、たまに失敗することもある。が、成功したときの入手率はかなりのもんだ。
ふむ、そろそろだな……
タイミングを見計らい、一瞬空いた隙間に跳びこむ。
すると、
「む、彰!」
「げ、竜華!」
偶然、竜華も同じ隙間を狙っていたらしく、同じタイミングで入ってきた。
ただ、2人も入れるほど空いてたわけではないので、そのまま飲み込まれてしまった。
「くっ、しまった」
「落ち着こう竜華、ゆっくり前の方へ行けばなんとかなる」
「あぁ、ここまで来てボウズは許されない。進むぞ、彰!」
「おぉ!」
……なんか、いつもと少し違くないか? 色々と。
ここ、一応購買だからな? いやまぁ、戦争に変わり無いけど。
「よし、突破したぞ!」
で、ゆっくりと、しかし確実に前へと進み、購買の最前線へと到着。
無事に、昼食を手にすることが出来たのだった。
……やっぱり、なんかやり過ぎ感があるよな?