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fall〜coda〜autumn  作者: 井能枝傘葉
37/65

5th day patternⅥ

~購買戦争~


昼休みの購買は……戦争だ。

昼飯を求める生徒たちが学年問わずに訪れ、集い、そして求める。

少し遅れれば波は去るが、そこに残るのは小物のみ。

波にのまれたくない者たちは、昼休みの前に買いに行くのだが、昼休みにならなければ手に入らない物もあるので、生徒たちはそれを求めて、今日もここに集うのだった……

「……って感じなら、少しは見方が変わるよな」

「変えてもあまり意味はないだろう。どちらにせよ、ここへ行く必要があるのだから」

「だよなー……」

という訳で、ジャンケンに負けた俺と竜華は、昼の購買へとやって来ていた。

「ま、それだったら少しは楽しめそうだけどな」

途中で紀虎と出会い、共に購買の前へ。すでに人だかりが出来ていた。

「とにかくだ、2人の分も含めて昼食を手に入れるぞ、私は奈津保の物、彰は藍田の分を頼むぞ」

「へーい」

とりあえず何かは買わないと昼食抜き。それは避けないといけない。


どっからどう攻めてみるか……




   〇横から回り込む  ☐正面突破で  △少し状況を見る




△……正面はムズカシイだろうし、横から回り込むのも、失敗したらマズイ。

少し、状況を見てみるか……





Select → △






「マズったかな……」

状況を見て見てみようと、2人が進んだ後も立ち止まっていたらさらに人が増えてきた。

正面はもうムリだし、横に回ろうにも人が多すぎて不可能に近い。

このままじゃ、昼飯が……

「……ん?」

ふと気付くと、俺の横を誰かが通り過ぎて行った。

「……」

あれは……玄平? へぇ、アイツも購買来るのか。

だが目の前には人だかり。入る間などほとんど無い中に、玄平は進んでいく。

「……」

そのほんの僅かな隙間に、玄平は身を滑らせていった。

「おぉ……」

その光景に驚きつつ、後をつけてみる。

するすると、人と人の間に出来た隙間を伝って前へ前へと進んでいく。それを追う俺も少しずつ前へ、けど玄平みたいには行かず。生徒とぶつかる。

でもなんとか、購買会計前に辿り着いた。

まさかあんな回避移動術があったなんてな……けどこれで、昼飯が手に入るぞ。

よし、さっそく…………あ、待てよ。

購買ってことは、買う際に声を出す。こんな場所で声水を飲めるわけはない。

つまり、玄平の声が……

「……」

「はい、ちょっと待っててね」

玄平が購買の人に何かを渡すと、交換に白い袋に入ったパンのセットを渡されていた。

あれは、予約チケット。買ったけど持ってられないので購買に預けておく際の引きかけ券……

うわぁ、そう来たか。

と、そんな結果を見ている場合じゃないな。

「サンキューな、玄平」

一応お礼を言ってから、俺は昼飯を求めて動き出した。

「……?」







~放課後の教室から~


今、5限の授業が終わり、放課後となった。

それと同時、雀耶さんが声をかけてきた。

「竜華達と寄り道して行こうということになったのですが、緑葉くんも一緒に行きませんか?」

「おぉ、それはぜひ」

このまま帰っても暇なだけだったし。断る理由が無い。

他のメンバーを訊いてみると、竜華、陽斗、山吹と、なんやかんやいつものメンバーに、雀耶さんが入ったものだった。

もちろん行く。と答えてから先に集まっていた竜華達と合流する。

その時、

「……」

1人、教室を出て行こうとした生徒を見つけて、

「おーい、玄平」

気付いたら、呼び止めていた。

あれ……? 俺、何で玄平を呼び止めて。

しかも、誘おうとしてるんだ?

「お、おい、彰?」

案の定、陽斗が行動の意味を訊いてくる。

「あ……すまん、つい、あん時のノリで」

何日か前の昼休みも、玄平を誘って一緒に昼飯を食べた。

わりと簡単に乗ってくる玄平だ。予定がなければ絶対付いてくるぞ。

「いやまぁ、今更仕方ねぇよ。ここでキョヒんのも悪いし、行けたら6人で行こうぜ」

などと話してる間に、山吹が玄平に話をつけ、

「おっけーだって~」

6人が行くことになった。




あの玄平だから、付いて来ても基本喋らずにいる。

と、思っていたのは間違いだと知った。


ゲームセンターに行くと、

『いよっし! オレの勝ち!』

「うおっ! オレの声に負けたからなんか複雑だ!?」

陽斗の声で陽斗に華格ゲーに勝利。


本屋へ行くと、

「やっぱジョウハイ読者としては発売日に手に入れないとな」

『だな。つうか朱井さんも読者だったんだな』

「はい、面白いですよね『常敗ピンチヒッター』新刊が出ると聞いてわくわくしていました」

来ていた紀虎と、紀虎の声で雀耶さんと3人で『常敗ピンチヒッター』の話で盛り上がった。


駅前の雑貨屋に入れば、

「見て見てりゅーちゃん! コレ可愛いよ!」

「ふむ、確かに…」

『ねぇねぇりゅーちゃん! コッチはどうかな?』

「む……うん、そっちもカワイイ…」

「コレも良くない?」

『コッチも可愛いよね!?』

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 一人ずつで頼む!」

山吹の声で山吹と共に竜華を焦らせていた。




とまぁこんな感じで、普通に遊んで楽しめる玄平。

そんな奴がなんで、友達がいなくていつも1人で、


そして、声水で声なんで変えてるんだろうか……?

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