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fall〜coda〜autumn  作者: 井能枝傘葉
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Autumn Holiday Ⅳ

秋休み2日目、俺は竜華へと電話した。

「今日、陸上部休みだってさ」

『だろうな、こちらの方も朝からこの調子だ。屋外で活動は出来ないだろう』

今日は朝から雨が降り、空は灰色。地面は走るのにてきさない状態だった。

『分かった。雀耶からは私から伝えておこう』

「あぁ、頼むぜ」

通話を切った。

「さて、どうするかな……」

屋外部活には向いてないが、外を歩けないほどではない。

なので俺は。傘をさして寮の外へと出た。

その時、

「ん?」

バシャバシャと、誰か雨に濡れた地面を走る音が聞こえた。その音は左方向から聞こえ、だんだんと近づいてくる。その方向をよく見てみると、

「……紀虎?」

「お? おー、彰か」

レインコートに身を包んだ紀虎だった。

「出かけるのか? こんな天気に」

「こっちのセリフだ。この雨の中まで練習かよ」

「そりゃあ部活休みなっちまったからな。自分で動くしかねぇじゃん」

それはそうだが……

「無茶はするなよ? イベントが控えてるだろ」

「おぅ、サンキュー。じゃあな」

紀虎はそのまま走って行ってしまった。

「……」

わざわざこんな雨の中まで練習なんて、そこまでしないと灰中には勝てないのか?

2人の勝負って、聞いたことないからな……







秋休み3日目。昨日の雨は止み、空も快晴。まだ地面にぬかるみは残るが、陸上部は部活動を行っていた。

その一方で、俺達は、

「これ、別に昨日でも出来たよな?」

「屋内で行っている限りな」

マネージャーとセット組み立ての二組に分かれ、俺と竜華はセットの組み立てを空き教室で行っていた。

「しかし、これで何をするというんだ」

「学年対抗の三本勝負だとよ」

高跳び、幅跳び、そして2人一組で走る200M走。この3つの競技で学年毎のランキングをつける。それがこのイベントの内容だ。

要はその一年の練習の成果を全員で競うというだけのもの。にも関わらず。こうしてセットを組み立てたり、今向こうで『第十三回』とか書かれている看板まで作ったりと豪勢にやる一方、陸上部外には漏らさないという、謎の多いイベントだ。

「というか、今まで13回もやってたんだな」

「その13年前に、何があったのか気になるな」

話ながらも手は止めずに作業を続ける。周りでも同じように一~三年生計10人で行っていた。

今日から来た雀耶さんや中紫等は外でマネージャーをしている。どっちが楽かと言えば、まぁあっちだろう。

それを示すかのように、こちらには体力のありそうな男子が多くいた、

「みゃーこ、ちょっとそっち持ってー」

「ん……こう?」

「おっけおっけ、いくよー」

陽花や七ヶ橋、竜華といった例外はいるけど。

あ、そういえば、

「なぁ竜華」

もしかしたら竜華なら知ってるかもしれない。

「灰中って知ってるか?」

「灰中……あぁ、A組のか」

あれ? この反応は、

「紀虎とその灰中がな、陸上部内でライバル同士なんだって」

「ほぉ」

「それで……知る訳ないか」

「2人の勝負についてなら、残念ながら知らない。紀虎からも灰中の名は聞いたことがないな」

「そうか……」

見たことないにしろ、紀虎から聞いてないかと思ってたんだけどな。

「だが、実力があるのは知っている。A組とは体育の授業で合同だからな。まぁ普段は紀虎が突き掛かってくるのであまり見えないのだが、能力で言えば私や紀虎と同等だろう」

へー。でもそれだけじゃ2人の勝負は分からな―――

「教えてあげようか?」

急に聞こえた声は、竜華の隣から聞こえた。

「押川か」

「そう、この陸上部副部長にして、学校非公認委員会、情報委員の委員長! 押川季々子がね!」

押川は、山吹に似た性格の持ち主だ。

「でもその前に…」

押川は室内にいる生徒全員に聞こえるように大声で言った。

「みんなおつかれ~! 部室前に飲み物用意してるから休憩してね~!」

その声に生徒達は手を止め、数人が教室を出て行った。

「さて、それじゃ教えるね」

そして、押川が教えてくれた情報を俺と竜華、それと押川の友達で教室に残っていた陽花、七ヶ橋とで聞いた。







紀虎と灰中の実力はほぼ互角の横一線。一年、二年時のイベントでも。同率順位で決着はついていないとか。

しかし、三年生になってから変化は起こった。



ある時を境に、少しずつ、灰中の勝率が上がってきたらしい。

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