5th day patternⅢ
~授業(美術)~
授業の中には、2時間続けて2クラス合同で行うものがいくつかある。
今日もそのうちの一つ、美術があった。
「今日の内容はデッサンだ」
美術の教師にしてB組の担任でもある石榴先生が今日の内容を伝えた。
「2人一組になって互いを書きあえ、提出は今日の終了までだ。始めろ」
先生の合図で2クラス、B組とD組の生徒達はがやがやとペアを探し始めた。
「りゅーちゃん、一緒に組もうよ~」
「あぁ、いいぞ」
竜華は山吹と組んだか。
俺も誰かと……
……と、ふと数人の姿が目に入った。
何故か分からないが、その中から選べと言われているような気がした。
誰に? というか、何の目的で?
まぁ別にいいけど……必ずOKしてくれるとも限らないわけだし、声をかけるだけかけてみるか……
☓雀耶さん ☐紀虎 △玄平
☐……「デッサンかー……メンドクセーな。でも、とりあえず誰かと組む…」
「おーい紀虎、一緒に組…」
「おー彰、ちょうどいいや、組もうぜ」
決定早っ!?
Select → ☐
とくに何もなく、俺と紀虎は二人組になってデッサンを開始した。
「そういや彰、さっきアタシに声かけようとしてたよな?」
「結果としてそっちから誘われたけどな」
「どういう風の吹き回しだ? 普通なら藍田辺りと組むだろ?」
「あー……」
なんでだろうな?
さっきは何故か3人に目がいった……誰かに導かれるように。他の選択肢もあった筈なのだが、決められた3人しか選択出来ないような……そんな感覚。
いつからか……考えてみれば昨日の朝……いや、一昨日だ。何か忘れているような気がしてならない。
俺はいったい……何を忘れているんだ?
「おーい彰、悩むなら体制を変えずにしてくれー。描けねぇから」
「!?」
しまった。知らない内に動いていたらしい。
「わ、悪い……」
「はー、にしても、人の顔って描きにくいのな」
「紀虎、こういうの苦手だもんな」
一年生の時も同じクラスだったし、二、三年生も合同だったのでよく知っている。紀虎は典型的な体育会系なので、美術とか音楽の時は静かだ。
「デッサンっていうと、そっくりな必要があるからなー。せめて、イラスト風ならまだ楽なのに」
「あの、常敗ピンチヒッター、というのとかか?」
そう呟いた瞬間、カチリ、と何かのスイッチが入ったような音を聞いた。
「おぉ! ついに彰もジョウハイの面白さに気づいたか!」
目をキラキラさせた紀虎が顔を近づけて訊いてきた。
「え、あ、いや、別に……」
さっきのスイッチ音はこれか……
「ジョウハイの楽しさはな、 いつも同じ結末と分かっていながらも。読者を騙すところにあってだな…」
あぁ……語り始めてしまった……
結局、石榴先生が注意しに来るまで、紀虎はジョウハイを語り続けた。
~購買戦争~
昼休みの購買は……戦争だ。
昼飯を求める生徒たちが学年問わずに訪れ、集い、そして求める。
少し遅れれば波は去るが、そこに残るのは小物のみ。
波にのまれたくない者たちは、昼休みの前に買いに行くのだが、昼休みにならなければ手に入らない物もあるので、生徒たちはそれを求めて、今日もここに集うのだった……
「……って感じなら、少しは見方が変わるよな」
「変えてもあまり意味はないだろう。どちらにせよ、ここへ行く必要があるのだから」
「だよなー……」
という訳で、ジャンケンに負けた俺と竜華は、昼の購買へとやって来ていた。
「ま、それだったら少しは楽しめそうだけどな」
途中で紀虎と出会い、共に購買の前へ。すでに人だかりが出来ていた。
「とにかくだ、2人の分も含めて昼食を手に入れるぞ、私は奈津保の物、彰は藍田の分を頼むぞ」
「へーい」
とりあえず何かは買わないと昼食抜き。それは避けないといけない。
どっからどう攻めてみるか……
〇横から回り込む ☐正面突破で △少し状況を見る
☐……ぱっと見で、正面に人が少ない気がするな。
ここは、正面から突撃してみるか。
「そんじゃ行くか、竜華、彰、健闘を祈るぜ!」
紀虎の声を合図に、俺達は動き出した。
Select → ☐
予想に反して、正面には生徒が集まっていた。
「マズったな……」
さっきから一向に前へ進めない。場合によってはこれ、何も買えないかも……
「お、彰、お前も正面突破か?」
隣に紀虎が現れた。どうやらこちらも正面突破を選んだらしい。
「そっちも苦戦してるみたいだな」
「苦戦? 何言ってんだよ彰」
紀虎はニヤリと笑った。
「舐めてもらっちゃ困るな。アタシはここから、本気を出すんだよ」
生徒の塊の中、両足のアキレス腱を伸ばすと、
「行くぜ!」
前へ走り出した。
生徒と生徒、そこに空いたわずかな隙間へ体制を低くして突撃する。
ぶつかって驚いた生徒達が驚いて、隙間が大きくなったところを抜けて前へ、前へと進んでいく。
その無理やりな方法に眉をひそめる生徒もいたが、紀虎は我関せずに突撃を続け、
「いよしっ! 到着したぜ!」
購買の前の方に到着した。
「スゲェな……かなり無理やりだったけど」
「おぉ!? 彰、お前いつの間に!?」
「ずっと後ろに付いてただけだが?」
あんな好機をみすみす逃す必要がないだろう。何人かには嫌な顔されたけど。そこは紀虎を見習って我関せず。
「ちょっとズルくねぇ?」
「策士と呼んでくれ」
「策士ズルくねぇ?」
混ぜやがった……
「まぁいいや。何か一個おごってくれれば許してやる」
「へーへー、飲み物でいいか?」
紀虎に助けられてここまで来れたしな。一個くらいなら安いものだ。
「オッケ、じゃあさっさと買おうぜ」
5日目の始まり、それと同時に、緑葉が疑問を抱き始めました。
これから先、選ぶのはいったいどういう道なのでしょうか……
それでは、