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fall〜coda〜autumn  作者: 井能枝傘葉
23/65

4th day patternⅢ

開始した、秋の物語。

若干変わった文章の書き方をしていますが、どうぞお楽しみください。

〜HR前〜


教室に入り、鞄を机の上に置いたところで、

「緑葉、先生が配当係探してたぜ」

とクラスメイトに言われて、職員室へと向かった。

そういえば、D組もう一人の配当係である玄平がいなかったけど、もう行ってるのか?

と思ったその時、

「やっぱジョウハイは面白ぇよな」

前から紀虎の声が聞こえた。誰かと話しているようだが、

『おー、あのやっぱりか! って感じが良いよな』

会話に応えた声もまた、紀虎の声だった。

……コレ、知らない人が聞いたらただの一人会話の寂しい奴に聞こえるが。知ってるから違うと分かった。前から会話をする2人がやって来る。

「よっす、2人共」

「ん? おぉ、彰、よっす」

先に気付いた紀虎が声をかけ、

『おぉ、彰、よっす』

続いて、紀虎の声に変わった玄平が声をかけてきた。2人共に手には紙の束を持っている。

「え、もしかして紀虎が手伝ってくれてるのか?」

「いや? アタシも配当係で、玄平とはそこで会っただけだぞ」

よく見れば2人が持っている資料は違う教科のものだ。

「B組のもう一人は?」

「分かんね、まだ学校来てねぇのかもな」

ふむ……改めて、2人の持つ物を見る。

紀虎の持つのはノート。多分クラス全員分で、普通に2人で運ぶ量だ。

一方玄平はプリント。量はあるがノートほどかさ張ってはいないし、ここまで1人でも良さそうだ。

けどそう考えたら紀虎の方も1人で運んでるしな。


紀虎を手伝うか、平気と思って自分のクラスを手伝うか……


  □紀虎を手伝う   △自分のクラスを手伝う




□……「玄平、悪いけどそれ持って行ってくれ。俺は紀虎を手伝うからさ」

『お? おーオッケオッケ、まかせとけ』

言葉と共に、紀虎声の玄平はこくりと頷いた。





Select → □






「いやぁ~、ワリぃな彰」

「気にすんなよ、こっちの方が重そうだったから」

B組の教室へ、ノートを持って紀虎と並んで歩いていく。

「そういや、1年の時も紀虎と一緒に配当係してたよな」

「あー、そういやそうだな」

1年生の時は、紀虎と同じクラスだった。竜華も一緒で、毎日のように勝負していた。

だが、学年が上がり、クラスが分かれたことでその数は減少したんだよな。まぁ、今でもたまにやってるけど。

「ぜってぇ先生達、アタシ等の勝負見てクラス分けたよな」

「だろうな」

勝負も、ものによっては他人の迷惑になるものとかがあった。数日前も、竜華が先生に怒られていたし。体育でする分には良いだろうと、体育で合同になるB組とD組に分けたんだろうな。

「あーぁ、どうせなら竜華達と同じクラスで卒業式むかえたかったぜ。いや今のクラスも楽しいけどよ、何年か経っての同窓会とかクラスで集まったら竜華達に会えねぇじゃん」

「ははは、それ竜華が訊いたら喜ぶだろうぜ」

いや、それ以上に照れるか?

「何言ってんだよ、彰も一緒だぜ?」

「え?」

俺も一緒?

「どうした?」

「いや、別に……」

そういえば、竜華達って言ってたか。

実際には関わってないけど、勝負の中には俺も入ってるって訳だな。







〜授業(体育)〜


本日の体育の授業は、年に一度のお楽しみ……もとい、苦しみ。

男女混合のマラソン大会だった。

コースは校外へ出て寮の方へ向かい、女子寮前にセットされた折り返し地点でUターンして戻ってくるというもの。詳しい距離は分からないが、ノルマは授業時間内に最低女子は5周、男子は7周だ。

秋頃で寒いのに加えてかなりの距離、やる気になってやる人の方が圧倒的に少ないだろう。

「はぁ……」

現に俺もそんな一人だ。

授業が始まって約半分が過ぎ、現在4周目。もうのんびり走れば終了時間ぎりぎりでノルマジャストで終われる。

あるいは、あえてペースを上げて走っといてノルマを終えた後にのんびりするか。


どっちにするかな……




  ☓のんびり走る   ☐急いで走る




□……さっさと終えればノルマを気にしなくて良いな。よし、ペースを上げるか。





Select → □






ペースを上げて走っていると、

「ん? あれは……」

前に知った人を見つけ、声をかけた。

「おーい、紀虎ー」

「んー? おー、彰か」

こちらを振り向いた紀虎はペースを落とし、俺の隣に並んだ。

「なんか今日はよく会うなー」

「そうだな、さっきも廊下で会ったし」

今は今でB組D組合同の体育の授業だ。

「というか、今日は竜華と勝負してないのか?」

こんな絶好の状況で、紀虎は一人で走っていた。

「あー、なんて言ったけ……転校生の、朱井さん? その人と走るんだってさ」

へー、本当に仲良いな、竜華と雀耶さん。

「だからささっと終わらせて、竜華達の後を追おうと思ってな、1人激走中だ」

「今、何周目?」

「後2周だ」

てことは、3周か。

「俺も行っていいか?」

「別にいいけど、早いぞ? 激だから」

「ダメなら置いて行っていいから」

「んじゃ、行くぜ」

紀虎は先ほどのペースに戻し、俺はそれに付いて行く。

う……さすがに早い。今は付いて行けなくはないが、最後まで持つかは微妙なところだ。

「紀虎って凄い体力あるよな」

「まぁな、部活で必要だし」

部活か……確か、陸上部だよな。

「……それに」

「ん?」

「……勝ちたい奴が、いるからさ」

勝ちたい奴……

それって……竜華、だよな?

でも、何故だろう? 普段はあれだけ楽しんでいる勝負なのに。今言った紀虎の言葉の中には、真剣とか本気が混ざっていたような気がした。

「そ、そっか……まぁ、頑張れよ」

「あ……お、おぅ! 頑張るぜ!」

今も、はっと気付いた風に答えた。


もしかして……紀虎の勝ちたい奴って、別の誰なのか?

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