Go to 『 』Ⅰ
部屋に入った途端、携帯が鳴った。
開いてみると、メールの着信、差出人は……
「雀耶さん?」
そういえばさっきアドレスと番号交換したんだったな。
メールを開いて見る。内容はこうだった。
今、お時間大丈夫ですか? 寮の前に居るのですが、少しお話ししませんか?
「寮の前?」
なんでまた急に……まぁ、待たせたら悪いから。
俺は部屋を出て、寮の前へ向かった。入り口前に立っていた雀耶さんを見つけ、声をかける。
「雀耶さん」
「緑葉くん、わざわざありがとうございます」
「うん、でもここまで来なくてもメールで良かったんじゃないの?」
「いえ……これは、直接伝えたかったので」
急に雀耶さんの声のトーンが落ちた。多分、それだけ重要なことだという表しなんだろう。
「実はですね……緑葉くんに、お願いがあるんです」
「お願い?」
「はい……以前、わたしは記憶喪失だという事はお話ししましたよね?」
「確か、小学生の時をだよね?」
「それなのですが、実は一つ、思い出したことがあるんです。それで……これを糸口に、記憶を全て思い出そうと思うんです」
ひょっとして……
「それを……俺に手伝ってくれと?」
お願いと言っていたなら、そういうことだ。
「……はい」
予想通り、雀耶さんは小さく頷いた。
「もちろん無理にとは言いません。緑葉くんが良ければ、そちらの時間が空いた時にでもお手伝い頂けたら…」
「うん、いいよ」
「え……?」
あっさりと決断した俺に、雀耶さんはきょとんと目を丸くした。
「い、いいんですか? そんなにあっさりと決めてしまって……」
「そりゃあ、わざわざこうして来てくれたのに断るなんて悪いし、それに、秋休みに入るから時間も空くしね」
「……そう、ですか……」
「あ、でも俺だけじゃなくてさ、竜華とかにも手伝ってもらおうよ」
「それなら大丈夫です。竜華と山吹さんには既にお話ししてありますので」
「なら、俺は陽斗に訊いてみるよ」
「はい。……あの、緑葉くん」
「ん?」
「その……ありがとうございます」
前にもこんなことあったな。
「どういたしまして、頑張って思いだそうね」
「はい!」
あの時は出来なかった。雀耶さんは力強く頷いた。
こうして、俺の秋休みは雀耶さんの記憶探しの手伝いとなった。
5th day fin
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ついにこの物語の根本に近づいてきました。と言っても、まだまだ序盤の根本ですが、ここを終えた時、ようやくこの物語の意味を知ることになるのでしょう……おそらく。もう分かっている方もいるかもしれませんが。
それでは、