5th day patternⅡ
~寄り道~
授業も終わり、放課後、今日は計画していた寄り道の為、商店街の方へやって来ていた。
メンバーは5人。俺、竜華、陽斗、山吹といういつもの4人に、雀耶さんだ。
「さて、着いたわけだが、どこ行くんだ?」
一番前を歩いていた陽斗がこちらを向いて訊ねた。
「とりあえず……皆、行きたい所は?」
俺が訊ね返すと、
「じゃあオレ、ゲームセンター行きてえ」
陽斗が一番に手を挙げて、一つ目的地を示した。
「うーん……りゅーちゃんはどこ行きたい?」
悩んだ末、竜華に委ねた山吹、
「そうだな……なら、駅前の雑貨屋はどうだろう?」
「お〜、いいね〜そこにしよう!」
竜華の提案に乗り、もう一つ目的地が示される。
「さくちゃんはどこ行きたい?」
「わたしですか? そうですねぇ……」
山吹に訊ねられた雀耶さんは少し考えると、何かを思い出したように訊ね返す、
「すみません、今日って何日でしたっけ?」
「え? ちょっと待って…」
山吹は携帯を開いて日付を確認、雀耶さんに伝えると、
「では、本屋さんなどいかがですか?」
新たな目的地が示された。
「よし、じゃあ最終判断は彰がしてくれ」
「え? なんで俺なんだよ」
「そりゃまだ意見言ってないのお前だけだし。とりあえず一番目に行く所決めてくれ」
「俺が決めていいのかよ」そう訊くと、4人は揃って頷いた。
そこまで言うなら、時間も考えてさっさと決めるか……
〇雑貨屋 ☓本屋 ☐ゲームセンター
Select → ☓
「皆さん、ありがとうございます」
最初は雀耶さんの提案した本屋へ来ていた。
5人揃って中へと入る。
「雀耶の探している本は何なんだ?」
「文庫本です。今日新しいのが出ると聞いたのですが」
文庫本、と聞いた陽斗と山吹は漫画の棚を見に行くと言って入口で別れ、俺達3人は文庫本の棚へ。
「え? ここなの?」
「はい、おそらくここに」
そこは文庫本と言っても、ライトノベルの棚だった。
てっきり文庫本と言うから難しいものを想像したが、雀耶さんもライトノベルとか読むんだな。漫画の棚もすぐ近くにあるし、ここなら陽斗達も来てよかった。
その時、棚の前に同じ高校の制服を着た生徒を見つけた。
しかもそれは、
「紀虎」
「ん? おー竜華、彰も、それと……朱井さん、だっけ?」
「はい。……あ、その本は…」
「コレか?」
紀虎が持っていた本。
その名前は―――常敗ピンチヒッター
またアレか……他に読んでる奴見たこと…
「その本です! わたしが探してたのは!」
…あった。というか隣にいた。
「お、朱井さんもジョウハイ読者!?」
「はい! 毎回ハラハラの展開が楽しみで、久しぶりの最新刊が出ると聞きまして!」
「それならここに平積みされてるぜ! いや〜ここにも読者が居たなんてなー」
紀虎と雀耶さんは『常敗ピンチヒッター』の話で盛り上がってしまった。
「……俺も読んでみようかな、ジョウハイ……」
「まぁ……ちょうどよい機会かもしれないな……」
竜華と揃って蚊帳の外だった。
その後、紀虎も加えて6人となり、次の場所へ向かった。
~寄り道の後~
「もう秋休みなんだね~」
「それが終わったら、後は卒業式に一直線だな」
「わたしとしては、もう少し皆さんと一緒にいたいですけどね」
「この時期に転校してきたのだから、仕方のないことだ」
「そうそう、まだ時間はあるんだから、その間に充分楽しもうぜ」
寄り道の後、俺達は駅前のハンバーガー屋に来た。各々注文を終えて、奥の方にある机に集まった。
「でもよ、秋休みって妙に短いよな。春休みとか冬休みくらいあってもいいんじゃね?」
「紀虎、秋休みとは三学期制から二期制になったための休みなんだ。その為に夏休みは少し短くなっているんだぞ」
「げ、マジかよ。竜華よく知ってんな」
「昨日もそんな話になったからな」
「そういえばさ~」
それは、山吹の何気ない一言が発端となった。
「秋休みって、英語でなんて言うんだろうね~」
『……』
それを聞いて、俺達は互いに目を見合わせた。
「秋、だろ、ならオータムは入ってるよな?」
「夏休みは、サマーバケーションだから……」
俺と陽斗の言葉を聞いて、雀耶さんが、
「では……Autumn Vacation ではないでしょうか?」
そう言うと、竜華は首を振った。
「いや、Vacation とは夏休みほど長い休日に使う言葉だ。秋休みほどの長さなら……Holoday を使うのがいいだろう」
「じゃあ、Autumn Holiday ! これでどうだ?」
紀虎の言葉に、竜華は再び首を振る。
「秋にも二つの言葉があるんだ。Autumn ともう一つ、fall 。元々はfall of leaves 、葉が落ちるという意味で、落ちるという単語のfall には、秋の、という意味が取れる。秋休みは、秋の休み、と言えるわけだから……」
あごに手を当てて考え込むしぐさをする竜華。
「……何か、すごい事になってるぞ?」
「う、うん……そこまで思ってたわけじゃないんだけど……」
「ナツ、言い出したからには収めてくれよ」
「む、むりだよぉ」
俺と陽斗、発言者の山吹さえも三人の中に入れず完全に蚊帳の外だった。
「あ、彰、お前止めてこいよ」
「ちょ、なんで俺なんだよ」
「青川と幼なじみだろ?」
そんな理由かよ。
まぁ止めたいのは事実。蚊帳の外から出れればいい。なら、今の中心になっている竜華をどうにかすれば、紀虎と雀耶さんも止まるだろう。
「おーい竜華……」
「そうだな……fall Vacation だな」
「おーい…」
「んだよ竜華、Vacation 使わないって言ったじゃんか」
「確かにそう言ったが、夏休みに使っていることを考えたら、その流れで使うと思ってな」
「……おーい」
「えー、なんかズリィぞ、それー」
「そうですよ、竜華が使わないっていったんですよ?」
「うっ……雀耶まで、というか雀耶が使ったじゃないか!」
「……」
ダメだ。止められんねぇ。
それからしばらく三人の口論は続いた。
結果、
竜華はfall Vacation
雀耶さんはAutumn Vacation
紀虎はAutumn Holiday
に落ち着き、そうなってから俺が声をかけていたことに気づき、どれが当たりか訊ねてきた。
なので、俺は一番そうだと思ったのを答えておいた。
それは―――
最後の出てきたのも、また一つの選択肢であった。
はたして、彼が選らんだものは……