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fall〜coda〜autumn  作者: 井能枝傘葉
14/65

5th day patternⅠ

〜席替え〜


朝、HRで教室に入ってきた谷門先生。

挨拶が終わり、教卓に荷物を置いた途端、

「席替えするぞ」

と言った。

その言葉に、もちろん皆はざわざわと騒がしくなる。

なんでそんな急に席替え? ではない。

やっぱり今週もあるんだ。の方でだ。

実のところ、このD組では毎週席替えが行われている。というのも、もう半年も経たないで卒業するこのクラスメイト達に、どうせなら色んな人と隣の席になればいい、という先生の気持ちで、週の終わりに席替えが行われるんだ。

「移動の準備が出来たのからくじを引け、一限に被らないよう早めにな」

教卓の下から毎週使われるくじの入った箱が取り出して置き、谷門先生は黒板に席と番号を適当に振っていった。

皆移動の準備を終え、先に引こうと思う山吹のような人は教卓の前に集まり 、後でのんびり引こうと思う陽斗のような人は集まって喋ったりと、大きく2つに分かれていた。

俺はどうするかな……




   〇早く引く ☓中盤辺りで引く △最後の方で引く




☓……中盤辺りでいいか、特になりたい席もないし、早く引いたからって決まった席になれる訳でもないからな。





Select → ☓





早い組が終わり、遅い組が動き出した時、中盤辺りで俺は教卓の前へ。

箱の中に手を入れた。

さて、どこの席になるのやら……と思いながら一枚引き、後ろのジャマにならないところへ移動してから開いて見た。

番号は……

「13番」

黒板を見てどこの席か確認。番号は適当に振られているので一番後ろや一番前になる可能性もあるが……

「げ……」

まさかだった。

まさか―――今の席にその番号があるとは。

「か、変わらねぇのか……」

こうなった場合も、そのまま席替えは続行される。

つまり、俺はまたあの席だということだ。

「結構な確率だよな」

せめてもう一人いれば、そいつとくじを交換出来るんだけどな。いるわけないよな。結構な確率だし。

若干落ち込みながら、まぁ一番後ろだから良いか、と開き直りつつ、席替え後の席―――前と変わらないその席に座った。

「ふぅ……」

「あれ? 緑葉くん、移動しないんですか?」

「それがね、雀耶さん」

俺はくじを見せつつ今あった事を説明した。

「緑葉くんもですか」

「うん、そうなん……も?」

「わたしもなんですよ」

雀耶さんが見せてくれたくじには、確かに今雀耶さんが座っている席の番号が書かれていた。

まさか、もう一人いたなんて。

「聞いたんですけど、かなり珍しいことらしいですね」

じゃあせっかくだし、くじ交換する?

……とは、あえて言わなかった。

どうせ隣どうしで交換するだけだし。

それに、

「何だか奇遇ですね。ふふふっ」

雀耶さんが、嬉しそうだったから。







~授業(美術)~


授業の中には、2時間続けて2クラス合同で行うものがいくつかある。

今日もそのうちの一つ、美術があった。

「今日の内容はデッサンだ」

美術の教師にしてB組の担任でもある石榴先生が今日の内容を伝えた。

「2人一組になって互いを書きあえ、提出は今日の終了までだ。始めろ」

先生の合図で2クラス、B組とD組の生徒達はがやがやとペアを探し始めた。

「りゅーちゃん、一緒に組もうよ~」

「あぁ、いいぞ」

竜華は山吹と組んだか。

俺も誰かと……

……と、ふと数人の姿が目に入った。

何故か分からないが、その中から選べと言われているような気がした。

誰に? というか、何の目的で?

まぁ別にいいけど……必ずOKしてくれるとも限らないわけだし、声をかけるだけかけてみるか……




   ☓雀耶さん  ☐紀虎  △玄平




☓……つうか、雀耶さんなんて転校生なんだから組みたがる人の方が多いに決まって―――

「緑葉くん、よかったら一緒に組ませんか?」

……あれ?





Select → ☓





どういう訳か、まさか雀耶さんの方から俺を誘ってくるとは…………どうにも出来過ぎてる気がする。

さっきもそうだ、何故か三人に目が行って、雀耶さんに声かけようとしたら今に至る……まるで誰かに導かれるように。他の選択肢もあったはずだが、決められた3人しか選択できなかったような……そんな感覚。

いつからか……考えてみれば、昨日の朝から。

昨日……いや一昨日だ。何かを忘れているようでならない。


俺はいったい……何を忘れいるんだ?


「出来ました……緑葉くん?」

「!?」

また深く考えいたらしい。雀耶さんの声で現実に戻った。

「どうしました?」

「な、なんでもないよ」

「そうですか。では、これを見てください」

雀耶さんは手に持っていたスケッチブックをこちらに見せた。そこには、座っている状態の俺が鉛筆で書かれていた。

しかも、かなり上手い。

「うわぁ……雀耶さん、絵上手いんだね」

「ありがとうございます。これでも向こうの高校では、美術部……みたいなものに入ってましたから」

「へー」

みたいなもの、ってのが気になったけどあえて訊かなかった。

「それに、絵は昔からよく描いてましたから」

「昔って、小学生くらい……あ」

訊いてからしまったと思った。雀耶さんは、昔あった交通事故の影響で小学生時代を思い出せないんだ。

それを訊いても、答えられるわけがない。

「そう……ですね、きっと、描いていた思います。気付いた時には、絵を描いてましたから」

そう答えた雀耶の声は、

「そ、そっか…………なんか、ゴメン」

「気にしないでください。ほんの些細なキッカケで、思い出せるかも、と、わたしも少し期待しましたから。ほら、次は緑葉くんの番ですよ」

「う、うん、分かった」

本当に雀耶さんは記憶を忘れていて、本当に、思い出したいと思っているんだと。


改めて、知った。

5日目の始まり、それと同時に、緑葉が疑問を抱き始めました。

これから先、選ぶのはいったいどういう道なのでしょうか……


それでは、

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