4th day patternⅠ
開始した、秋の物語。
若干変わった文章の書き方をしていますが、どうぞお楽しみください。
〜朝〜
―――目覚ましとして使っている携帯のアラームが鳴り響いた。
「ん……朝か」
携帯を取ってアラームを切る。
ふと時間を見ると、
「……あれ?」
何故か、いつもより早かった。
? 今日何か用事でもあったっけ? 思い返してみると、
「……あぁ、そうだ」
思い出した。昨日、竜華に合わせるために早く設定して、そのままだったんだ。
「昨日……」
昨日の帰り道を思い出す。雀耶さんのあの言葉を聞いて、走り去った雀耶さんを見送った後―――特に何も無く寮に帰って来たんだよな。
まぁ仕方ない、今から二度寝したら絶対遅刻するから起きよう。
しかし、いつもより全然早いな、
どうするか……
〇早く出てみる ☓いつもの時間に出る
☓……特に早く出る理由もないし、準備だけしといていつも通りの時間に出るか。
Select → ☓
いつも通りの時間に寮を出て、学校へ向かう。
回りには登校中わりとよく見る生徒がちらほらいるが、ほとんどが下級生で名前を知らない。
その中には友達どうしなのだろう、仲良くお喋りしながら歩く生徒達もいる。その声がこの通りの中で一番騒がしく、俺が一人で歩いているというのを強く認識させた。
まぁいつものことだし、別に朝から誰かと話ながら行きたいという訳でもないが―――
「緑葉くん!」
後ろから聞いたことのある声が聞こえた。
俺が立ち止まって待っていると、声の主は俺の隣に並んできた。
「おはようございます、緑葉くん」
「おはよう、雀耶さん」
並んで歩き出す。
そうだ、この時間帯に雀耶さんも登校するんだったな。
「今日も良い天気ですね」
「うん、そうだね」
秋晴れ、というのか。見上げれば雲こそあるが晴れた空が視界の上に広がっている。
そんな空の下、俺と雀耶さんは話ながら歩き続ける。学校の事、授業の事、そして竜華の事が主な内容だ。
「それでさ、竜華の料理は…」
「ふふふ、それは逆に一度食べてみたいですね」
「いややめといた方がいいって、俺みたいに放課後まで眠り続けることに……」
そこで不意に思い出した。
昨日の放課後、雀耶さんと一緒に帰り、そして、聞いた言葉……
「……あのさ、雀耶さん」
「昨日のこと、ですか?」
気づいていたらしく、先に言われた。
「うん……あれさ、どういう意味なの?」
「あれは……」
雀耶さんは視線を下に向ける。
少しして、顔を上げ、
「……すみません。何となく、言ってみただけなんです」
「え? 何となく?」
「はい、今が続く……そんなことあり得るわけがありませんよね。今だって、こうして前に進んで学校へ向かってるのですから。……だから、深い意味は無いので、忘れて下さい」
「そ、そっか……」
「はい」
雀耶さんはにっこりと微笑んだ。
けど、笑ってるのに。その中に別の感情があるように見えて、二の句を継げられなかった。
「さぁ、早く行きましょう緑葉くん!」
〜授業(体育)〜
本日の体育の授業は、年に一度のお楽しみ……もとい、苦しみ。
男女混合のマラソン大会だった。
コースは校外へ出て寮の方へ向かい、女子寮前にセットされた折り返し地点でUターンして戻ってくるというもの。詳しい距離は分からないが、ノルマは授業時間内に最低女子は5周、男子は7周だ。
秋頃で寒いのに加えてかなりの距離、やる気になってやる人の方が圧倒的に少ないだろう。
「はぁ……」
現に俺もそんな一人だ。
授業が始まって約半分が過ぎ、現在4周目。もうのんびり走れば終了時間ぎりぎりでノルマジャストで終われる。
あるいは、あえてペースを上げて走っといてノルマを終えた後にのんびりするか。
どっちにするかな……
☓のんびり走る ☐急いで走る
☓……やっぱり急ぐの面倒だな。多分ノルマは間に合うだろうし、のんびりと行くか。
Select → ☓
「……ん?」
ペースを変えずにのんびり走っていると、後ろの方から誰かの息切れが聞こえた。
「はぁ……はぁ…………はぁ……」
この声は……。俺は後ろを見てその人を確認すると、スピードを落として隣に並んだ。
「大丈夫? 雀耶さん」
「はぁ……? あぁ……緑は……くん」
もはや肩で息を切るような走り方だった。
「なんでそんなに疲れてるの?」
「はひぃ……最初は……竜かに、合わせ……ていたんです……けど……はふぅ」
「それは疲れるよ」
竜華は帰宅部ではあるが、紀虎と張り合える体力の持ち主だからな。
「そ、それで……竜かは、先に行って……ノルまを……終えてから……わたし……に、付き合ってくれる……と……はぁ」
「雀耶さん、後何周?」
「はひぃ……あ、後……さん……周、ですぅ」
じゃあ一周目でおいてかれたのか。竜華が早すぎるのか、雀耶さんの体力がないのか……
「雀耶さん、向こうの学校で部活とか入ってた?」
「い、いえ……それに似たことは、してました……けど……はぁ……」
しまった。喋る分の体力を使わせてる時じゃない。
「と、とにかくゆっくり行こうよ、まだ時間もあるし」
「は、はひぃ……」
竜華ならきっとすぐに追い付くだろう。
「竜華が来るまで俺が付き合うからさ」
「はい……あの、緑葉、くん」
「ん?」
「その……ありがとう……ござい……ます」
「どういたしまして」
竜華が来るまでの間、俺と雀耶さんはのんびりと走り続けた。
4日目、パターンⅠをお送りしました。
なぜパターンなのかは、後々分かると思います、すでに分かった方もいますと思いますが。
そして、途中にあったセレクトの文字。これはつまり、ゲームシナリオの選択に似ています。
ようはこの物語、ゲームシナリオを模して書いている作品です。
自分は初挑戦の書き方に若干戸惑ってはいますが、この作品を書く上でこれが一番しっくりくるので、精進しようと思います。よろしければ、応援のほどを。
次回は一週間以内にお会いしましょう。
それでは、