プロローグ
はじめまして
本作品は処女作のため、拙い文章です。しかし、読んでいただけるならば幸いです。
煌々と燃え盛る炎の熱が肌をチリチリと焼いて痛い。
もっとも、『緋女』の紅蓮の炎が焼くのは『覚醒者』だけで、普通の人を焼くことはないらしい。だからこの痛みは幻痛なのだろう。
炎の向こうから人影が近付いてくるのが見えた。炎の発する光が眩しすぎてよく見えないが、髪の長い女であることが分かった。二十歳くらいだろうか。おそらく、この女の人が『緋女』なのだろう。炎の逆光の中でも『緋女』独特の燃えるような紅蓮の髪が、炎の光に負けないくらいに光を放っていた。
女の人は僕の目の前でしゃがむ。視界の端で紅蓮の髪がさらりと震えた。女の人は僕に目線を合わせて言った。
「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
炎の逆光で表情が分からないが、泣いているような気がした。謝るなよ。謝られると何も言えなくなるじゃないか。
僕は、女の人の肩越しに炎が消えるのを見た。
黒い煙が濛々と曇り空に向かって昇る。
僕は女の人を押し退けて、黒く粉々になった残骸を拾い上げる。
これは、『覚醒者』となって焼かれて死んだ父の残骸。『緋女』の炎に殺された僕の父。
分かってる。悪いのは父。『覚醒者』となった父。でも、許せない。どれだけ謝られても、父を殺した『緋女』のことは許せない。
僕は父の残骸を握り潰し、虚空にばらまいた。
これは僕が八歳のときの出来事である。